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2007年9月16日 (日)

大峰千日回峰行の塩沼亮潤氏の講演を聞いた(2)

大峰千日回峰行を満行された、仙台の慈眼寺住職 塩沼亮潤氏の「心をこめて生きること」という講演を聞いた。場所は新宿のヒルトン東京。2時間弱の講演だった。
今日は昨日の記事の続きである。

<大峰千日回峰行~その2>・・・その1はここ
平成4年5月3日に入行し、平成11年9月2日に満行。その間、行きたくないとか義務的な気持で行をしたことは一日も無かった。
しかし、怖いことは幾らでもあった。500日を過ぎた頃から、朝、出立するときに戸を開けると、雷に遭うことが匂いで分かる様になった。とにかく雷が一番怖い。台風の時などは、長さ5m位の木がフワーッと浮いて山肌に突き刺さる。山頂付近では雨が鉄砲水のように落ちてくるので、腰ぐらいまで水に浸かりながら山をよじ登って行く。ツキノワグマに襲われた事もある。
お参りする神社や祠(ほこら)は、往復で118ヶ所。般若心経を唱える。
手を抜こうと思ったらそれは出来る。誰も見ていないのだから。でも人の目はごまかせても、自分自身の心はごまかせない。という。

<四無行(しむぎょう)>~平成12年9月28日から10月6日までの9日間。
四無行とは、8日間を断食、断水、不眠、不臥。つまり、食べない、飲まない、眠らない、横にならない。
非常に危険で死ぬ可能性があるため、入行前に「生葬式」の儀式。そして親族と共にお堂に入り、一人ひとりが別れを告げて出て行く。最後に付き添い2人と共に、3人で行がスタートする。
毎日午前2時のお水汲み、3度のお勤め。お不動さんの真言10万遍と蔵王権現の真言10万遍。
食事は3日前から断食をスタートしていたので、一番楽だった。眠気は、3日位で無くなったが、やはり午前0時から夜明けまでは、身体が辛かった。人間は夜中は寝る動物だと思った。
最も辛かったのが水。お小水は朝晩出ていたので、それ毎に体力が衰えていく。血液がドロドロで、少し歩いただけで心臓が踊るように脈打つ。そして5日目でうがいが許される。天目茶碗が二つ。一方の水の入った茶碗から水を口に含み、空の茶碗に移す。同じ量でなければ飲んだことになる。その時の水の味は生涯忘れられない。うがいの瞬間から身体がしゃきっとした。生き返った。これで大丈夫だと思った。という。(原爆で被爆した人も、水・水・・。人間が最も必要としているものは、やはり水らしい・・) 
その間、意識朦朧となっていて(死の淵まで行って)付き添いの僧に呼び戻されたり・・・。五感は研ぎ澄まされ、線香の燃えた灰が落ちるのまで分かる・・・・
この行で、体重は10K減った。1日1K減ったことになる。そして満行後は徐々に戻して10日目位には普通の食事になった。戻るスピードとしては非常に早かった。

(以上、講演と「大峯千日回峰行―修験道の荒行」より抜粋)

この講演を聞いて一番印象に残った言葉は何だろう? それは「感謝」という言葉・・・。
行は感謝の気持ちがなければダメだという。行をしてくれと誰かに頼まれたわけではない。それが出来る状況に感謝すること・・・。
そして、「人間はダメだと思ったらそこで終わり。自分ならできると自信を持つこと。絶対にあきらめないで、粘り強く。そして常に心を明るく持つこと」だという。

そして塩沼亮潤がこの本で書いている「行を通して学んだこと」は、
確かに追い込まれれば追い込まれるほど、人間というのは攻めの姿勢で行かなければいけない。どうしても人間というのは、精神的、肉体的に追い込まれると、どんどん自分で悪いこと、悪いことを考えていく。それで泥沼に入っていきます。でも現実を受け止めて、なるようにしかならん、どっちでもなるようになるんだと、すべてもうお任せするという気持が大事ですね。それで、なお攻めていく」(大峯千日回峰行―修験道の荒行 P120より)

苦しみの向こう、悲しみの向こうには何があるのだろうと思っていたが、そこにあったものは『感謝の心』ただひとつ・・・」(講演の言葉より)

まさに仏教の真髄を言っている。でも大阿闍梨が言うだけに、言葉は重たい・・・。

話が変わるが、昔NHK特集「永平寺」という番組で、食事を作っている僧に「栄養はどうですか?」とアナが聞いたところ、「栄養なんて言われても・・・。昔から決まっているので・・」と戸惑っていたのを思い出した。

この修験行もそうだが、数千年の歴史に裏打ちされた人間の生きる力の素晴らしさ、逞しさ。でも、それを生かし切れていない現代社会・・・。
人間、還暦を迎えても、まだまだやれる事はたくさんあるのかもね・・・・

(関連記事)
大峰千日回峰行の塩沼亮潤氏の講演を聞いた(1)

大峰千日回峰行の塩沼亮潤氏の講演を聞いた(3)

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コメント

はじめまして。
いつもこっそり読ませてもらってますm(__)m
いいお話を聞かせてもらいました。
さすが説得力ありますね。

>絶対にあきらめないで、粘り強く。そして常に心を明るく持つこと。

>現実を受け止めて、なるようにしかならん、どっちでもなるようになるんだと、すべてもうお任せするという気持が大事ですね。それで、なお攻めていく

今(些細なことですが)心が泥沼に嵌っている私にとって、これらの言葉が身に沁みました。
しかし、現実に実行するのは難しい。

投稿: ミセス | 2007年9月17日 (月) 11:14

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