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2019年9月 7日 (土)

「身に染みる衰え」~確かに自分も老いた・・・

先日の朝日新聞に載っていた一文。さすがにプロ作家の文章である。
「(終わりと始まり)身に染みる衰え 老いては若きに席を譲ろう 池澤夏樹
 まずは個人的な話。
 自分が老いたと思う。それが日々実感される。
 身体能力が少しずつ失われる。
 基礎代謝が減るとはどういうことか。食物として入ってくるエネルギーを活動に変える機能が低減する。身体の方がもうそんなに働くなと言っているかのよう。無理に食べても無駄に肥(ふと)るだけ。
 我が血流は消化か歩行か思考の一つにしか行かない。二つのタスクが同時に実行できない。
 足元がおぼつかない。駅の階段を下りる時は一歩ずつ決意して踏み出す、歩道のわずかな起伏に躓(つまず)きかねない。長く坐(すわ)っていた後で立つとふらつく。万事ゆっくり。万事慎重。つまり愚図(ぐず)。
 視力が落ちる。以前は乗り物の中ではいつも何か読んでいたのに、最近はたいていぼんやりしている。
 いつか車の運転を止(や)める日がくるだろう。
 キーボード入力が遅い。ぼくの右手の人差し指はヘバーデン結節で少し左に曲がった上にねじれている。スマホを打っていて、指先のどの部分が画面に触れるかわからないのでミスが多い。何度もやりなおす。
 小さな字が読めない。振り仮名の濁点と半濁点の区別にルーペが要る。イタリアの「ベニス」なんて間違えたら大変だ。
 しゃれたレストランの暗い店内でメニューを貰(もら)って、さて、気取った長い料理名が読めない。老眼鏡に装着する小さなLEDを作って売ったらどうか。名付けて「メニュー・ライト」。
 小さな字が書けない。
 遠方の身内に毎月送金している。相手も老いているので口座振込ではおぼつかない。現金書留という古典的な方法に依(よ)るわけだが、この封筒の「お届け先」の欄が小さい。住所の部分は二行だけ。実質六九mm×二四mmでは長いマンション名が書ききれない。封筒そのものは大きいのだから周囲には空き地がいくらでもある。なんとかしろ、とぶつぶつ言うのが我ながら老人めいている。
 (冗談として言うけれど、先日行った京都のさる店は「京都府京都市東山区高台寺北門前通下河原東入ル鷲尾町○○○」という住所であった。さて、この二十八字を「お届け先」欄にどう書く? こういう住居表示を今も使っている京都人をぼくは尊敬するものであるのだが。)
     *
 身体能力が足りないからエネルギーを節約する。つまりすべてにおいて横着になる。すぐにしなくても済みそうなことはさぼる。身辺が散らかっていわゆる汚部屋に近づく。
 不義理が増える。メールの返信が遅れる。みなさんごめんなさい、と言いながらも手が動かない。
 カレンダーが頭に入っていないから、スケジュールの話が空(そら)でできない。
 スマホは使っているがアプリの類は最小限に抑えている。新しいものを入れてその用法を身につけるのが面倒くさい。
 藤永茂さんに『おいぼれ犬と新しい芸』という名著があった。海外に出た科学者のエッセーだが、三十五年前のこの本の表題が今になって身に染みる。新しい芸は身につかないのだ。
 知的好奇心が衰えた。
 新しいものに飛びつかなくなった。
 旅に出る時、昔ならば事前にずいぶん予習をしたのだが、最近は着いてからインターネットに頼る。ものの見かたが浅くなっていないか。
     *
 ぼく個人のことはどうでもいい。愚痴ないし繰り言と聞き流していただいて結構。
 しかし社会の高齢化というのはつまりぼくのような老人がどんどん増えるということである。申し遅れたがぼくは今は七十四歳と二か月。来年は後期高齢者。その後は晩期高齢者で、やがて末期高齢者。
 新しいシステムは若い人が作る。それを次々に覚えて使って遅れないようにする。四十代の友人が、今はまだいいけれど六十代になったらたぶん追いつけないと言っている。
 フェイスブックやインスタグラムなどは、飾り窓のまぶしい商品を見ている思い。いつか苛(いら)立って、筒井康隆の小説に出てくる不逞(ふてい)老人のようにテロに走るかもしれない。
 冗談半分に書いてきたが、高齢化でこの国は活力を失うだろう。あらゆる面で生産力が落ちる。あとは衰退の一途、とか。
 社会の平均年齢が年々上がる。若い世代を準備しなかったのだから当然である。我々は商業資本とテクノロジーが提供する目の前の悦楽にうかうかと身を任せ、出産・育児・教育という投資を怠ってきた。国の無策は今さら言うまでもない。
 と書きながら、悲憤慷慨(ひふんこうがい)でもない。いずれ退場する身とは承知している。では若い人に席を譲ろう。
 年下の諸君、幸運を祈る。」(2019/09/04付「朝日新聞」p24より)

筆者は74歳でこの嘆き。自分も2~3年ですぐに追い付いてしまう。
自分も急速に老いていることに気付く。「後で」が成り立たない。「後で」と言った瞬間に、もう忘れている。だから何かを思い付いても、食事中だろが何だろうが、直ぐに行動に移さないと、二度と思い出さない。それが分かってきたから、最近は「後で」は言わないことにしている。寝床で思い付いたことなど、本当に「後で」したいことは、スマホで自分宛にメールを打っておく。すると、PCを立ち上げたときに思い出す。これは実践的で有用。

最近、良く家事を手伝っているが、ミスが多い。誰かが「家事が火事にならないように」なんていうコメントをくれたが、それが冗談事では無くなっ190907kajiyoujinn ている。コンロを弱火にしておいて、そのことを忘れて火を点けたままだった“火の気し忘れ”が3度!!
コンロの前の壁には、カミさんに「火事用心(本人は火の用心と書くつもりだったらしい)」という標語をデカデカと貼られてしまった。あと1回やったら、コンロの使用禁止命令が下るかも・・・
それに、食器を洗っていて、滑ってよく落とす。自分はちゃんと洗っているつもりだが、洗剤のためにすべるのだ。今までは、落としても割れないので、「食器って頑丈なんだな~」なんてうそぶいていたが、先週は、グラタンの皿を洗っているときに、落としてもいないのに割れてしまった。そしてその反動で、左手の人差し指をスパッと深く切ってしまった。血があふれ出し、ビックリ。なるほど、石器時代は切り口がナイフだったことが納得できた。
あわてていつもの「キズパワーパッド」(ここ)を貼る。すると、指を曲げると血が止まったこともあり、血が出ない。そして1週間後の今日には、ほぼ治った。「キズパワーパッド」が無ければ医者で縫うほどの深さだったが、便利になった。数が少なくなっていたこともあり、早速新しい「キズパワーパッド」を通販で買い足した。

話は変わるが、居間のPCをwin10にしたとき、体重計を買い換えた。それまで使っていた体重計がwin10に対応していなかったため。タニタのSDメモリーカード付の体組成計なのだが、これがまた色々な表示が出る。その中で分かり易いのが「体内年齢」。自分はこれがずっと56歳で、15歳も若返るので見る度に気をよくしている。
改めて「体内年齢」って何だ?とタニタのHPを覗いてみた。すると・・・
「体内年齢は、体組成と基礎代謝量の年齢傾向から、どの年齢に近いかを表しています。
厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準」の「基礎代謝基準値(体重あたりの基礎代謝量)」に基づき、タニタ独自の研究から導き出した年齢傾向から算出しています。
基礎代謝基準値と年齢の間には下図のような関係があり、20代~40代にかけ徐々に減少し、50代を超えるとほぼ横ばい傾向にあります。
同じ体重でも体組成により、体内年齢が変わります。筋肉量が多く、基礎代謝量が高くなるほど、体内年齢は若くなります。例えば実年齢が40才であっても筋肉質で基礎代謝が高く、20代の基礎代謝基準値と同じ場合には、体内年齢も20代となります。」ここ)とあった。どうも基礎代謝量が影響しているらしい。

自分の基礎代謝量は1345ほどで「多い」という表示。上のHPを見ると70歳以上は1290とあるので、少し多いらしい。しかし、運動大キライ人間の自分が、実年齢よりも若いと判定されるのは嬉しい。まったく心当たりが無いのだが・・・

ともあれ、上の一文では無いが、自分も“色々な事件”から、確実に後期高齢者から晩期高齢者、そして末期高齢者に向かっている。
先日も、同じ歳の昔の同僚が大腸がんで8月末に亡くなったという訃報が届いた。
「老い」を実感し、何とかせねば、と思う夏の終わりである。


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コメント

食品の成分表をみて、こんなものが入っているから、食べてはいけない。と言う人が身近にいました。「70年も生きられたんだから、美味しいもの食べて気楽に暮らせばいいじゃないの」と言ったらカンカンに怒りました。食べ物よりその性格が悪くて早死にするんじゃないのと言ってやりたかったです。
運動をしていても早死にする人もいますし、完璧な食事をしていても癌でなくなる人もいます。近所で神経が細かくていつもイライラしている人が心臓病で2人亡くなりました。
心臓が悪かったのでイライラしていたのか、心臓が悪いのではなく、頭の構造でイライラが募ったのかわかりません。あまり数字にこだわらずにゆったりのんびり暮らした方が長生きするような気がします。どっちにしても年をとったら慌てず騒がずのんびりした方が幸せです。皆に愛されて暮らしたいものだと私は思っています。エムズ様は優しい方ですから健康で長く生きられますよ。

【エムズの片割れより】
最近、自分のイライラの元凶は、TVや新聞のニュースだと悟りました!?
なるべく見ないように!とは思うのですが・・・
前に書いたように「ウォンバットのウンチはなぜ四角い?」で悩む人生の方がよっぽど健康!ということは分かってはいるのですが・・・
「神経が細かくていつもイライラしている人が心臓病で2人亡くなりました」という話は良く分かります。

投稿: 白萩 | 2019年9月10日 (火) 16:45

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