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2016年12月 1日 (木)

日弁連の「死刑廃止宣言」に思う

先に日弁連が死刑廃止宣言を出したが、論客の軍団で、色々な意見が噴出するであろう日弁連が、どうしてこのような統一見解を出せたのか、不思議だった。それで経緯を、新聞記事から追ってみた。

日弁連の死刑廃止宣言案に反対 被害者支援弁護士ら声明
 日本弁護士連合会が7日に福井市で開く人権擁護大会で死刑制度廃止の宣言案を提出することについて、犯罪被害者の支援に取り組む弁護士らでつくる「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」が3日、「犯罪被害者の人権や尊厳に配慮がない」などとして採択に反対する声明を発表した。
 声明では、弁護士の中でも死刑に対しては様々な考えがある中で、「強制加入団体である日弁連が一方の立場の宣言を採択することは、日弁連の目的から逸脱し、個々の弁護士の思想・良心の自由を侵害する」と指摘。「凶悪犯罪の被害者遺族の多くは加害者に死をもって償って欲しいと考えており、宣言は被害者の心からの叫びを封じるものだ」と批判している。
 また、人権擁護大会では委任状による議決権の代理行使はできず、現地に出向いた人しか意思表示ができない。出席するのは約3万7千人の弁護士のうち数パーセントとみられ、声明では、こうした場での宣言の採択にも問題があるとしている。フォーラムの事務局長を務める高橋正人弁護士は「犯罪被害者から弁護士への信頼がなくなり、支援活動がしにくくなる恐れもある」と話した。(千葉雄高)」(
2016年10月3日付「朝日新聞」ここより)

日弁連、「死刑廃止」を宣言 賛成は7割弱、反対意見も
 日本弁護士連合会は7日、全国の弁護士が福井市に集まって開催した人権擁護大会で、「2020年までに死刑制度の廃止を目指し、終身刑の導入を検討する」とする宣言を採択した。日弁連が「廃止」を掲げるのは初めて。
 宣言は「被害者遺族の厳しい感情は自然で、被害者支援は社会全体の責務」としたうえで、刑罰は犯罪への報いにとどまらず再犯防止につながるものでなければならないと指摘。さらに事件に至る背景にも目を向け、罪を犯した人の社会復帰と人間性の回復を後押しする制度の導入が社会の安全につながるとした。
 宣言採択の背景には1980年代に四つの死刑事件で再審無罪が確定し、2014年3月には袴田事件の再審開始決定が出るなど、相次ぐ冤罪(えんざい)事件がある。このため宣言は死刑と決別すべきだとしながら、終身刑導入の検討を求めている。目標期限は、制度廃止を勧告した国連の会議が日本で開かれる4年後にした。
 この日は採択に先立ち、24人が賛成・反対の討論を行い、激論を交わした。
 袴田事件弁護団長の西嶋勝彦弁護士(東京)は「冤罪が疑われる死刑事件が多くある。誤判がある以上は制度を廃止すべきだ」と訴えた。一方、被害者支援に取り組む高橋正人弁護士(第二東京)は反対討論で「被害者遺族が犯人を殺してもいいのか。死刑の廃止はむしろ秩序を乱す」と批判した。
 黒原智宏弁護士(宮崎県)は、自身が担った死刑事件で遺族が加害者と面会を続け、「反省を見極めたい」と最高裁に判決見直しを求めた事例を紹介。被害感情も一様でないと指摘した。
 日弁連の会員は約3万8千人。方針の決定は理事会に委ねられることが多いが、この日は特に重要なテーマのため来場者786人で採決した。その結果、賛成は7割弱の546人、反対96人、棄権144人だった。
 閉会後、日弁連の木村保夫副会長は記者会見し、「犯罪被害者支援に取り組む弁護士から多くの意見を頂いた。しっかり被害者の声に耳を傾け、国民の理解を得る活動を強化し、政府にも法改正を提言していきたい」と話した。(阿部峻介)」(
2016年10月8日付「朝日新聞」ここより)

日弁連の死刑廃止宣言から1カ月 執行に「ショック」
 法務省が11日、熊本県内の強盗殺人事件の死刑囚の刑を執行した。日本弁護士連合会が10月の人権擁護大会で、「2020年までに死刑制度の廃止を目指す」とする宣言を採択してから約1カ月。関わった弁護士らは驚きの声を上げた。
1人の死刑執行 熊本強盗殺人の死刑囚 法務省
 記者会見した金田勝年法相は、裁判員裁判を経て確定した事件の死刑を執行したことについて「判決は、慎重な審理を尽くして言い渡すものと承知している。判断を尊重しつつ、慎重かつ厳正に対処すべきという観点から命令を出した」と説明。日弁連の宣言については「死刑の存廃に様々な意見があり、そのような意見の一つと考えている。国民の多数が死刑をやむをえないと考えており、廃止は適当ではない」と語った。
 「ショックだ。日弁連が何を言おうと執行は続けるという法務省の固い決意を感じる」。日弁連死刑廃止検討委員会のメンバーの海渡雄一弁護士は憤りを見せた。「死刑廃止国では、廃止の前に執行を停止した期間があり、まずそれを実現するのが目標。壁は高いが、宣言を機に死刑についての議論が活発化しているのは確かで、あきらめないでやるべきことをやっていきたい」と話した。
 宣言は、死刑判決が確定していた袴田事件で14年3月に再審開始決定が出たことなどが背景にある。日本に制度廃止を勧告した国連の会議が日本で開かれる20年までの死刑廃止を目指すとしている。関係者によると、日弁連は会長が法相に直接宣言を手渡したいと申し入れているが、なかなか日程が決まらない状態だったという。
 一方、犯罪被害者の支援に取り組む弁護士を中心に、宣言には反対の声も根強い。反対を表明してきた弁護士団体「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」の事務局長を務める高橋正人弁護士は「死刑廃止は立法の話で、日弁連が目指すと言っても廃止されたわけではない。死刑は法律で定められ、最高裁でも合憲とされている。淡々と執行するのは当然のことだ。日弁連は死刑執行後に毎回反対声明を出すが、法を守るなというのはおかしな話だ」と話した。(千葉雄高)」(
2016年11月11日付「朝日新聞」ここより)

日弁連の死刑廃止は、 冤罪と世界の流れが背景らしい。
それにしても、議論百出であろう死刑廃止宣言がなぜ採択されたかというと、「人権擁護大会では委任状による議決権の代理行使はできず、現地に出向いた人しか意思表示ができない。」「日弁連の会員は約3万8千人。方針の決定は理事会に委ねられることが多いが、この日は特に重要なテーマのため来場者786人で採決した。その結果、賛成は7割弱の546人、反対96人、棄権144人だった。」
つまり、日弁連の会員のたった2%の会員の出席のもと、1.4%の会員の賛成で、“日弁連として採択”されたそうだ。
このことは、まさに自分も「強制加入団体である日弁連が一方の立場の宣言を採択することは、日弁連の目的から逸脱し、個々の弁護士の思想・良心の自由を侵害する」であると思う。
天下の日弁連で、なぜこんな一部意見の横暴がまかり通るのか、不思議でならないが、それはそれとして、冤罪については、考えてしまう。

NHKテレビで、「ブレイブ 勇敢なる者「えん罪弁護士」」(2016/11/28 放送 ここ)を見た。
NHKのHPにはこう解説がある。
「「無罪」獲得「14件」。その実績に他の弁護士は「異常な数字」「ありえない」と舌を巻く。“えん罪弁護士”の異名を持つ今村核(いまむら・かく)は、有罪率99.9%と言われる日本の刑事裁判で20年以上も闘ってきた。過去に取り組んだ放火事件や痴漢事件では、通常裁判の何倍もの労力をかけて科学的事実を立証し、矛盾や盲点、新事実の発見からえん罪被害者を救った。自身の苦悩を乗り越え、苦難の道を歩み続ける男に迫る。」

弁護士が無罪を勝ち取るのは、一生に一度あるか無いか、だという。その世界で、今村弁護士は、14件も無罪を勝ち取ったという。その確率が99.9%で1000件に1件とすると、判決14000件分の無罪判決。
この番組でも出て来たが、冤罪で多いのはやはり痴漢事件。無罪を主張すると、仕事や家庭を奪われ、反省がないと数年間の実刑も覚悟。よって、いくら冤罪でも罪を認めて罰金を払う例が多いという。
つまり、日本には冤罪がたくさんあるということだ。もちろん、その背景には、求刑の7~8割を機械的に判決する、裁判官の官僚的な惰性(事なかれ)があることは否めない。

ついでに、死刑廃止について、こんな記事も見付かった。

日弁連「死刑廃止」宣言の意味は
 ◆ 山形大学の高倉新喜教授(48)
 10月初旬に福井市で開かれた人権擁護大会で、日本弁護士連合会が「2020年までに死刑制度廃止を目指すべきである」との宣言を採択した。死刑制度の争点は何か、宣言にどんな意味があるのか、山形大学の高倉新喜教授(48)=刑事訴訟法=に聞いた。

 ◆ 相次ぐ冤罪と世界の流れ意識
 ――宣言に対する率直な感想は。
 日本最大の人権擁護団体が正面から宣言したインパクトは大きいと思う。日弁連は全国の弁護士が登録しなければならず、会員数は約3万8千人。大会にはそのうち1千人ほどしか出席していないとしても、大きい。反対する弁護士もいる中、それを押し切って採択に至ったんでしょう。
 ――押し切った理由は何だと思いますか?
 冤罪(えん・ざい)と世界の流れを考えたのでしょう。戦後だけで四つの事件で確定死刑囚が再審無罪になった。最近では袴田事件で再審開始決定が出ました。世界ではOECD(経済協力開発機構)加盟国で死刑があるのは日本と米国と韓国だけ。さらに韓国は18年以上、死刑を執行していません。
 ◆ 「将来廃止」4割
 ――2014年の内閣府の世論調査では、8割以上が「死刑もやむを得ない」と答えました。
 被害者感情が大きいと思います。身内が殺されて死刑を求めるのは当然でしょう。ただ、同じ調査で「状況が変われば、将来的には廃止してもよい」と40・5%が答えた。死刑がどのように執行されるのか、死刑囚がどんな生活をしているかなどの情報が広く伝わり、多くの人が関心を持つことが大事だと思います。
 ――死刑は最高裁判決でも合憲とされています。
 1948(昭和23)年、最高裁判所大法廷で死刑制度を認めることが当然の前提とされ、大勢が固まったと言えます。その際、火あぶりやはりつけなどは残虐な刑罰に該当するとされました。
 私は、執行方法がどうであれ人の生命を奪うこと自体が「残虐な刑罰」に当たると考えています。「法律の定める手続によらなければ(中略)刑罰を科せられない」とする憲法31条は死刑制度を是認しているように読めますが、死刑を廃止することを禁止しているわけではありません。
 ――死刑を廃止した英国では、殺人事件が増えたというデータがあります。
 英国では69年に謀殺罪への死刑を完全に廃止しました。その10年後、人口百万人あたりの殺人事件の発生率は年4%ほど増えましたが、米国では死刑がある地域で殺人事件の発生率が、廃止した地域よりも高いというデータもある。死刑に犯罪抑止力があるかどうかを実証することは難しいと思います。
 英国では半数以上の世論が死刑を支持しています。にもかかわらず廃止されたのは、冤罪への恐れゆえではないでしょうか。
 ――日本でも取り調べの可視化など、冤罪を防ぐ取り組みが進んでいます。
 今年5月に刑事訴訟法が改正され、2019年6月までに一部の事件で取り調べの録音・録画が始まる。少なくとも自白の強要はできなくなりますが裁判所も完全ではないでしょう。
 ◆ 応報でなく更正
 ――私たちの生活に、どう関わるのでしょうか。
 山形地裁ではこれまで、死刑判決が出たことはありません。でも、やっていない凶悪事件の容疑者として逮捕される可能性はある。冤罪は自分に関係がないということはありません。
 刑罰は応報だけでなく更生の意味もある。応報だけならば、命を奪ったなら命で償えと死刑にするしかありません。刑罰には更生の目的も必要だと思います。(聞き手・多鹿ちなみ)
 ◎たかくら・しんき 1968(昭和43)年、札幌市生まれ。北海道大学法学部、同大学院法学研究科を経て99年に博士(法学)取得。2001年に講師として山形大学に。14年2月から教授。」(
2016年10月25日付「朝日新聞」ここより)

やはり違和感が残る。冤罪が多いので、取り返しが付かない死刑を廃止!?
それよりも、冤罪そのものを無くす努力が必要なのでは?
まずは、すべての事件の取り調べは、100%録音・録画。たった3%の裁判員裁判の対象事件(重大事件)だけではなく、どんな些細な事件の取り調べも100%!!
今や、ドライブレコーダーの時代。それに大容量HDDやカメラの値段も安くなった。すべての警察の取調室にカメラを設置して、録画しても、たいしたことはない。

日弁連も取り調べの可視化の全件拡大を提言しているらしいが(ここ)、違和感のある死刑廃止よりも、そっちに力を入れて欲しいと思う。

(関連記事)
安田好弘弁護士のドキュメンタリー「死刑弁護人」を見て 


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コメント

多くの目撃者がおり、物的証拠などからも疑いの余地のない犯罪もたくさんあります。冤罪を死刑廃止の理由にするのではなく、冤罪をどう減らすか、死刑廃止自体をどう考えるかの問題だと思います。

【エムズの片割れより】
そうですね・・・

投稿: かえるのうた | 2016年12月 2日 (金) 15:01

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