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2016年9月17日 (土)

「戦場に立つということ」~現実味を帯びる海外派兵

先日の朝日新聞に、こんな記事があった。
「(インタビュー)戦場に立つということ 戦場の心理学の専門家、デーブ・グロスマンさん
人殺し拒む本能 訓練で耐性つけ兵士の心を変える
 戦場に立たされたとき、人の心はどうなってしまうのか。国家の命令とはいえ、人を殺すことに人は耐えられるものか。軍事心理学の専門家で、長く人間の攻撃心について研究してきた元米陸軍士官学校心理学教授、デーブ・グロスマンさんに聞いた。戦争という圧倒的な暴力が、人間にもたらすものとは。

 ――戦場で戦うとき、人はどんな感覚に陥るものですか。
 「自分はどこかおかしくなったのか、と思うようなことが起きるのが戦場です。生きるか死ぬかの局面では、異常なまでのストレスから知覚がゆがむことすらある。耳元の大きな銃撃音が聞こえなくなり、動きがスローモーションに見え、視野がトンネルのように狭まる。記憶がすっぽり抜け落ちる人もいます。実戦の経験がないと、わからないでしょうが」
 ――殺される恐怖が、激しいストレスになるのですね。
 「殺される恐怖より、むしろ殺すことへの抵抗感です。殺せば、その重い体験を引きずって生きていかねばならない。でも殺さなければ、そいつが戦友を殺し、部隊を滅ぼすかもしれない。殺しても殺さなくても大変なことになる。これを私は『兵士のジレンマ』と呼んでいます」
 「この抵抗感をデータで裏付けたのが米陸軍のマーシャル准将でした。第2次大戦中、日本やドイツで接近戦を体験した米兵に『いつ』『何を』撃ったのかと聞いて回った。驚いたことに、わざと当て損なったり、敵のいない方角に撃ったりした兵士が大勢いて、姿の見える敵に発砲していた小銃手は、わずか15~20%でした。いざという瞬間、事実上の良心的兵役拒否者が続出していたのです」
160917senjyou  ――なぜでしょう。
 「同種殺しへの抵抗感からです。それが人間の本能なのです。多くは至近距離で人を殺せるようには生まれついていない。それに文明社会では幼いころから、命を奪うことは恐ろしいことだと教わって育ちますから」
 「発砲率の低さは軍にとって衝撃的で、訓練を見直す転機となりました。まず射撃で狙う標的を、従来の丸型から人型のリアルなものに換えた。それが目の前に飛び出し、弾が当たれば倒れる。成績がいいと休暇が3日もらえたりする。条件付けです。刺激―反応、刺激―反応と何百回も射撃を繰り返すうちに、意識的な思考を伴わずに撃てるようになる。発砲率は朝鮮戦争で50~55%、ベトナム戦争で95%前後に上がりました」
     ■     ■
 ――訓練のやり方次第で、人は変えられるということですか。
 「その通り。戦場の革命です。心身を追い込む訓練でストレス耐性をつけ、心理的課題もあらかじめ解決しておく。現代の訓練をもってすれば、我々は戦場において驚くほどの優越性を得ることができます。敵を100人倒し、かつ我々の犠牲はゼロというような圧倒的な戦いもできるのです」
 「ただし、無差別殺人者を養成しているわけではない。上官の命令に従い、一定のルールのもとで殺人の任務を遂行するのですから。この違いは重要です。実際、イラクやアフガニスタン戦争の帰還兵たちが平時に殺人を犯す比率は、戦争に参加しなかった同世代の若者に比べてはるかに低い」
 ――技術進歩で戦争の形が変わり、殺人への抵抗感が薄れている面もあるのでは?
 「ドローンを飛ばし、遠隔操作で攻撃するテレビゲーム型の戦闘が戦争の性格を変えたのは確かです。人は敵との間に距離があり、機械が介在するとき、殺人への抵抗感が著しく低下しますから」
 「しかし接近戦は、私の感覚ではむしろ増えています。いま最大の敵であるテロリストたちは、正面から火砲で攻撃なんかしてこない。我々の技術を乗り越え、こっそり近づき、即席爆弾を爆破させます。最前線の対テロ戦争は、とても近い戦いなのです」
 ――本能に反する行為だから、心が傷つくのではありませんか。
 「敵を殺した直後には、任務を果たして生き残ったという陶酔感を感じるものです。次に罪悪感や嘔吐(おうと)感がやってくる。最後に、人を殺したことを合理化し、受け入れる段階が訪れる。ここで失敗するとPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しやすい」
 「国家は無垢(むく)で未経験の若者を訓練し、心理的に操作して戦場に送り出してきました。しかし、ベトナム戦争で大失敗をした。徴兵制によって戦場に送り込んだのは、まったく準備のできていない若者たちでした。彼らは帰国後、つばを吐かれ、人殺しとまで呼ばれた。未熟な青年が何の脅威でもない人を殺すよう強いられ、その任務で非難されたら、心に傷を負うのは当たり前です」
 「PTSDにつながる要素は三つ。(1)幼児期に健康に育ったか(2)戦闘体験の衝撃度の度合い(3)帰国後に十分なサポートを受けたか、です。たとえば幼児期の虐待で、すでにトラウマを抱えていた兵士が戦場で罪のない民を虐殺すれば、リスクは高まる。3要素のかけ算になるのです」
 ――防衛のために戦う場合と、他国に出て戦う場合とでは、兵士の心理も違うと思うのですが。
 「その通り。第2次大戦中、カナダは国内には徴兵した兵士を展開し、海外には志願兵を送りました。成熟した志願兵なら、たとえ戦場体験が衝撃的なものであったとしても、帰還後に社会から称賛されたりすれば、さほど心の負担にはならない。もし日本が自衛隊を海外に送るなら、望んだもののみを送るべきだし、望まないものは名誉をもって抜ける選択肢が与えられるべきです」
 「ただ、21世紀はテロリストとの非対称的な戦争の時代です。国と国が戦った20世紀とは違う。もしも彼らが核を入手したら、すぐに使うでしょう。いま国を守るとは、自国に要塞(ようさい)を築き、攻撃を受けて初めて反撃することではない。こちらから敵の拠点をたたき、打ち負かす必要がある。これが世界の現実です」
 ――でも日本は米国のような軍事大国と違って、戦後ずっと専守防衛でやってきた平和国家です。
 「我々もベトナム戦争で学んだことがあります。世論が支持しない戦争には兵士を送らないという原則です。国防長官の名から、ワインバーガー・ドクトリンと呼ばれている。国家が国民に戦えと命じるとき、その戦争について世論が大きく分裂していないこと。もしも兵を送るなら彼らを全力で支援すること。これが最低限の条件だといえるでしょう」
     ■     ■
 ――気になっているのですが、腰につけたふくらんだポーチには何が入っているのですか。
 「短銃です。私はいつも武装しています。いつでも立ち上がる用意のある市民がいる間は、政府は国民が望まないことを強制することはできない。武器を持つ、憲法にも認められたこの権利こそが、専制への最大の防御なのです」
 ――でも銃があふれているから銃撃事件が頻発しているのでは?
 「日本の障害者施設で最近起きた大量殺人ではナイフが使われたそうですね。我々は市民からナイフを取り上げるべきでしょうか」
 ――現代の戦争とは。
 「戦闘は進化しています。火砲の攻撃力は以前とは比較にならないほど強く、精密度も上がり、兵士はかつてなかったほど躊躇(ちゅうちょ)なく殺人を行える。志願兵が十分に訓練され、絆を深めた部隊単位で戦っている限り、PTSDの発症率も5~8%に抑えられます」
 「一方で、いまは誰もがカメラを持っていて、いつでも撮影し、ネットに流すことができる時代です。ベトナム戦争さなかの1968年、ソンミ村の村民500人を米軍が虐殺した事件の映像がもしも夜のニュースで流れていたら、米国民は怒り、大騒ぎになっていたでしょう。現代の戦争は、社会に計り知れないダメージを与えるリスクも抱えているのです」
     *
 Dave Grossman 1956年生まれ。米陸軍退役中佐。陸軍士官学校・心理学教授、アーカンソー州立大学・軍事学教授をへて、98年から殺人学研究所所長。著書に「戦争における『人殺し』の心理学」など。

 ■取材を終えて
 戦場に立つということは、これほどまでに凄(すさ)まじいことなのだと思った。
 ただ、米国民がこぞって支持したイラク戦争では結局、大量破壊兵器は見つからず、「イスラム国」誕生につながったことも指摘しておきたい。
 日本が今後、集団的自衛権を行使し、米国と一心同体となっていけば、まさに泥沼の「テロとの戦い」に引き込まれ、手足として使われる恐れを強く感じる。やはり、どこかに太い一線を引いておくべきではないだろうか。一生残る心の傷を、若者たちに負わせないためにも。(萩一晶)」(
2016/09/09付「朝日新聞」p15より)

自衛隊が海外で武器を持って戦うことも、絵空事では無くなってきた。国連の名のもとでの派兵など、現実味を帯びてきた。
上の文を読むと、派遣された自衛隊員は、今の日本では凄まじい環境に置かれる事になろう。

「ベトナム戦争で大失敗をした。徴兵制によって戦場に送り込んだのは、まったく準備のできていない若者たちでした。彼らは帰国後、つばを吐かれ、人殺しとまで呼ばれた。」
「我々もベトナム戦争で学んだことがあります。世論が支持しない戦争には兵士を送らないという原則です。国防長官の名から、ワインバーガー・ドクトリンと呼ばれている。国家が国民に戦えと命じるとき、その戦争について世論が大きく分裂していないこと。もしも兵を送るなら彼らを全力で支援すること。これが最低限の条件だといえるでしょう。」

現在の自衛隊が、専守防衛ではなく、“世界の警察”として世界の戦場に派兵されることを考えると、日本の世論はどう動くか? 果たしてそれを支持するか? たぶんほとんどの国民は支持しないだろう。
現在の自衛隊員も、日本国民の防衛のために自衛隊に入ったのであって、知らない国の人のために、またはアメリカのために命を捨てる気は無い。と言うだろう。
しかし、現政権の目は、国民を向いていない。アメリカのご機嫌だけ・・・

はざまに入るのが、命令されて派遣される自衛隊員。そこには地獄が待っている。戦場で、殺すか殺されるか。そしてどんなに命令に忠実であろうとも、帰国して待っているのは、国民や家族の冷たい目・・・。
そこに救いはない。

当然、自衛隊への希望者は激減するだろう。しかし現役の自衛隊員には、生活があり、家族がいる。
既に自衛隊内で検討されているかも知れないが、世界に派遣されていく人の、選考基準は何か?
かの神風特攻隊でさえ、とてもイヤだといえる状態では無かったという。
たぶんゼロではないだろうから、今から「世界の戦争に志願」する人を募っておいたらどうだろう。自衛隊内で、「そんなことは約束して入っていない」という雰囲気になれば、志願者は極小だろう。すると、政府はどうするのか・・・

アメリカに先制攻撃をしての戦争勃発はあまり考えられないが、アメリカに代わる「世界の警察」としての任務と考えると、国連の名を借りた派兵は現実味を帯びる。
いやはや飛んでもない時代になったもの。日本国民は、海外派兵を自分の家族の問題、と捉えて考えてみる必要があるのではないか?

160917kazoku <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

長男が50歳を過ぎた時、ああ、これで兵隊に採られないとホッとしました。これが母親の思いです。志願兵がなかったら、法律を決めた自民、公明の政治家が率先していくしかないでしょう。それが責任をとるということです。
「隗より始めよ」って漢文で習いましたよね。

【エムズの片割れより】
さっきの「報道ステーション」(2016/09/19)で、現役自衛官が、海外派兵に対してのアンケートで、強制的に「希望する」という選択をさせられている現状を話していました。「行きたくない」を選んだ人は、地方に単身で飛ばされている、という現状。

投稿: 白萩 | 2016年9月18日 (日) 22:02

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