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2019年3月26日 (火)

「人は憎むことを学ぶのだ」~教育とは

昨日(2019/03/25)の朝日新聞に、こんな記事があった。
「(風 南アフリカ・ロベン島から)マンデラ氏と看守の友情 北川学
 南アフリカの港町ケープタウン沖に、フィンボスと呼ばれる低木とユーカリの木に覆われた外周12キロのロベン島がある。
 アパルトヘイト(人種隔離)政策に抵抗し、国家反逆罪で終身刑となったネルソン・マンデラ氏は1964年から18年間、この島の刑務所で服役した。27年に及んだ獄中生活の3分の2にあたる。
 刑務所だった建物群は博物館になっている。堅牢な平屋建ての内部に、廊下を挟んで32の独房が並ぶ。中庭に面した5号房にマンデラ氏はいた。
 鉄格子がはまった2メートル四方の房内には、ござと毛布、金属製の皿とカップ、小さな机、トイレ代わりのバケツがあった。
    *
 マンデラ氏が2013年に亡くなるまで交流を続けた白人の元看守がいる。クリスト・ブランドさん(59)。高校を卒業した78年に採用され、ロベン島に赴いた。
 「上司は黒人の囚人を極悪人と呼んでいましたが、会ってみるとみんな謙虚で、私にも敬意をもって接してくれました。肌の色で人を判断する愚かさに気づきました」
 ブランドさんはこんな思い出を語ってくれた。
 マンデラ氏の妻が面会に来た。生後4カ月の孫娘を連れていたが、子どもと囚人の面会は禁止だ。妻は孫娘を別室に預けて面会室に入った。話を聞いたマンデラ氏は、後ろで見張るブランドさんに「会わせてくれないか」と懇願した。
 ブランドさんは「だめだ」と答えたが、情を抑えることはできなかった。面会後、別室に戻った妻に、再び面会室に入るよう伝えた。孫娘を預かると囚人用の通路に行き、マンデラ氏に30秒だけ抱っこさせた。「彼は涙を流し、孫娘に2度キスをしました」
 以来、2人はさらに親しくなった。看守と囚人の会話は禁じられていたが、人目を忍んで言葉を交わした。
    *
 マンデラ氏は94年に黒人初の大統領となり、有色人種と白人の融和を訴えた。ブランドさんは制憲議会の職員としてマンデラ氏を支えた。
 アパルトヘイトが生きていたころ、南アの有色人種には参政権がなかった。鉄道、レストランなどあらゆる場所で白人と隔離された。そんな時代に白人の看守と友情を育んだマンデラ氏は「自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝」(東江一紀訳、NHK出版)にこう記す。
 「肌の色や育ちや信仰のちがう他人を、憎むように生まれついた人間などいない。人は憎むことを学ぶのだ。そして、憎むことが学べるのなら、愛することだって学べるだろう」
 世界には、自らと異なる人種や民族を頭ごなしに否定する声があふれている。ニュージーランドでは白人至上主義の男が銃を乱射し、多くのイスラム教徒の命を奪った。忌まわしい事件が起きた今こそ、マンデラ氏の言葉をかみしめたい。 (中東アフリカ総局長)」(2019/03/25付「朝日新聞」p8より)

なかなか良い話である。
「肌の色や育ちや信仰のちがう他人を、憎むように生まれついた人間などいない。人は憎むことを学ぶのだ。そして、憎むことが学べるのなら、愛することだって学べるだろう」
という言葉は胸を打つ。

前に見たNHKのドキュメンタリー番組のこんな場面を思い出した。
NHKハイビジョン特集「日中戦争~兵士は戦場で何を見たのか~」の一場面である。当時、この番組について記事を書いた。(ここ
(ココログの3月19日から続いているリニューアルの大トラブルで、記事の検索が出来なかったが、やっと今日、検索機能が復活したので前に書いた記事を見付けることが出来た)

もう10年以上も前の記事だが、当時こんなことを書いた。
「番組の冒頭は、ショッキングな画面から始まる。現在の“中国の教育”の実態である。
ナレータ:
「中国北京郊外 盧溝橋です。今年7月7日、多くの人がこの橋を訪れていました。
(先生):「永遠に忘れないで下さい。1937年の今日は『国恥』の日でした」
(生徒達の合唱):「国の恥を忘れずに! 一生懸命学ぼう! 祖国のために尽くそう!」
69年前のこの日、橋の近くで演習中の日本軍に銃弾が撃ち込まれ、それをきっかけに中国軍との衝突が起こりました。盧溝橋事件です。」

まさに「人は憎むことを学ぶのだ。」という場面である。

日本の教育も、戦前復帰へ向かって怖ろしい状態である。
無垢な子どもたちを、一部の政治家の餌食(えじき)としないため、我々は何が出来るのだろう?

(追:2019/03/27)日本の教科書でもこんな動きが・・・・
「領土」、政府見解を徹底 来春からの小学校教科書、検定結果
 来春から使われる小学校教科書の検定結果が発表された。領土をめぐる記述では政府見解に沿った形で細かい意見がつき、2回目となる道徳の検定では「国や郷土を愛する態度」の扱いが「不適切」とされる例があった。他の教科の特徴とあわせ、紹介する。

 ■「誤解のおそれ」、記述に細かな意見
 2017年に改訂された小学校の学習指導要領は初めて、社会で北方領土に加えて竹島や尖閣諸島について「我が国の固有の領土であることに触れること」と明記された。教科書検定でも、政府見解の用語を徹底させる意見が相次いだ。
190326kyoukasyo  日本の領土について学ぶのは主に5年。13年度に検定を受けた社会の教科書も全て、北方領土や竹島、尖閣諸島について触れていたが、指導要領の改訂を受けて今回申請した4社(地図を含む)はすべて領土問題を扱い、「固有の領土」と明記した。
 それでも、検定意見で日本政府のスタンスを加えることを求められた。東京書籍の5年の教科書では竹島について「日本固有の領土ですが、韓国が不法に占領しています」という記述について「我が国の立場を踏まえた現況について誤解するおそれのある」と意見がつき、「韓国が不法に占領しているため、日本は抗議を続けています」という表現になった。尖閣諸島についても「日本固有の領土ですが、中国がその領有を主張しています」という表現に「尖閣諸島の支配の現況について誤解するおそれのある」と意見がつき、「領土問題は存在しません」という文が加わった。
190326syakai  教育出版の5年の教科書では尖閣諸島について「領土をめぐる問題はない」と書いたところ、「誤解をするおそれのある」と検定意見がつき、「領土問題はない」となった。「尖閣諸島も日本の領土でありながら」という記述は「支配の現況について誤解するおそれのある」と意見がつき、「尖閣諸島も日本の領土であり、国としての適切な管理をこれまで続けているにもかかわらず」となった。
 以前から教科書で「固有の領土」と明記をされていた北方領土についても検定意見がついた。日本文教出版は6年の教科書で「歴史的にも日本の領土」と書いたところ、「誤解するおそれのある」と意見がつき、「日本の固有の領土」と修正した。
 皮肉にも、教科書検定の作業の最中には、ロシアとの平和条約交渉を目指す安倍晋三首相や河野太郎外相が北方領土について「固有の領土」という表現を避けるようになった。安倍首相は国会で立場を問われ、「日本が主権を有する島々」という表現を使った。
 指導要領は「社会的事象の意味を多角的に考える力」も養うとしている。ある教科書会社の担当者は「我々が指導要領をベースにするのはしょうがないが、教科書はあくまで素材。子どもたちが教科書を見て、首相が言っていることと違うと気づけば、素材としては素晴らしい」と話している。

 ■道徳、忠実な表現要求 国や郷土愛、「不適切」相次ぐ
 小学校で2018年度から「特別の教科」となった道徳は、2回目の教科書検定だった。前回と同じ8社が申請し、検定意見は244件から149件と減った。ただ、学習指導要領に定められた「善悪の判断、自律、自由と責任」や「節度、節制」「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」などの「内容項目」に忠実な書きぶりが求められる意見が目立った。
190326doutoku  日本文教出版の1年は、図書全体が「家族愛・家庭生活の充実」の扱いが不適切、との意見がついた。対応する教材は「おかあさんのつくったぼうし」。同社は、物語の最後につけた発問で、「かぞくについておもっていること」を、「だいすきなかぞくのためにがんばっていること」と修正し、認められた。文部科学省によると、指導要領が求める内容で、「家族の役に立つ」という要素が不足していたという。
 同社の3年は「伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度」の扱いが不適切とされた。文科省は、「一体として満たされていなかった」として、不足部分を明らかにしていない。同社によると、前回から教材を入れ替えていた関係で、「郷土を自慢する」という要素が足りなかったと推測でき、「あなたの地いきには、昔からつたわるじまんしたいものがあるかな」などの記述を増やした。
 学研教育みらいの3年も同じ内容項目で意見がついた。日本の祭りを紹介するページで「人々のどのような思いが祭りをささえてきたのでしょう」と、「思い」を強調する表現に変えた。
 ある教科書会社の担当者は「たとえば、1年の『節度、節制』では、健康や安全に気をつける、規則正しい生活など、全ての要素を教材の中で満たす必要がある。パズルのような作業になっている」と話す。
 道徳は、2年前にも教科書検定をしたばかりだったこともあり、多くの教科書会社は変更を最小限にとどめた。低学年では動物が主人公の物語、高学年では偉人伝が多く、「手品師」「星野君の二塁打」など定番の読み物が多用された。
 子どもが自己評価する欄も引き続き目立った。東京書籍は記述式の自己評価に加え、顔マークを塗りつぶすチェック欄も設けた。「子どもが振り返りをしやすくした」と説明する。
 採択の際に出た意見を踏まえ、内容を変えたケースもあった。市民団体などから、お辞儀の角度のイラストが「型にはまっている」と指摘された教育出版は「場面によってマナーを変える」という教材になった。巻末にあった国旗国歌のページは、低学年では「全校集会のマナー」に差し替えた。「広く受け入れられやすい教科書を目指した」という。」(2019/03/27付「朝日新聞」P27より)


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