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2006年12月13日 (水)

映画「敬愛なるベートーヴェン」を見た

映画「敬愛なるベートーヴェン」を見た。まあまあ分かり易く、楽しめた。ベートーヴェンを演じていた人も、肖像画と良く似ていたし・・・・
主人公はベートーヴェンというより、女性写譜師のホルツ。
第九の初演の4日前に、まだ合唱部分が完成していなかった、という設定で物語は始まる。そして、4日後の初演の時に、この女性写譜師が舞台に隠れて実質の指揮をして、それを指揮台のベートーヴェンが見ながら指揮棒を振るという、今までの伝承とはあまりにも懸け離れた設定。
物語については何とも言い難いが、何せ演奏されるのが天下の「第九」。今更言うまでもない第九の圧倒的な迫力・素晴らしさに、全てが小さい存在となり、物語はもうどうでも良くなる。

映画の物語からは離れるが、やはり「第九」は人類の大いなる財産だ。この映画の演奏はロンドン響とあった。ついつい昔を思い出して映画と共に歌ってしまった。
というのは、昔、この第九を舞台で歌ったことがあった。

日時:1972年12月24日(日)14:00~  八王子市民会館
指揮:外山雄三 orch:新星日本交響楽団 S:小池容子 A:成田絵智子 T:下野昇 B:芳野靖夫 合唱:三多摩「第九」合唱団
*調べてみたら、この演奏会が第一回で、その後(毎年募集して演奏が終わると解散する)この合唱団は、96年の第25回まで続いたらしい。

この時は、もちろん原語で暗譜であったため、バスのパートは全て覚えた。それから30年以上になるが、未だに覚えていて映画と共に歌える。やはり“名曲”ならではのもの・・・・

伝承によると、第九の初演は指揮台にウムラウフとベートーヴェンの二人が立ち、演奏後、聴衆の喝采に気が付かないベートーヴェンに、見かねたアルトの歌手がベートーヴェンの手を取って聴衆の方を向かせ、はじめて拍手を見ることができた。とあるが、映画ではこの役は女性写譜師のホルツ。でもこの場面は、それまでの静寂からベートーヴェンが振り向くと同時に熱狂の音・・・。なかなか良かった。

それと、ベートーヴェンの難聴をどう画くかが、映画では難しい。ほとんどの会話は普通の映画と同じ。普通に会話ができたとは思えないが、それを画くと映画を見ている人が煩わしくなるので仕方が無い・・・・。
晩年10年はほとんど聞こえなかったらしいが、確かに演奏が終わっても指揮棒を降り続けていたという逸話からすると、本当かも? でもそれで作曲が出来るとは到底思えず、天才とは言え、相変わらず信じられない。

最後の場面の、「大フーガ」の不評と、それまでの第九の“熱狂”との落差・・・。
芸術家とは、自分の納得するものを作り出すのが仕事なのか、それとも他人受けするものを作り出すのが仕事なのだろうか・・・・?
他人に評価されないものを作り続けていても生活は出来ないし、かと言って他人受けするものに固執していても、何かそれに“迎合”していてイヤだし・・・。
芸術の世界は、自分がやりたいようにやって、それが世間から評価されればそれに越した事はないが、そううまくも行かず、バランスが難しい世界なのだろう・・・・と思った。

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» 敬愛なるベートーヴェン フーガを理解できなくても、第九には圧倒された。とても大胆な映画。 [もっきぃの映画館でみよう]
タイトル:敬愛なるベートーヴェン(原題 Copying Beethoven) 製作国:イギリス・ハンガリー ジャンル:伝記もの/2006年/104分 映画館:TOHO二条シネマズ(127席) 鑑賞日時:2006年12月8日 (土),12:30〜 70人ぐらい 私の満足度:70%  オススメ度:60% 主演エド・ハリスと聞いて、思い出すのはビューティフル・マインドの スパイ役。怖さを感じさせる鋭い目つきでの怪演は、まさにピッタリ。 音�... [続きを読む]

受信: 2006年12月18日 (月) 03:04

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ベートーヴェン役、エド・ハリス アンナ役、ダイアン・クルーガー 天才音楽家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンと、コピスト(写譜師)となった作曲家志望アンナの師弟愛を描いた感動ドラマ。 監督は『太陽と月に背... [続きを読む]

受信: 2006年12月18日 (月) 20:46

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