映画「名もなく貧しく美しく」を見た
映画「名もなく貧しく美しく」を見た。これは(07年)8月19日夜、NHK BShiで放送されたもの。
この映画の題名は昔から知っていたが、内容は知らなかった。しかし、ビデオの再生ボタンを押してそのまま見てしまった。それだけ引き込まれた・・・・
この映画は実話に基づいて作られたという。昭和36年(1961年)の作品で、松山善三の脚本・監督。主演は高峰秀子と小林圭樹。(この当時の小林圭樹といえば『サラリーマン出世太閤記』だな・・・・失礼)
この映画には、自分の子供の頃の風景が次から次に出てくる。(なつかしい・・・)
聾唖者の秋子(高峰)は、乞われてお寺さんに嫁に入ったが、夫が亡くなったので実家に帰される。聾学校の同窓会で知り合った片山道夫(小林)に結婚を申し込まれ、弱い者どおし助け合って生きていこう、と結婚。やがて子供が出来、悪戦苦闘して育てる。そして最後に、聾唖者ゆえの悲劇・・・
何とも切ないストーリーだが、日本の純愛物語の傑作ではないか?
貧しい中で、ただただ必死に生きる聾唖夫婦。それを助ける秋子の母。その対岸に、賭け事に凝る刑務所帰りの弟と、聾唖者の妹を持つ事を恥として、家出をして中国人の妾をするバーのマダムの姉を配し、明と暗とが浮き彫りにされる。そして聾唖の両親ゆえにいじめられて屈折して育つ子供・・・・。何とも切ない・・・・。特にラストシーンの悲劇が何ともやりきれない・・・。実話が背景にあるので、ハッピーエンドにはならなかった??
この映画の底に流れているのは「聾唖者に対する偏見」。それが自分の胸にもチクチクと突き刺さる・・・
今はどうなのだろう。偏見は無いか?
そう言えば、前に会社の食堂で手話で話す人達がいたっけ。「障害者雇用促進法」で一般企業では1.8%の雇用が求められているが、その実体はどうだろう・・・。
この映画は、自分の右耳が故障している事もあり(前にblog「耳が壊れた話」を書いた)、耳の聞こえない悲しさが良く分かる。(まったく聞こえないのと、少し調子が悪い・・・のでは、事情は100%違うが・・)
この映画は、50年近く前の映画だが、時代の差は全く感じられなかった。
幾ら古くても、この様な永遠のテーマを持った、いわゆる名画は永久に残る。
その内にリタイアしたら、ゆっくりと順番に見て行きたいものだ。名画(世に残る映画)には「何か」がある・・・と思うから。
ともあれ、夫婦の愛、世間の偏見、子育ての悩み・・・と、色々と考えさせられた映画だった。
(付録)
(自分が“良かった”と言ったので)後から見たカミさんの評~
心に残ったセリフは、秋子の「世間の人は、同情はしてくれるが、理解はしてくれない・・・」
それと、同居している秋子のお母さんの愛・・・・。自分の指輪を売ってミシンを買ってあげたり、道夫が内緒で義弟にお金を貸した時に「給料を落とした」と言って夫婦間が険悪になる場面があったが、タイミング良く、間に入って取りなす所など、ホッとする場面が幾つかあった。(障害者だけで暮らすことの難しさ・・・)
| 0
コメント
この映画は、封切りの映画館で見ました。松山善三の最初の監督作品だと思います。電車の隣の車両との間で、健常者には声の届かない間で手話を交わす感動的な場面がありました。ケレン味のない、いい映画でした。
投稿: 志村建世 | 2007年9月 2日 (日) 21:53