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2016年12月15日 (木)

名座談会「天皇陛下大ひに笑ふ」~サトウハチロー

先日、NHK第二の「カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス「サトウハチロー」(2)」(2016/11/28放送ここ)を聞いた。
その中で、面白い話があったので、記しておく。

<NHKラジオアーカイブス「サトウハチロー」~「天皇陛下大ひに笑ふ」>

Netでググっていたら、この話の一部分が活字になっていたので、少し引用してみる。

「ところで辰野隆だが、前回、その会話内容をちょっとだけ紹介したように、コード、スレスレのお色気噺の名人。ま、仏文学界の三遊亭艶笑師匠、といったご仁。この粋人(仏文)学者は、この前年九月には、フランス革命について天皇にご披講している。
 辰野の脇を固めるのは、名うての不良、「くらがり二十年」の徳川夢聲とエンコ(浅草公園)のサトウ・ハチロー。
 不穏なメンバーです。この3人が昭和24年(敗戦から4年)の春、皇居に呼ばれて天皇の前で座談会をご披露するというわけ。座談の人選は辰野隆にゆだねられたはず。
 で、事のてんまつだが、この座談会の話を小耳にはさんだ文藝春秋の池島信平が、「それいただき!」ということで、すぐさま当日と同じメンバーで鼎談が催される。(掲載は同年6月号)。このとき、池島信平とともに「週刊朝日」の扇谷正造も同席していたのだが、扇谷は「今さら天皇陛下でもあるまい」と反応しなかった。文藝春秋はこの座談会以降、部数を大幅に伸ばしたという。この勝負では池島信平さんの勝ち。
 手元に「復録版昭和大雑誌」(全3冊)がある。そのうちの「戦後篇」に、この座談が収録されている。本当は全文紹介したいところですが、そうもいかず一部だけ引用します。

徳川 それでね、まず辰野先生の挨拶から始まつたわけですナ。
辰野 こつちは御案内役ですからね。両大人を御紹介しなければならないんだ。どうも仕様がない。「今日は図らずも昔の不良少年が、一人ならず三人まで罷り出でまして洵に畏れ多いことでございます」と申上げたら、陛下が「あツ、さう。アツハアハア……」とお笑ひになつた。
(笑声)
徳川 あの開幕がよかつたですよ。
(中略)
──そこでですナ、話の順序はね、今の辰野先生の御紹介から始まつたんですよ。それでサトウさんが中学を八校も変つたの説明になつたんです。すなわちユニホームの話ですナ。ちよつ と復習してください。
サトウ あたしがね、或る年の春の野球大会へ立教中学のユニホームを着て出たんです。その年の春の終りの大会の時は高輪中学のユニホームを着て出たわけです。その次に夏の大会のときは藤沢中学のユニホームを着て出たんです。さうしたらアムパイヤをやつてた佐々という慶応の人が「お前、さうユニホームを変へて来るなよ」(笑声)
徳川 これは陛下がお笑ひになつたです。しばらくは陛下のお笑ひが停らなかつた。ほかの話に入つちやつたのに、まだしばらく笑つておられたんですナ。なるほど、面白いですねぇ。この鼎談。こんな話も出る。
辰野 (中略)──初めはサトウさん、謹直でしたよ。ところが、何となく春風駘蕩たる気もちになつてね、サトウさんは気がつかないけどね、「ねえ陛下……」と言つたナ。(笑声)二度くらゐ言ひましたよ。
サトウ それは知らなかつたね。
辰野 「ねえ」をつけないと、あとの言葉が円滑に出て来ないやうな気分でしたね、実際。いきなり陛下、と申上げるのが却て呼びすてにするやうで、失礼ではないか、といふ心持ちだつたのでせうね、自然に云はうとすると、つい、ねえが付くんでせうね。
徳川 僕は二度ぐらゐ、あツ、これは言葉遣ひがいかん、と思つたことがありますよ。
辰野 いや、しよつちゆうですよ。(笑声)
記者 陛下は放送の時なんか、非常に丁寧な言葉をお使ひになつてますね。その時はいかがでした。
サトウ 別にそんなことはなかつたです。
徳川 チヤンと陛下にふさはしい言葉の使ひ方をしてをられたナ。うん。例へば「あの……映画のほうは忙がしいの」なんて訊かれたりしてね。
ははん、昭和天皇は前から「~のほうは」と言われていたんですね。「あの…ケガのほうはもうよくなりましたか」とか。
そして最後は「お土産」の話。
辰野 おしるこが出て、呑み助三人にはいい気味だと思つてたら、お土産が桜正宗と御紋章入りの煙草、その時に出たお菓子と。
サトウ 僕はあのお酒を戴いたために、家の子郎党を集めましてね、あれを一盃づつといふことになつたんですよ。ところが、集つたのが十八人でせう。たうとう八升追加しちやいましたよ。
徳川 それは大変だ。高いものについちやつたナ。然し嬉しい失費さね。わたしはね、岩田豊雄氏に持つていつちやつた。
サトウ あの人は酒にうるさいからね、喜んだでせう。
徳川 喜びましたよ。二合五勺ほど飲んだらいい御機嫌になつちやつた。わたしは目下飲みませんからね。帰らうとしたら、いいよ、もう少しゐろよ……。仕方がないから話し相手になつてましたがね、二合五勺で御機嫌になつて、もう帰れ、いいよ……。ずいぶん勝手な奴だ。(笑声)
辰野 わたしは家へ帰つてみたら、戴いたお菓子が粉ごなでしたよ。あれから何処かへ寄つて飲んだんですナ。夜晩く帰つて、みんなを起こしてね、お酒はお前達は飲まないから、俺と親友とで飲む。煙草は俺が戴く。長男は少しのむから少しやらう。お菓子は女達にやる。出したら粉ごなでね。女類どもはそいつを指で摘んで食べちや喜んでたよ。・・・」(「
粋人粋筆探訪」ここより)

サトウハチローの父親は、作家の佐藤紅緑。wikiには「ハチローは小学生時代から不良少年で、中学を落第、退校、勘当、留置場入りを重ねる。」とある。
wikiによると、佐藤紅緑の息子は、皆、出来が悪かったようで、「長男ハチローをはじめとする4人の息子たちは、すべて道楽者の不良少年・不良青年となった。ハチローは詩人として成功したが、他の3人は、乱脈な生活を続けた生活無能力者で、破滅的な死に方をした。紅緑は生涯、彼らの借金の尻拭いをし続けた。」
そんな中、自分が崇拝する天皇に、何と自分の息子が「一緒にメシを食った」とは・・・

死の床で聞く、息子の晴れ姿?
紅緑は、自分の人生を振り返って、やっと納得したのではないか・・・。
それをあっけらかんに、言い放ってさっさと帰って行くハチロー。何とも清々しい。

父と息子・・・。自分と親父との間にも、長い間の葛藤(一切口をきかない)があった。でも、とある事件をキッカケに、普通に話すようになった。
そしてある時、サラリーマンとしての自分の昇進を、ことのほか喜んでくれた(ここ)。
その時に、お祝いに作って貰ったオーダーのワイシャツは、未だに捨てずにいる。

サトウハチローのこんな話を聞きながら、今更ながら、20年前に亡くなった親父との葛藤の日々を思い出してしまった。

161215sinniri <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

エムズの片割れ様
とても愉快で心があったかくなるお話ですね。
人間「ヒロヒト」も偲ばれる良いお話です。
ハチロウはそんなに転校~放校を繰り返したのですね。義妹の佐藤愛子著「血脈」で佐藤家の無頼の血筋を詳しく語っていますね。
何故に  あんな美しい  心に染みる  切ない詩を書くハチロウがと  ついこの頃まで疑問でした。古希を迎えた今は彼の心情がよくわかります。ああでもしなければ気が狂っていたのではと~忖度しております。

「長崎の鐘」などモデルの心情に寄り添った
哀切で美しい詩ですね。これもまた彼の本性と思われます。
すみません  ハチロウだけ取り上げました。

【エムズの片割れより】
不良少年だっただけに、反動?が大きいようです。

投稿: りんご | 2016年12月16日 (金) 19:04

私が社会を考えるようになった中学から高校の頃、ラジオも面白かったし洒脱な知識人と言われるような人が沢山いました。というより放送界が自由に物が言えたのかもしれません。
芸能関係者も三木鶏郎みたいな社会批判を堂々と表現する人もいましたし、漫才も映画も芸達者な人が多くて面白かったですね。今は自由であっても何か萎縮しているような気がします。
ワッと噴き出るような面白さが無くなりました。広告料にオドオドしているのでしょうか。
お金に支配されて人間が小さくなってしまったように思います。芸能人の程度の低さが情けなくなります。ハチローみたいな人はもう出ないでしょうね。残念です。

【エムズの片割れより】
ふと、昔のトップ・ライトを思い出しました。
マスコミの中でも、テレビの影響は大きいですが、「サンデーモーニング」の視聴率が高いですね。

投稿: 白萩 | 2016年12月17日 (土) 00:37

私もサンデーモーニングはよく観ています。ここに出演されている若い人たちが実際に紛争地や貧困地帯に行かれて活動している人たちなので、知識だけで話す人たちとは違う視点で話されるのが頼もしく嬉しいですね。私たちの若いころとは違う若者が育っていると思います。こういう人たちが国を動かしてくれるようになると日本も世襲議員の情けない総理の話をご無理ごもっともと何でも「ハイ」と従うことは無くなるでしょうね。今の自民党は党主独裁のよう思えます。このおぼっちゃま総理を陰で動かしている人は誰でしょうか。マスコミの力も落ちてしまっています。早く若い力がのし上がってこないかと待っています。

【エムズの片割れより】
話は違いますが、先日のオスプレイの墜落事故など、相変わらず防衛相の記者会見の“お姿”に違和感を覚えます。
長髪の麗しいお姿と、安保・防衛・戦争・PKO・・・の話題との乖離・・・。合わない!
南スーダンで自衛隊員に戦死者が出た時など、ちゃんと対応出来るのかな?と思ってしまいます。それとも泣いて逃げるのかな・・・

投稿: 白萩 | 2016年12月20日 (火) 10:15

イヤ!本来なら国民がもっと怒っていいはずなのに、国家神道の一団に物が言えないこの現実、恐ろしい事です。

投稿: 白萩 | 2016年12月20日 (火) 22:27

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