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2018年1月 6日 (土)

「私の折々のことばコンテスト」~言葉の重さ

「こと‐だま【言霊】」を広辞苑で引くと「言葉に宿っている不思議な霊威。古代、その力が働いて言葉通りの事象がもたらされると信じられた。万葉集13「―のたすくる国ぞ」」と載っていた。

今朝の天声人語。
「(天声人語)10代に届く言葉
 言葉の真価は、誰が言ったかではなく、誰が聴いたかで定まる。中高生がとっておきの言葉を紹介する「私の折々のことばコンテスト」の秀作を読んで、そう思う。今回は3万を超す応募があった▼最優秀賞は熊本県の農業高校に通う遠山桃々乃(ももの)さんの「あんたの根っこ見つけて水やり続けるねん」。大阪市出身。農業を学びたいのに親も先生も賛成してくれない。3年間、一緒に花壇の世話をした用務の男性だけが「自分の根は自分にしかわからへんねや」と応援してくれた▼意外にも、名言の主は本紙の取材に「そんなこと言うたかな」と失念の体。でも遠山さんはその助言を受け止め、いま阿蘇山麓で充実の日々を送る▼「全力で恥をかけ」で佳作に選ばれたのは、埼玉県の中学生井上真梨子さん。生徒会の役員になれたが、全校集会の司会で失敗する。予定にあった先生の話をいくつか飛ばしてしまった。「落ち込んだけど、生徒会室の黒板に書いてあった先輩の言葉に救われた。恥をバネにしようと思いました」▼神奈川県の高校生坪井菜那子さんは、祖父を亡くした昨夏の思いをつづる。母の友人で、津波に親をさらわれた女性からLINEで短文が届いた。「送れる幸せを噛みしめてください」。読んで、愛する家族に別れを告げることの重みを実感したという▼迷い、躓(つまず)き、別れ。10代が選んだ言葉にはどれも物語がある。ひるみながらも全力で人生にぶつかっていく。真剣に悩むからこそ、言葉が心の奥深くまで届く。」(
2018/01/06付「朝日新聞」「天声人語」より)

今朝の朝日新聞に、このコンテストの秀作が載っていた(ここ)。
「(私の折々のことばコンテスト2017)その一言のチカラ
 中学生・高校生が心に響いたことばとそのエピソードをつづる「私の折々のことばコンテスト2017」(朝日新聞社主催、朝日中高生新聞共催、Z会、栄光ゼミナール特別協賛)の審査結果を発表します。哲学者、鷲田清一さんが朝刊1面に連載しているコラム「折々のことば」にならった作文で、3回目の今回は最多の3万1588点の応募がありました。

 ■最優秀賞 遠山桃々乃さん(熊本県立菊池農業高3年)
 あんたの根っこ見つけて水やり続けるねん(中学校の管理作業員さん)
     ◇
 「熊本へ行って農業を学びたい」。大阪の大都会で生まれ育った私が熊本の農業高校への進学を決めた時、担任の先生を始め、多くの先生に「向いていない」「やめておけ」と反対されました。そんななか、3年間一緒に花の世話をしていた管理作業員さんだけが私を応援してくれました。「あんたの根っこ見つけて、水やり続けるねん。自分の根は自分にしかわからへんねや」と言って頂き「やっぱり私は農業を学び、それを水として大きく育ちたい!」と強く思えるようになりました。
 今、私は全力で農業を学び、夢を見つけ充実した日々を送っています。毎日私の根っこに水をやり、育ち、立派に実って農業から社会に貢献できる人になります。

 ■夢めざし、つらい時支えてくれた
 1年生の時には、ひなから育てたニワトリをしめて解体することができなかった。帝王切開で生まれ、立てない子牛の脚を支えながら哺乳した。犬の出産では大半が死産。クラスで飼育した豚は出荷後、買い戻してバーベキューでおいしく食べた。
 畜産科学科の3年間を「動物と向き合う生活を送れて充実していた」とにこやかに振り返った。
180106asahi  動物が好きで、中学2年の時、農業高校の畜産科を紹介するテレビ番組を見て志望を決めた。両親も先生も「朝が早くてついていけない」と反対。負けず嫌いで朝4時の起床を続け、大丈夫だとアピールした。そんな時に出会った「ことば」だった。
 高校生活が楽しくて、コンテストで作文を書くまで忘れていた。ことばをかけてくれた男性職員は取材に「そんなことゆうたかな」と覚えていなかったが、「目標に向かって水をやり続けてほしい」と話した。
 遠山さんは「お互い忘れていたなんて」と笑い、「それでも、一番つらい時に支えてくれた大事なことばです」という。「大学に進み、ニワトリの遺伝子育種学を学び、滅んだ在来種を復元する研究をしたい」

【中学部門】
 ■もういっかい、ちっちゃくならへんかな~?(母)
 夏休み明け、グッと背が伸びた私の頭を押さえて「だってさみしいやん」と笑う母。私も、もういっかいちっちゃくなりたいな。

 ■ごらんになって(幼稚園の園長先生)
 空にかかった虹を、「見て」ではなく「ごらんになって」と指した園長先生。美しい言葉が、虹をよりいっそう美しく感じさせたのだと思う。

 ■大きく日々、輝け、そして器の大きい人となれ。(父)
 ソフトボールの全国大会に向かう朝、机に置かれた父からの手紙。僕の名前の由来だ。手紙とメダルは今も大切にしまっている。

 ■低い目標は、自分の限界を決めてしまい、それ以上上がれない。高い目標を持って目指そうと努力することによって、はじめて人は成長する。(父)
 考査前、私の目標点数を見て。心の内を見透かされた気がした。

 ■美しい服は、裏地も美しい。(祖母)
 決勝に進めなかったピアノコンクールで思い出した、洋裁師の祖母の言葉。心動かす演奏の裏にあるのは、自分をごまかさない努力。私も美しい裏地を編もう。

 ■一緒に宇宙に行こう(油井亀美也宇宙飛行士)
 講演会の質疑で憧れの油井さんが言ってくれた。これを支えに夢に向かい努力する。たった一言で誰かを応援できる宇宙飛行士になりたい。油井さんと宇宙に行く。

 【高校部門】
 ■祈っているからね(母)
 寮にいる僕に電話で母が言う。大げさだと思っていたけれど、今は耳になじんで温かい。誰かを思い思われることで、僕たちは人生を少し多く生きているのかも。

 ■今日もよく食べました。(私の母)
 「お母さん、今日も全部食べられたよ」。一時期学校に行かなかった私。母のお弁当が食べたくて登校するうちにつらくなくなった。私もいつか子供に言おう。

 ■みすずが施設におるってことは、親がみすずに生きてほしいって思ったけんやけんね。(施設の先生)
 ふつうの家庭に憧れ、なぜ自分は施設にいるのかと悩んでいた心が軽くなり、少し親を好きになれた。この言葉は私のお守り。

 ■深呼吸一つで、緊張を興奮に変えてゆけ(小学生の頃、習っていた少林寺拳法の先生)
 昇級試験本番、目いっぱい息を吸って吐いた。合格証書が届いた。この言葉はずっと僕の口癖。

 ■プラスはマイナスから書き始める(友達)
 いつか実を結ぶという意味と、一本書き加える努力が大切という意味。声をかけてくれた友達のように、同じ言葉でも良い解釈を人に伝えられるようになりたい。

 ■「これでいい」じゃなくて「これがいい」にしなさい(母)
 自分の選択の結果は誰にも責任転嫁できないけれど、「これが」を選び続けていこう。本当に大切なものが見えてくるはずだから。」(
2018/01/06付「朝日新聞」p26ここより)

言うまでもなく、人から受けた言葉によって、人生が変わることは良くある。特に小さい時に教師から褒められたことによって、自信を付け、努力し、その道の大家となった例は良く聞く。
そんな感受性の強い中高の時期に、心に留められた言葉がこれらだ。だから奥が深い・・・

将棋の羽生善治さんが、囲碁の井山裕太さんと共に国民栄誉賞を受賞するという。
羽生さんの「八木下さんと出会わなかったら、将棋をつづけていなかったかもしれない」という言葉は有名だ。八木下さんとは、言うまでもなく八王子将棋クラブの席主(ここ)。

子ども時代の羽生さんに動機付けしたのが、八木下さんだったのだろう。
上の受賞作品を見ると、両親などの家族の言葉が多い。やはり身近な人の言葉が人生の指針になる。
ひるがえって、自分も古希を迎え、そろそろ人生もオシマイ。そんな人生で、誰かに何かの影響を与えただろうか?
悪い影響を与えた可能性は、幾らでも思い出すが、良い影響となると、トンと思い付かない。
いったん発した言葉の持つ重さを、今更ながらに考えさせられた記事であった。

180106okane <付録>「ボケて(bokete)」より


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