太平洋戦争を考える(3)~NHK「日中戦争」を見た
NHKハイビジョン特集「日中戦争~兵士は戦場で何を見たのか~」を見た。この番組は、06/9/14に初回放送されたもので、先週8/9にBShiで放送された録画を、やっと今日見たという事。(再:BShi 2007年8月20日(月)午後2:00~)
これを見て、自分として日中戦争の実体を垣間見ることが出来たと同時に、NHKの番組製作の実力を見せつけられた。
この番組は、BSという自由な枠のせいか、110分という長時間で、盧溝橋事件から上海、南京陥落までを、詳細なエビデンス(証拠)をもとに再現している。
通常のドラマは、ある主人公を立てて、その人の生き様でストーリーを展開するが、このドキュメンタリーでは、小西さんという93才の一通信兵の、動員された日から南京までの詳細な日記と本人の証言、それに最近公開されたという蒋介石の日記、そして日中それぞれの生き証人の証言、公的記録、電報文その他の史料による、“重たい事実の積み重ね”で製作されている。
NHKでは、戦後62年ということで、様々な戦争関係の番組が放送されており、自分も勉強の良い機会なので、この関係の番組を闇雲に録画している。その中でも、これはなかなかの出来である。(この番組は昨年の放送の、再放送ではあるが・・・)
番組の冒頭は、ショッキングな画面から始まる。現在の“中国の教育”の実態である。
ナレータ:
「中国北京郊外 盧溝橋です。今年7月7日、多くの人がこの橋を訪れていました。
(先生):「永遠に忘れないで下さい。1937年の今日は『国恥』の日でした」
(生徒達の合唱):「国の恥を忘れずに! 一生懸命学ぼう! 祖国のために尽くそう!」
69年前のこの日、橋の近くで演習中の日本軍に銃弾が撃ち込まれ、それをきっかけに中国軍との衝突が起こりました。盧溝橋事件です。」
番組は、盧溝橋事件から上海、蘇州、南京攻略への“現地軍の独走”、そして“軍上層部の追認”という満州事変と同じ構図を説明し、この時の日本軍の決定により日中の戦いは、なし崩し的に全面戦争へと拡大していった過程を、詳細なエビデンスと共に綴って行く。
話はそれるが、NHKでは「元兵士たちの貴重な証言から戦争の実態を描くシリーズ 証言記録 兵士たちの戦争」と称して、生き証人の「証言」を今のうちに記録しておこうと、色々な番組を放送するらしが、中国でも同じように、戦争の事実を後世に残そうと大学などで研究が行われていると紹介していた。
そして、南京師範大学の教授は、この8年南京周辺の被害を調べており、村人の証言は録音され文字に起こし、再度本人に確認して記録していくという。
質問は:「日本兵はあなたの家で何をしましたか? 」・・・
当時6才の子供だったが、家に戻ったとき、父が胸を刀で刺されて死んでいた姿を目撃し、その証言をする人・・・・。
ナレータ:「南京師範大学の調査では、南京周辺で日本軍による村人の殺害、強姦や放火などの被害が証言として記録されています。」
そして、中国軍の高級将校は全て逃げてしまい中国軍が混乱に陥り、南京陥落。そして 翌日、城内で多数の正規兵の軍服・武器を発見し「日本軍は民間人の服に着替えた多数の中国兵が城内に潜んでいると考えました。・・・」
それから、城内掃討の命令。老人と子供以外は全て逮捕・監禁。外国人の難民区も・・・。
しかも日本は、この戦争を、アメリカからの軍需物資の輸入停止(正規の戦争だとアメリカは日本への輸出停止)を恐れて宣戦布告をせず、“国際法上の戦争ではない”としたため、捕虜への扱いも国際法を遵守せず、捕虜を助けるという気はなく「逮捕・監禁」が「捕捉・殲滅」となって行く・・・。
そして日本の公式記録は、刺殺射殺した敗残兵6670人と記録。そして番組は、ドイツが撮った南京虐殺の“記録映画”の場面に続く。
そして世界が日本を批判して行く中で、真珠湾攻撃へ突入・・・・・・
番組最後のナレータは、
「日中戦争から太平洋戦争終結までの、日本の犠牲者は310万人。中国の犠牲者は1000万人を越えると言われています。日本人が、国を挙げて邁進した昭和の戦争の結末でした。」
まだまだ自分の知識は未熟だが(なぜなら、自分は“日本史大嫌い人間”だから・・・)、この番組は、少なくとも自分の日中戦争への勉強の“導入”は、果たしてくれたように思う。
これからも、色々と録り溜めたNHKの番組を見て、勉強のきっかけにしよう・・・・。
しかし、つくずく「やはりNHKは、民放とは“格”が違う・・・」と思った。
(付録)日本の教科書では、この部分をどう教えているか・・・(山川出版「詳説日本史」P330)
第一次近衛文麿内閣成立直後の1937年(昭和12年)7月7日、北京郊外の盧溝橋付近で日中両国軍の衝突事件が発生した(盧溝橋事件)。いったんは現地で停戦協定が成立したが、近衛内閣は軍部の圧力に屈して当初の不拡大方針を変更し、兵力を増派して戦線を拡大した。これに対し、国民政府の側も断固たる抗戦の姿勢をとったので、戦闘は当初の日本側の予想をはるかに超えて全面戦争に発展した(日中戦争)。8月には、上海でも戦争が始まり、戦火は南に広がった。9月には国民党と共産党がふたたび提携して、反日民族統一戦線を成立させた。日本はつぎつぎを大軍を投入し、年末には国民政府の首都南京を占領した(*)。国民政府は南京から漢口、さらに奥地の重慶にしりぞいてあくまで抗戦を続けたので、日中戦争は泥沼のような長期戦をなった。
脚注(*)南京陥落の前後、日本軍は市内外で略奪・暴行をくり返したうえ、多数の中国人一般住民(婦女子をふくむ)および捕虜を殺害した(南京事件)。南京の状況は、外務省ルートを通じて、はやくから陸軍中央部にも伝わっていた。
この日本の教科書の淡々たる表現・言葉使いと、この番組の最初に出てくる中国の生々しい教育の違いも、また“重たい現実(=国の認識?)”ではある・・・・・(続く)
(関係記事)
「太平洋戦争」を考える(1)
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コメント
兵士たちの戦争シリーズをみました。
なんと惨めな戦争の犠牲者にさせられたことか。 今、特に阿部首相がイラク特法延長とかで戦争の肩棒を担いでいるが、戦争はどんなきれいな美句をならべても、むごいものであることを今の戦争を知らない世代、特に小学校、中高等学校生徒などに机上の教科書ではなく、この映像を授業後の45分を割いて
見せ戦争の実体、いかに昭和の日本軍人、政治家(阿部首相の祖父岸信介)がおろかな戦争に善良な日本国民を戦争の犠牲者にさせたかを教育すべきであるとおもう。
私は小学3年生、戦争。。先生が世界地図でアメリカ、イギリス、中国その他などなど見たとき、びっくりしたこと今も覚えています。マインドコントロール教育で洗脳され、軍国少年になり、その後、戦局は玉砕、転戦(実体は敗北撤退)、本土爆撃、空襲でも
負けるとは思わなかった。今の子供たちも
やはり、悲しい歴史をはっきりと教育すべきだとおもいます。
投稿: ヒラマツ ヨシカヅ | 2007年8月22日 (水) 17:11
本当にそうですね。
中国は、やり過ぎ位に「過去」を子供を教育しています。
それに引き替え日本は、教科書の記述を読んでも、全てを「過去のこと」にしている気がします。
この夏のNHKの特集は、なかなか重たいテーマで放送しています。
ぜひ若い世代にこれらを見て貰って、過去の事実を頭の中に入れて欲しいと思います。
そうでないと、将来同じ過ちを起こしかねない・・・
投稿: エムズの片割れ | 2007年8月22日 (水) 21:20