« 「カトリック」と「プロテスタント」の違い | トップページ | モーツァルトのトルコ行進曲 »

2007年2月12日 (月)

NHK「五木寛之 21世紀・仏教への旅」ブータンの幸福観

連休になったので、改めて2007年1月9日放送の、NHKハイビジョン特集「五木寛之 21世紀・仏教への旅」 第3回「幸福の王国をめざして~ブータン」を見た。(これ

ブータン。人口60万人足らず。平均所得は日本の1/50。そして50人に一人が僧侶の国。輪廻転生の考え方が基本。
この番組で、印象に残った場面が幾つもあったので、文字にしてしまった。

====================
(ナレータ)
「・・・六道輪廻図。ここに画かれているのは、生まれては死に、死んでは生まれる。車輪が回るように果てしなく続く迷いの世界です。そこから抜け出すこと、解脱こそがブータン仏教の目指す最高の境地です。人々は信じています。仏教に帰依し、仏の教えに従い慈しみの心を持って今を生きること、それが解脱に近づく道だと。・・・・」

====================
Q:今の生活に満足していますか?
A:ええ もちろん幸せです。
Q:もっとお金持ちになりたくないですか?
A:いいえ なりたいとは思いません。
Q:欲しいものはなんですか?
A:欲望には限りがないから考えないわ。私は幸せです。家族といるだけで幸せなんです。
:いつも幸せです。このブータンに生まれたのですから。欲しがれば、あらゆるものが欲しくなる。今のままで十分ですよ。

====================
(ナレータ)
国民一人ひとりの本当の幸せは、経済最優先の政策では得られない。ブータン政府は、急激な近代化や経済開発に慎重な姿勢を取り、新しい物差しとして「国民総幸福量(Gross National Happiness)」という考え方を打ち出しています。

(政府のシンクタンクである「ブータン研究所」のカルマ・ウラ所長)
「私が関わってきた国民総幸福量という考え方に関連して言えば、幸福ということは、一人では有り得ません。人と人との関係の中でしか幸福はあり得ないという事です。その考えは、仏教に根ざしています。幸福という事は、仏教的に言えば悟りを得ることに近いものだと思います。先ほども申し上げたように、それは人との関係においてあるものですから、他の人が不幸な状況にある中で、自分だけが幸福であるということはあり得ない。幸福を追求するということには責任が伴うものです。それは私たちの行いに掛かっています。幸福は単独ではあり得ないのですから、良い関係を作るためには先ず自分自身の行動を変えて行かなければなりません。それを目指すことが大切だと思います。欧米的な考えでは、生活が良くなれば人は幸福になれるといいます。確かにそれは社会的進歩には違いないでしょう。しかし、それは仏教から言わせれば非常に低いレベルの話です。食べることに困らないとか、人権を侵しませんというような事だけでは、決してみんなが幸福になるとは思えません。もっと上を目指して行く必要があると思います。その為には、先ず人と人との関係を改善していくことが重要です。他人の幸せ無しに、自分の幸せも無いのですから。何を持って社会の進歩を図るのかと言えば、 人間関係の改善こそ進歩の尺度にすべきだと思います。」

(ナレータ)
いまカルマ・ウラさんは2008年度の公布を目指している新憲法の草案に携わっています。そこにも仏教の理念は生かされています。
 
憲法 第三条 精神的財産 
  仏教はブータンの精神的財産であり、中でも平和、非暴力、同情、寛容の原則と価値を奨励するものである。

「・・・・ブータンでどの様な仏教的価値観を大切にしているかといえば、二つあります。一つは仏教用語で言うところの縁起です。つまりあらゆるものが互いに関係しているということです。縁起ということは、これは理屈ではなくてみんな身をもって感じていることです。そしてもう一つの考え方は無我です。つまり、自我など大したことではないという事です。自分というものが自分だけで存在するのではなくて、他との関連の中にあるということなのです。この縁起と無我という二つの概念は非常に強くブータンに根付いています。そうすると自分だけの幸福というのは当然有り得ない。・・・」

====================
五木Q:人間が死ぬということ、死という事についてお考えになることはありますか?
A(中年の女性):死んだら生まれ変わるので、よりよい境遇に生まれるため念仏を唱えています。
A(若い女性)2:私も含めて全ての者は死にます。生まれたら必ず死ぬのだから怖くはありません。
A(老人):来世でも仏教徒として生まれたい。今、とても幸せなので来世も同じように送りたい。

====================
(五木):「・・・・どういう風に、人の命を大切にという事を、子供達に伝えることができるのか、その辺のヒントを聞かせて頂ければと思います」

(ロポン・ペラマ師):「もしこの世で人を殺してしまったら、500回は人間に生まれ変わることができません。しかも、500回殺され続けることになるのです。人を殺すということはそれほど罪深いことなのです。そういった事をキチンと諭さなければなりません。仏教では、人の生活は4つの要素で成り立っていると考えます。一つは“愛”、そして“慈悲”、さらに“幸福”“平等”です。愛というのは、例えば親と子の愛です。愛し合っていれば、わずかな食料でも分け合うものです。動物でさえ、どれほど子供を愛することか、その様子を見て、学ばなければなりません。それから私たちは、この世に存在する生きとし生けるもの全てを愛さなければなりません。例えどんなものであっても、過去においてあなたの両親や兄弟だった可能性があるのです。それを忘れてはいけません。この世の中には愛を必要としている命がたくさんあるのです。もっとも大切なのは慈悲の心です。私たちはそれぞれの人生において、病気になったり死を迎えたりします。その時に、その苦しみを一緒に味わおうとする気持ち、それが慈悲の心というものなのです。慈悲とは何かと考えるとき、常に自分自身の事に引きつけて考えなければなりません。もしあなたが誰かに針を刺そうとするとき、自分にその針を刺したらどんな痛みがするだろうかと考えてごらんなさい。そのように思いやる事が慈悲の心なのです。人に苦しみを与えないようにするという気持ちこそが、慈悲の心なのです。」

TBSで日曜日に山崎豊子の「華麗なる一族」をやっているが、その世界とまさに180度反対の世界がここにある。しかも、現実の国として。

人の幸福とは何か・・・? 金か名誉か・・・?
言い尽くされたテーマではあるが、この番組は「人の幸福とは何か?」に対して、ひとつの回答を与えてくれたのかも知れない。
(もちろん、自分にとっては最も遠い世界であることは確かだが・・・)

(関連記事)
NHK「五木寛之 21世紀・仏教への旅」が素晴らしい

NHK「五木寛之 21世紀・仏教への旅」の再放送が始まった

|

« 「カトリック」と「プロテスタント」の違い | トップページ | モーツァルトのトルコ行進曲 »

コメント

ブータン、
私の好きな国のひとつです。
1999-2000の間に
五回ほど訪れています。
2008には国王が変わりますが、
10年前とはずいぶんと様変わりした
ようです。

投稿: ampouie | 2008年10月27日 (月) 01:35

ampouie さん

ヘエー!そうですか。行ったことがあるのですか!しかも5回も・・・
大変な高地で気象条件も厳しい所、と言っていました。とても観光という感じでは無いのでしょうね。でも“株の暴落”とは無関係な別の世界があるのでしょうね。

投稿: エムズの片割れ | 2008年10月27日 (月) 21:46

初めて知りました。

これが真の仏教国だと思いました。

素晴らしいですね。

投稿: たかはし | 2011年11月 5日 (土) 16:22

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: NHK「五木寛之 21世紀・仏教への旅」ブータンの幸福観:

» 人間関係と話し方 [人間関係を改善する話し方]
人間関係の悩みを解消し、コミュニケーションの能力・スキルをアップするには・・・ [続きを読む]

受信: 2007年2月18日 (日) 16:12

» ブータンと国民総幸福量(GNH) とは [人と地球]
すべての国民の「幸せ」を増加させることを国家の使命とする「国民総幸福量」(GNH)の概念 [続きを読む]

受信: 2007年3月 8日 (木) 14:51

« 「カトリック」と「プロテスタント」の違い | トップページ | モーツァルトのトルコ行進曲 »