編曲者「森岡賢一郎」
森岡賢一郎という音楽家をご存知だろうか?昭和40~50年代に活躍したアレンジャー(編曲者)である。今日は、素晴らしい森岡賢一郎の代表作の紹介である。
自分は、いわゆる歌謡曲が大好きだが、その全盛時代は昭和40年代だっただろう。その時代、自分が素晴らしいと思った曲は、ほとんどが森岡賢一郎の編曲だったのである。
その中でも、平尾昌晃作曲、森岡賢一郎編曲の作品はどれも大好きだった。布施明の「霧の摩周湖」「愛の園」・・・・・を初め、小柳ルミ子の「私の城下町」以下ほとんどの作品、そして伊東ゆかりの「小指の思い出」「恋のしずく」等々、名曲は幾らでもある。これは良いな・・・と思うと、だいたいこのコンビだった。
そもそも歌謡曲というのは編曲、つまり伴奏の作曲が大変に大事だ。平尾昌晃のような大作曲家でも、歌手から作曲家になった人は、大体にしてギター片手に鼻歌で録音し、プロがそれを譜面に落とし、そしてまたプロの作曲家が伴奏を“作曲”して一つの作品に作り上げるという話をどこかで聞いた。
そしてほとんど、オリジナルの編曲が一番良い。よく同じ歌手で、アレンジだけを新しくして新録音する事があるが、オリジナルよりも良いと思ったことはほとんど無い。特に「霧の摩周湖」などは、何枚もの新録音のCDを買ったが、どれも幻滅だった。
キングのオリジナルで平尾昌晃と森岡賢一郎の永遠の名曲、布施明の「霧の摩周湖」を少し聞いてみよう。(数年前にカミさんと、(学生時代以来初めて)摩周湖に行ったが、本当に“霧の摩周湖”で何も見えなかった・・・・。森岡賢一郎とは関係ないけど・・・)
<布施明「霧の摩周湖」>~編曲:森岡賢一郎
「霧の摩周湖」
作詞:水島 哲
作曲:平尾昌晃1)霧にだかれて しずかに眠る
星も見えない 湖にひとり
ちぎれた愛の 思い出さえも
映さぬ水に あふれる涙
霧にあなたの 名前を呼べば
こだませつない 摩周湖の夜2)あなたがいれば 楽しいはずの
旅路の空も 泣いてる霧に
いつかあなたが 話してくれた
北のさいはて 摩周湖の夜
編曲を比較する意味でコロンビアのCDで「井川雅幸」という人の編曲で聴いてみよう。同じ平尾昌晃の名曲がこうも変わる・・・
もう一つ、zitimaの「DO MY BEST」というアルバムから、同じ「井川雅幸」という人の別の編曲である。
森岡賢一郎の編曲で、もうひとつ挙げたいのが菅原洋一の「今日でお別れ」である。このマンドリンに始まる前奏を聞くと、ちょうど新入社員だった頃を思い出す。昭和45年の日本レコード大賞曲である。これも名曲、名編曲である。
<菅原洋一「今日でお別れ」>
「今日でお別れ」
作詞:なかにし礼
作曲:宇井あきら
編曲:森岡賢一郎1)今日でお別れね もう逢えない
涙を見せずに いたいけど
信じられないの そのひとこと
あの甘い言葉を ささやいたあなたが
突然さよなら 言えるなんて2)最後のタバコに 火をつけましょう
曲がったネクタイ なおさせてね
あなたの背広や 身のまわりに
やさしく気を配る 胸はずむ仕事は
これからどなたが するのかしら3)今日でお別れね もう逢えない
あなたも涙を 見せてほしい
何も云わないで 気安めなど
こみあげる涙は こみあげる涙は
言葉にならない さようなら
さようなら
比較をする為に、別の編曲で聴いてみよう。
この森岡賢一郎の編曲を代表として、1970年代のいわゆる歌謡曲には、名曲が数限りなくある。しかしその後は、いわゆる「Jポップ」に世の中が席巻されていて、歌謡曲の影が薄いのはファンとして大変に残念だ。そもそも「歌謡曲」という言葉が古臭いのか・・・・? (もう少し“品位”がある言葉だと良かったのに・・・)
ともあれ、上記のように「歌謡曲」には、日本人の心にいつまでも残る名曲がたくさんあるのである。そして自分の心にも・・・・
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コメント
『今日でお別れ』にこんな曲があるなんて知りませんでした。後者のほうが古稀を迎えた小生にはピッタリです。ちなみに菅原洋一さんは加古川市の出身で、高校の先輩にあたります。高校生のころの菅原さんはピアノが好きな青年でしたヨ。
投稿: レフティ しげ | 2008年12月 4日 (木) 23:55
レフティ しげ さん
先日、NHK BSのビックショーで菅原洋一の若い頃のアーカイブスを放送していました。誰かと思う位、若かった・・・。しかし歌の実力は若い時も抜群でした。
投稿: エムズの片割れ | 2008年12月 5日 (金) 22:47
作曲家というから、メロディーくらいは自分で譜面を作るものと思っていました。歌手から転身して1950年代にヒット曲を沢山作った中野忠晴や渡久地政信などはどうだったのでしょうね。それにしても、編曲者というのは、その重要さに比べて、一般には知られず、影がうすいのは気の毒ですね。
【エムズの片割れより】
編曲次第で、歌が生きたり死んだりする事がありますよね。
投稿: かえるのうた | 2011年6月24日 (金) 16:53
私も同じことをずっと思っていました。
私の場合は ちあきなおみ の「朝がくるまえに」と「雨に濡れた慕情」「別れたあとで」です。この3曲が大好きで後に編曲がすべて森岡賢一郎と知って驚きました。
【エムズの片割れより】
森岡賢一郎の編曲は、どれもゴージャスで、それが好きでした。
投稿: アリエス | 2011年12月 7日 (水) 15:40
自分の好きな曲を何十曲も辿って行ったら、森岡賢一郎編曲に行き着いた。聴いていたのは歌手や作詩作曲じゃなくて編曲家の音楽才能だったのですね。現在差し替えと称され氣の抜けた歌を聴かされても、なんにも感じない人達は一体何なのでしょうか。巷に大
ヒットさせ、永遠に私共の心に刻み込めるのが可能なのは編曲家あっての事のようです。エレキギターインストにおいても同様らしく、さすらいのギターやパイプラインなどもオリジナル編曲演奏に勝るものは無いと感じております。
【エムズの片割れより】
編曲によって歌は様変わりします。自分が好きな歌は、編曲が違うと、すべて録っておきますが、後から出る編曲の録音で、最初の編曲を上回ることがほとんど無いことも事実です。
投稿: 藤田正夫 | 2015年7月28日 (火) 22:14
私が若かりし時、大好きだったりよく歌った歌は、確かに森岡賢一郎さんの編曲された歌が多かったです。でも、ある日から突然、森岡さんの編曲が見られなくなりました。私は、そのことで黛敏郎さんを」大嫌いになりました。あれから何十年も経ちますが、今でも森岡さんを追いやった黛敏郎のことは頭から離れません。
それは、スターウォーズが流行り、日本でも似たような映画を作ったんですが、その映画の音楽を森岡さんが担当しました。あるテレビ番組で森岡さんは、大好きなワグナーの曲をアレンジして作ったと話していました。そのあと、日曜日にやっていた超教養音楽番組らしきなかで黛敏郎がこの映画の音楽はワグナーの曲の盗作だと批判していました。
それから、森岡賢一郎さんの名前が突然消えてしまったのです。
【エムズの片割れより】
そんな事があったのですか!・・・
それで消えてしまったのは、残念至極。反論して生き残って欲しかった・・・
投稿: ウルトラの父828 | 2017年2月 1日 (水) 23:56
比較を聞かせていただきました
ゆっくりした歌い方のほうが断然いいですね 悲しみはやはり このくらいのテンポです菅原洋一の味がでています こちらのほうはごこで手にはいるのですか
【エムズの片割れより】
セルフカバーや他の歌手によるカバーの歌はたくさんありますが、オリジナルの編曲を超える歌はなかなかありませんね。
投稿: 早川総一郎 | 2018年8月25日 (土) 20:58