iPodのコスト構造~垂直統合と水平分業
今朝(07/9/3)の日経(P5)に「選択はiPodから亀山まで~国際分業の隠された真実」というコラムがあり、興味深く読んだ。
それによると、完全なブラックボックス化を図る垂直統合型のシャープ亀山工場と、その対極にある完全な水平分業型のアップルを紹介していた。
シャープは、製造技術やノウハウが競争相手に渡さないように外部への情報漏洩を完全に遮断。装置の配置はもちろんダクトの形状、パイプの太さなど全てが秘密。そして、数少ないオペレータには、その防塵服に大きなゼッケンを付け、担当部署から不用意に離れて、余計な所に行かないか、監視カメラでゼッケンをチェックしているという。
他社から購入する部材は、隣接して立地している企業から調達。まさにコンビナートの垂直製造体制だ。
その対極にあるアップルは、製品のコンセプトや設計は手がけるが、製造は100%専門のEMS(電子機器の受託製造業)に任せる。競争力の源泉を斬新な製品企画やデザインに置き、製造のコストダウンは委託先に任せてマーケティングに励むという完全水平分業体制・・・。
その製造原価の構造が面白い。
30Gの第五世代iPodを例に取ると、
定価 299$(34,684円)(1$=116円として)
中国のEMSのコスト(原価)は、144$(16,705円)
よってアップルの利益は、299$-144$=155$(17,980円)=52%
(日本での量産品の製造原価は、昔の“定価”の1/3位が普通だったので、まあ妥当か?)
部品数 451個
一番高い部品は東芝製HDD 73.39$(8,513円)
(海外生産のため東芝の付加価値は19.45$(2,256円)
全体の日本メーカ(部品)の付加価値は、26$(3,0162円)
(~予想よりも少ないな・・・)
つまり、中国から米国への輸出単価は@144$(16,705円)だが、部品を海外から購入しているので、中国の実質の対米黒字額は組み立て分の@4$(464円)程度に過ぎないという。
こうした実態を見ると、中国の膨大な対米黒字も表面的な数字とは異なる実態がありえる、と指摘していた。
それにこのコラムの結びがきつい。
「バブル崩壊で疲弊した製造業の建て直しのひとつのキーワードが国内立地でブラックボックス化。戦略部品から一貫体制という。しかし、このキーワードがどの企業、どのモノ造り産業にも当てはまるわけではない。・・・・ノウハウで固めた垂直一貫体制も強調し過ぎると、iPodやiPhoneを発想できなかった負け惜しみの国内篭城のように映る」
(←こんな事は当たり前なのだが・・・)
日本の製造業は、バブル崩壊と共に、世界最高(?)の賃金の日本から逃げ出してアジア諸国、そして台湾・中国に移った。(それでどれだけの日本の雇用が失われたろう・・・・)
しかし、シャープは新たな垂直統合型のビジネスモデルで、製造を国内に呼び寄せた。日本の製造業はどこも、何とか高機能・高品質をキーワードに悪戦苦闘中なのである・・・。
しかし、目を部品に転じると、日本の実力は圧倒的である。
<日本製部品の世界シェア>(07/8/10日経P13「ヒットは部品で創れ」より)
・セラミックコンデンサ~村田製作所(38%)、TDK(20%)、太陽誘電(18%)、京セラ(10%)
・リチウムイオン電池~三洋(30%)、ソニー(30%)、松下電池(17%)
・水晶部品~エプソントヨコム(24%)、日本電波(21%)、京セラキンセキ(13%)、大真空(10%)
・振動モータ~シコー技研、日本電産コパル
・コネクター~ヒロセ電機、SMK
・アンテナ~日本アンテナ、原田工業
・プリント基板~イビデン、日本CMK、フジクラ
等々
日本の世界における携帯電話のシェアは7%程度。しかし、端末を開けると様相は一変。上記のように、(高い日本のユーザ要求で培われた)日本製部品の独壇場であるという・・・。(まだまだ日本は元気だぞ・・・・)
日本の製造業・・・。
今朝の新聞の“冷やかし”にもめげずに頑張って欲しいものだ・・・(自分はもう卒業なので・・・)
(関係記事)
06年のシェア(市場占有率)
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