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2016年11月 5日 (土)

サービス残業横行の“隠れブラック企業”~対する理想の経営理念「伊那食品」

先日、何となくテレビを点けていたら、NHKクローズアップ現代「蔓延する“隠れブラック企業”」(2016/11/02放送)という番組を放送していた(動画はここ)。
先の電通の過労死問題に端を発し、厚労省の特別チームである「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」の動きを伝えていた。この組織は2015年4月に、東京と大阪に置かれ、ブラック企業を摘発するために作られた専門チームで、強力な調査権限を持っているという。
そしてこれまで大手企業5社を摘発したという。表向きはホワイト企業に見える会社だが、実際は長時間残業が当たり前の““隠れブラック企業”。

これまでに強制捜査に入った企業は、下記の5社。
エービーシー・マート(ABC-MART)
ドン・キホーテ
フジオフードシステム(まいどおおきに食堂、串家物語、つるまる、かっぽうぎ)
サトレストランシステムズ(和食さと、・・・・)
コノミヤ(大阪、名古屋のスーパー)

そして今回、臨検監督に入った電通。

大和ハウスでは、2004年に電通と同じ強制消灯をしたが、想定外のことが発生。暗闇の中で隠れて残業をしたり、翌朝早く出勤して勤務記録をつけずに働く社員が続出。結果として形を変えたサービス残業が横行したとして、2011年に労基の指導まで入ったという。
それからの取り組みは「がんばるタイム」(一定の時間、集中して仕事をするための時間で、話し掛けることも電話の取り次ぎもしない)などの効率化、などなど・・・。

続いて、今朝の朝日新聞にはこんな記事があった。
ドン・キホーテ、違法な長時間残業で罰金命令 東京簡裁
 従業員に違法な長時間残業をさせたとして、ディスカウント店を運営する「ドン・キホーテ」(東京都目黒区)が労働基準法違反(長時間労働)の罪で東京簡裁から罰金50万円の略式命令を受けた。10月26日付。同社は今後、納付するという。同社をめぐっては、都内の「ドン・キホーテ町屋店」など5店舗で、従業員数人に労使で定めた残業の限度(3カ月120時間)を超える最長415時間の残業をさせたとして、東京労働局が今年1月に同社と執行役員ら8人を書類送検した。親会社のドンキホーテホールディングスは「全社を挙げて関係法令の順守を徹底する」とコメントした。」(
2016/11/05付「朝日新聞」から)

残業時間については、サラリーマンの現役時代に散々かかわったが、こんな記事を読むと、話題になっているのは、まさに氷山の一角だと思う。
あらゆる会社で、サービス残業の問題はある。その問題にすいて、社員が問題視して、労基に駆け込むと事件化することもある。しかしそれも氷山の一角。賃金支払い問題を多く抱えている労基は、特に大会社の場合は、自浄作用を期待して、電話で担当者に注意して終わるケースも多いと前に聞いた。

そもそも会社の文化、いわゆる社風は絶対に変わらない。というのがリタイア・サラリーマンとしての自分の見解。
監督官庁から指摘を受けても、その時は、色々な対策をして、今後は起こさない、としても、時間と共にその緊張感は薄れ、物と姿に戻ってしまう。それは「人間の心」「長年培われた文化」はそうそう変われないという事。

番組にあった大和ハウスの「がんばるタイム」も、自分も現役時代に同じような事をやったことがあるが、ほとんどと言うより、全く根付かなかった。
そもそも根源は仕事の量。番組の「和食さと」の例も、お客が目の前にいて、回さなければ、という使命感からすべては発生する。仕事と対応する人員とのバランスがすべて。しかも、ここでの悲劇は、会社側(上司)が本人の知らないところで、残業時間数を改ざんしていた点。これは救われない・・・・

就活に向かう人にもしアドバイスが出来るとすれば、「社風は変わらない」ということ。東芝のように「上司に逆らえない」風土なども、140年の歴史から生まれている。それが簡単に変わる訳がない。そしてこれら事件を起こした会社も簡単に変わる訳がない。それを前提に会社選びをするべき。

改めて、先日行った(ここ)「かんてんぱぱ」の伊那食品の経営理念をじっくりと読んでしまった(ここ)。

そこには、「当社は成長の数値目標は掲げていません。 売り上げや利益の数値は、自然体の年輪経営の結果であり、あえて目標を掲げる必要はないと思うからです。 売上高を伸ばす事を目指すのではなく、社員一人ひとりが能力を充分に発揮し、色々な面で成長できる事を目指しています。」という方針が掲げられていた。
寒天の国内シェア8割という実力から来るこの安定経営。
人を物のように使い捨てにする、先のブラック企業の対局にあるこの社風。これも簡単には変わらない。
しかし伊那食品工業の経営理念を読んでいると、まさに心が洗われる。
あのキレイな敷地が頭に浮かぶ・・・・

最近の「日本はどうなってしまったのか?」と思うような事件を見聞きする一方、まだまだ救いがある会社はある、と思い出す伊那食品ではある。

蛇足だが、朝日新聞に載っていた、電通事件の特集を下記しておく。
===========
「(けいざい+ 深話)電通、過労自殺再び:上 終業と退館、記録にずれ
 「もう4時だ 体が震えるよ…… しぬ もう無理そう。つかれた」
 昨年10月21日早朝。広告大手、電通の新入社員だった高橋まつりさんは、SNSにこんなメッセージを残した。東京・汐留の本社ビルの入退館記録などによると、この日退社したのは午前3時38分。前日の午前8時56分に出勤してから、19時間近くが過ぎていた。
 その4日後。日曜日だった25日は午後7時27分に出社。28日午前0時42分に退社するまで約53時間、ほぼ連続して社内にいた記録が残る。11月5日にはこう書き込んだ。「タクシー乗ったなり へろへろ」
 この日の退社時刻は午前2時7分。前日から続けて17時間近く社内にいた。深夜勤務や休日出勤が続いたこのころ、高橋さんはうつ病を発症したとみられる。
 12月25日朝、都内の電通の女子寮で身を投げ、自ら命を絶った。24歳だった。
 今年9月30日、三田労働基準監督署(東京)は高橋さんの自殺を労災と認めた。労基署が認定した1カ月(10月9日~11月7日)の時間外労働は105時間。試用期間が終わり、10月に本採用になってから倍以上に増えていた。
 労働基準法は、1日8時間、週40時間を労働時間の上限と定める。これを超えて時間外労働をさせるには、労基法36条に基づいて労使が協定(36〈サブロク〉協定)を結び、労基署に届ける必要がある。電通が届けていた上限は原則として月50時間。ただし、特別な場合には月100時間まで認められる。
 電通では、社員が始業・終業の時刻を自己申告し、上司が承認することで労働時間を管理している。この記録では、高橋さんの時間外労働は月50時間の範囲に収まっていた。労基署の認定とは大きな開きがある。
 電通は一方で、「フラッパーゲート」と呼ぶ出入り口を通ると、入退館時刻を自動的に記録するようにしている。1991年に入社2年目の社員が自殺し、再発防止策として導入したしくみだ。労基署はこの記録をもとに、高橋さんが36協定の上限を超える長時間残業をしていたと認定した。
 電通広報部によると、「入館と始業、終業と退館の間に1時間以上の開きがあった場合、理由を申告し、上司が確認する」という。記録のずれが生じるのは、「ラッシュを避けるために早めに出社したり、終業後にサークル活動や自己啓発活動をしてから退館したりするなど、私的な理由で残っているケースがある」からだと説明する。
 だが、30代の現役社員の説明は異なる。夜遅くまで残業したとき、私的な理由で会社に残ったことにして残業時間の申告を減らしているという。終業と退館に1時間以上の差があれば、「『私的情報収集』『(忘れ物などの)一時的入退館』『自己啓発』などの理由をつけて申告する」という。「勤務時間中の一部を働いていなかったことにして『中抜き』することもある」と明かす。例えば、午前1時に仕事が終わって退館した場合、午後8時から午前0時の間は働いていないことにして申告する。
 部長から「残業が100時間を超えないように処理して」と指示を受けているためだ。「ひどい月は140時間は残業しているのが実態だが、ウソをついているので、システム上は残業時間が100時間を超えていない」と打ち明ける。
 「部長『君の残業時間の20時間は会社にとって無駄』」。上司に言われたとして、高橋さんがSNSに残した言葉だ。高橋さんにも、「上司が実際より短い残業時間を記録するよう指示していたのではないか」。遺族側はそうみている。(大内奏、編集委員・沢路毅彦)
     ◇
 25年前に若手社員が過労自殺し、責任を認めた電通。再発防止を誓ったが、再び悲劇が起きた。教訓はなぜ生かされなかったのか。2回に分けて報告する。」(
2016/10/27付「朝日新聞」より)

「(けいざい+ 深話)電通、過労自殺再び:下 「鬼十則」の風土、今も
 バブル経済の終わりが近い1991年8月。電通に入社して2年目のラジオ局(当時)の男性社員が自宅で自殺した。24歳だった。
 長時間労働でうつ病になったのが自殺の原因だとして、遺族は電通の責任を問う訴訟を東京地裁に起こした。遺族側は、深夜の退館記録などをもとに、男性が長時間労働を強いられていたと主張。会社側は男性の自己申告による記録をもとに、「時間外労働が突出して多いわけではない」「在館時間がすべて業務にあてられていたわけではない」などと反論した。
 地裁判決は、男性が亡くなった8月に10回、前の月も12回、東京の本社を午前2時以降に退社していたと認定。こうした事実をもとに、「常軌を逸した長時間労働をしていた」として遺族の訴えを認めた。
 裁判は最高裁まで争われ、2000年3月、電通に安全配慮義務違反があったと認定された。「会社は労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務がある」。初めてこう言い切った最高裁判決は「過労死問題のバイブル」(岩城穣弁護士)になった。
 電通は責任を認めて遺族と和解。再発防止に向け、「長年にわたって適正な勤務管理、長時間勤務抑制、社員の健康維持のための取り組みを実施してきた」(広報部)と説明する。
 しかし、14年6月に関西支社(大阪市)が、昨年8月には東京・汐留の本社が、違法な長時間労働をさせたとして労働基準監督署から是正勧告を受けていた。その4カ月後、男性と同じ24歳で新入社員の高橋まつりさんが過労自殺した。
 さらに、本社勤務だった男性社員が3年前に亡くなり、過労死を認められたと関係者は明かす。「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表は「過労死を繰り返す企業には社会的な監視が必要だ」と憤る。
 違法な長時間労働が常態化していた疑いがあるとみて、東京労働局の「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」などが今月14日、本支社に抜き打ち調査に入り、刑事事件としての立件も視野に調べを進めている。
 「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」。電通の4代目社長で、「広告の鬼」と呼ばれた故吉田秀雄氏が1951年に書いたという10カ条の遺訓「鬼十則」の一節だ。長時間労働を助長しかねない電通の企業風土を象徴する社員の心得として知られ、高橋さんの遺族側が問題視している。
 「鬼十則」は今も、電通の社員手帳に残る。中堅社員の一人は「うちの哲学。入社研修で学んだし、一部はそらんじられる」と話す。「良くも悪くも体育会系でタテ社会」の社風で、「花形の局では『1年の年次の違いは海よりも深い』と言われている」という。
 「命を削って給料をもらっているところはある。今回の過労自殺はひとごととは思えない」とも話した。
 電通は17日、石井直社長名の社員向け文書で「当社が是認してきた『働き方』は、当局をはじめとするステークホルダー(利害関係者)から受容されえない」と言及。会社は、午後10時の一斉消灯と退館、午後10時~早朝5時の深夜業務の禁止を社員に通達した。スタンドライトの点灯や社外での深夜業務も禁じた。
 25日午後10時過ぎ。本社の明かりは一斉に消えていった。しかし、社員の反応は冷ややかだ。ある中堅社員は「パソコンを自宅に持ち帰って、こっそりとサービス残業することになるだけ。立件を何としても避けようとしているようにしか思えない」と話す。
 電通の労働組合も24日、会社の対策が「場当たり的なものになってしまう可能性がある。社員にしわ寄せがいくことを懸念している」とのメッセージを組合員に出した。(高野真吾、大内奏、編集委員・沢路毅彦)」
(2016/10/28付「朝日新聞」p9より)

161105fight <付録>「ボケて(bokete)」より


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