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2018年5月21日 (月)

「忖度を生むリーダー」~ウソの連鎖

先日の朝日新聞にこんな記事があった。
「(政治季評)忖度を生むリーダー 辞めぬ限り混乱は続く 豊永郁子
 アイヒマンというナチスの官僚をご存じだろうか。ユダヤ人を絶滅収容所に大量輸送する任に当たり、戦後十数年の南米などでの潜伏生活の後、エルサレムで裁判にかけられ、死刑となった。この裁判を傍聴した哲学者のハンナ・アーレントは「エルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告」を執筆し、大量殺戮(さつりく)がいかに起こったかを分析した。

 前国税庁長官・財務省理財局長の佐川宣寿氏の証人喚問を見ていて、そのアイヒマンを思い出した。当時、佐川氏ら官僚たちの行動の説明として「忖度(そんたく)」という耳慣れない言葉が脚光を浴びていた。他人の内心を推し量ること、その意図を酌んで行動することを意味する。私はふと、アーレントがこの日本語を知っていたらアイヒマンの行動を説明する苦労を少しは省けたのではないかと考えた。国会で首相の指示の有無を問いつめられる佐川氏の姿が、法廷でヒトラーの命令の有無を問われるアイヒマンに重なったのである。
     *
 森友学園問題――国有地が森友学園に破格の安値で払い下げられた件、さらに財務省がこの払い下げに関する公文書を改ざんした件――については、官僚たちが首相の意向を忖度して行動したという見方が有力になっている。国会で最大の争点となった首相ないし首相夫人からの財務省への指示があったかどうかは不明のままだ。

 アイヒマン裁判でも、アイヒマンにヒトラーからの命令があったかどうかが大きな争点となった。アイヒマンがヒトラーの意志を法とみなし、これを粛々と、ときに喜々として遂行していたことは確かだ。しかし大量虐殺について、ヒトラーの直接または間接の命令を受けていたのか、それが抗(あらが)えない命令だったのかなどは、どうもはっきりしない。

 ナチスの高官や指揮官たちは、ニュルンベルク裁判でそうであったが、大量虐殺に関するヒトラーの命令の有無についてはそろって言葉を濁す。絶滅収容所での空前絶後の蛮行も、各地に展開した殺戮部隊による虐殺も、彼らのヒトラーの意志に対する忖度が起こしたということなのだろうか。命令ではなく忖度が残虐行為の起源だったのだろうか。

 さて、他人の考えを推察してこれを実行する「忖度」による行為は、一見、忠誠心などを背景にした無私の行為と見える。しかしそうでないことは、ヒトラーへの絶対的忠誠の行動に、様々な個人的な思惑や欲望を潜ませたナチスの人々の例を見ればよくわかる。

 冒頭で紹介したアーレントの著書は、副題が示唆するように、ユダヤ人虐殺が、関与した諸個人のいかにくだらない、ありふれた動機を推進力に展開したかを描き出す。出世欲、金銭欲、競争心、嫉妬、見栄(みえ)、ちょっとした意地の悪さ、復讐(ふくしゅう)心、各種の(ときに変質的な)欲望。「ヒトラーの意志」は、そうした人間的な諸動機の隠れ蓑(みの)となった。私欲のない謹厳な官吏を自任したアイヒマンも、昇進への強い執着を持ち、役得を大いに楽しんだという。

 つまり、他人の意志を推察してこれを遂行する、そこに働くのは他人の意志だけではないということだ。忖度による行動には、忖度する側の利己的な思惑――小さな悪――がこっそり忍び込む。ナチスの関係者たちは残虐行為への関与について「ヒトラーの意志」を理由にするが、それは彼らの動機の全てではなかった。様々な小さなありふれた悪が「ヒトラーの意志」を隠れ蓑に働き、そうした小さな悪が積み上がり、巨大な悪のシステムが現実化した。それは忖度する側にも忖度される側にも全容の見えないシステムだったろう。
     *
 このように森友学園問題に関して、ナチスに言及するのは大げさに聞こえるかもしれない。しかし、証人喚問を見ていると、官僚たちの違法行為も辞さぬ「忖度」は、国家のためという建前をちらつかせながらも個人的な昇進や経済的利得(将来の所得など)の計算に強く動機づけられているように感じられ、彼らはこの動機によってどんなリーダーのどんな意向をも忖度し、率先して行動するのだろうかと心配になった。また、今回の問題で、もし言われているように、ひとりの人間が国家に違法行為を強いられたために自殺したとすれば、そこに顔を覗(のぞ)かせているのは、犯罪国家に個人が従わされる全体主義の悪そのものではないか、この事態の禍々(まがまが)しさを官僚たちはわかっているのだろうか、と思った。

 以上からは、次の結論も導かれる。安倍首相は辞める必要がある。一連の問題における「関与」がなくともだ。忖度されるリーダーはそれだけで辞任に値するからだ。

 すなわち、あるリーダーの周辺に忖度が起こるとき、彼はもはや国家と社会、個人にとって危険な存在である。そうしたリーダーは一見強力に見えるが、忖度がもたらす混乱を収拾できない。さらにリーダーの意向を忖度する行動が、忖度する個人の小さな、しかし油断のならない悪を国家と社会に蔓延(はびこ)らせる。

 すでに安倍氏の意向を忖度することは、安倍政権の統治の下での基本ルールとなった観がある。従って、忖度はやまず、不祥事も続くであろう。安倍氏が辞めない限りは。
     ◇
 とよなが・いくこ 専門は政治学。早稲田大学教授。著書に「新版 サッチャリズムの世紀」「新保守主義の作用」。」(
2018/05/19付「朝日新聞」p14より)

今日、愛媛県から、安倍首相と加計理事長が、首相の説明よりも2年も前に会って、獣医学部新設についての説明をしていたというニュース速報があった。
愛媛県知事の言うように、ウソは他人を巻き込む。付いたウソは、関係者全員がウソの上塗りをして口裏合わせしなければ、どこかからほころぶ。そんな当たり前の事を、国の代表者が行っている。誰もがウソだと分かる誠意のない説明は、国民にはバレバレ。
それでも、昨日報道された内閣支持率は、前月に比べ3%上がっているという。まったく分からない。首相の後継者が見えないのが原因か?
・・・とすると、日本という国は、大変な人材不足の国という事になる。世界に冠たる経済大国の日本に、リーダー候補が居ない!

明日、もはや社会問題化した日大/関学大のアメリカンフットボールの試合における暴力事件に関し、日大の選手が記者会見をするという。
エライ人が付いたウソに、弱い者が付き合わされる連鎖。それが断ち切れるのかどうか・・・
佐川さんや柳瀬さんは、官僚としての実績があるので、それを棄てられず、エライ人のウソに付き合うしかない。まさに上の記事と同じ構図。
しかし、学生は自分の今後の人生がかかっている。監督という絶対的にエライ人のウソに付き合うことが、自分のこれからの人生にどれだけの悪影響を与えるか・・・
怪我を負わせた実行者としての責任はあるものの、単なる学生時代だけのスポーツの監督との関係で、長い人生に負い目を持つ必要は無い。
今の行動が、これからの自分の長い人生に、燈台の光のビームのように照らしている。いつ思い出しても、胸を張れるような、そしてこれから生まれるであろう我が子に対しても、堂々と説明出来る行動を期待したい。薄汚れた官僚とは違うのである。

最近は、将棋の藤井さんと、大リーグの大谷選手の他に明るいニュースを与える人がいない。この二人の活躍からニュース番組を始めれば、日本は少しは明るくなるかも・・・!?
救いようのない日本のリーダーではある。


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コメント

こんばんは。お邪魔します。

彼に直系の二世がいないことがせめてもの救いです。

子がいないとここまで破廉恥漢になれるひとつの例ですかね。だれの手本になる必要もない、やりっぱなしでいい、それでいい存在です。

【エムズの片割れより】
麻生大臣を見るにつけ、世襲議員には辟易します。その点、子供の居ない現首相は、せめてもの救いですね。

投稿: くめとこ | 2018年5月21日 (月) 21:14

『あうんの呼吸』みたいな忖度はどんな場面でも存在するし、それがなくなれば一々説明が必要になってしまう。
共同作業でピラミッド型の組織なら仕方が無いのでは、と思います。

リーダーが立派な人なら、全体が立派な方に力が合わさると思う。

日大のアメフトの事件?がどうなるかはこれからだし、大分前の築地、豊洲問題もまだ終了はしていない。
一時はずいぶんファンが多かった都知事からずいぶんの人が去った様だし、避難する様な本も出ている様だし、やはりリーダー次第で世の中が変わる様に思う。

政治だけでなく会社なんかでもずいぶんの会社がいいリーダーが居なくて、なくなったり他所の国の会社になったり、あんな大会社だったのに稼ぎ部門を売り払ったり、同じ様な事なのではと思います。

【エムズの片割れより】
現役の時、当時は「忖度」という言葉は使いませんでしたが、「スタンス」という言葉を良く使いました。
前例のあの案件では、上司はそんな「スタンス」だったので、この案件でもこのようにジャッジされるな。と想定して動いたもの・・・
それに従わざるを得ない下の者は、面従腹背・・・!?
自分が納得の出来ないスタンスの上司に仕えるのは、大変なストレスでした。

投稿: Syu(chan) | 2018年5月22日 (火) 08:38

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