« アフリカ・援助トラクターを「売る」 | トップページ | NHK「こんなはずじゃなかった 医師 早川一光」を見る »

2016年5月29日 (日)

オーパス蔵版の「ウラニアのエロイカ」が素晴らしい

エロイカは、この演奏以外は聞かなくなっている。ウラニア「エロイカ」である。
前に「宇野功芳氏が選んだ「フルトヴェングラー・窮極のCDベスト10」~ウラニアのエロイカ」(ここ)という記事を書いた。
5年前だった。それ以来、このオーパス蔵盤のMP3音源を聞いていたのだが、やはりCDが欲しくなった。
それで、「仏TAHRA FURT 1031」というCDを買ったのだが、その音にビックリ。高域がぎらぎらして、到底聞いていられない。
それで、改めてopus蔵盤のウラニア「エロイカ」のCD(OPK7026)を買ってしまった。両者、音がまるで違う。
周波数特性を測ってみると、その違いははっきり。

<仏TAHRA FURT 1031>  <オーパス蔵盤>

160529furt 160529opus

音も違う。
<ウラニアの「エロイカ」仏TAHRA FURT 1031>

<ウラニアの「エロイカ」オーパス蔵盤>

この違いについて、オーパス蔵盤のライナーノーツにこう解説があった。
ウラニア「エロイカ」・・・  木廣輝男
 1944年12月19、20の両日、フルトヴェングラーとウィーン・フィルはRRG(ドイツの全国放送組織)の「マグネトフォン・コンツェルト」と呼ばれる放送コンサートのためにベートーヴェンの交響曲第3番「エロイカ」、および第1番を録音した。この「エロイカ」の録音テープは戦後になってアメリカのウラニア社が東ドイツの放送局から他の多数のRRGテープと共に購人し、1953年にフルトヴェングラー初の「エロイカ」長時間レコードとして発売した。「ウラニアのエロイカ」はやがて輸人され、戦時中のフルトヴェングラーのベートーヴェン演奏にまだ殆ど触れたことがなかった日本のクラシックファンはその緊迫感、躍動感、前進性にあふれる演奏に真から驚嘆した。ここに、現在までも続く「ウラニア伝説」が生まれたのである。やがて「ウラニアのエロイカ」はカタログから姿を消し、しばらくの間は全くの昔語りと化していた。
 ところが1970年前後のほぼ同時期にフランスPathe(2C051-63332M)、アメリカのVOX(TV-4343)、イギリスのUnicorn(UNI-104)から、この「ウラニアのエロイカ」と細部まで全く同じ演奏がフルトヴェングラー夫人の正式なライセンスを得て発売されたのである。まもなく我が国でも日本コロムビア社からDXM-101として正式発売され、再び大きな反響を巻き起こした。それ以降今日まで日本初め各国に多くの「ウラニアのエロイカ」LPやCDが作られ、その間に色々な事実が明らかになって「ウラニアのエロイカ」の問題点も次第にはっきりしてきた。
 第一に「ウラニアのエロイカ」はピッチが半音近く高くなっていた。ということは演奏時間がそれだけ速くなっていたということである。その責任はウラニア社にはなく、1998年にフランスのTAHARA社がオーストリー放送協会(ORF)に保存されていたテープをCD化する際に調べたところ、ORFのテープそのもののピッチか高く、その演奏時間はウラニアのLPの演奏時間とほぼぴったり一致したのである。これまでに発売されたLPのうち、このピッチの異常に気か付いて初めて修正したのは、海賊盤を別にすれば日コロムビアのDXM-101であった。VOX社もピッチを正しくしてTHS-65020として再発売した。これは日本ではフィリップス、フォンタナ両レーベルで廉価版として発売されている。
 CD時代に入っても、ピッチを修正したものと未修正のものが依然として混在している。未修正のCDの多くは「ウラニアのエロイカ」の音色をいかに忠実に再現しているかを謳い文句にしているが、我々の関心事はウラニアのエロイカではなく、「フルトヴェングラーのエロイカ」を聴きたいわけだから、これらのCD(或いはCD-R)は全て失格である。現在のところピッチの点で合格となるCDはPricelessとBayer (D-16395、BR200 002この2種のCDでは共通して第2楽章157小節に全休止が入る。これはVOX盤のサイドブレークの位置に相当す150529eroicafurt る)、東芝EMI (TOCE-3730など)、TAHRA盤(FURT 1031、前述のようにORFテープ使用)、Grand Slam (GS-2005、ウラニアLPの復刻)などで、それほど多くない。墺Preiser (90251)とメロディアのCDは別種の、恐らくモスクワ放送が取得したテープによるものだが、第1楽章冒頭和音に故障があったらしく、電子的編集で2番目の和音を2回繰り返している。このため2和音が他のCDとは異なる時間間隔で鳴っている。
 ウラニア盤の第2の問題点はイコライザカーブがはっきりしないという点である。ウラニア盤のジャケットのテクニカルノートでは再生にあたってターンオーバ周波数を500Hz、高域滅衰を13.7dBとするよう指示していて、これらのパラメータは現在のRIAAカーブと矛盾しない。しかしウラニア社では1953年まではNABカーブ(あるいは旧コロムビアカーブ)を用いたはずで、ある種の「ウラニアのエロイカ」盤は明らかにNABカーブによる再生の方が納得の行く音質が得られる。高めのピッチと正しくないイコライザカーブの相乗効果によって著しくハイ上がりの「エロイカ」が再生されることになり、それがフルトヴェングラーの演奏そのものと誤解されていたきらいがある。
150529eroicaopus  今回オーパス蔵でこの「エロイカ」を復刻するにあたって、5種類のウラニア盤を試聴した。その結果ウラニア盤の音質はマトリックス番号つまり製盤の時期だけでは決まらないことが分かった。大抵の盤の音はグリーンドア(GDCL-0001)の復刻CDで聞く音と本質的に変わらない。ハイ上がりのややヒステリックな音で、ウラニア盤特有のパチパチノイズが激しい。その中でただ1枚、本シリーズの復刻者である安原氏が保存していた1枚だけは殆どサーフェスノイズがなく、低域から高域まで非常にバランスの取れた音質をもっていた。しかも細部まで鮮明に聴こえるのである。これまで耳にしてきた「ウラニアの音」というのはLPの保存法の不適切、多数回のトレースによる音溝の劣化など、副次的な理由による音質変化の結果ではなかったかと思われるほどである。ピッチ調整を施して出来上がったものは高域の歪が極小で、「ウラニアのエロイカ」とは随分異なった趣の、実に雄渾壮大な「エロイカ」であった。」(
opus蔵「OPK7026」ライナーノーツより)

断片的に、音のピッチの違いについては聞いていたが、イコライザカーブについては知らなかった。しかし、このカーブの違いは、“壊滅的な”影響が出る。演奏会場の音とはまるで違ってしまう。
この仏TAHRA盤が、イコライザ補正の影響でこんな音になっているのかどうかは分からない。しかし、opus蔵盤の、何と聞き易い音か・・・。安心して聞いていられる。
もちろん世界中に色々ある音源については、聞いていないので分からない。でも自分にとっては、このopus蔵盤が一枚あれば充分だ。

それにしてもフルトヴェングラーは、“人類の歴史”に残る演奏を残している。これ以外にも、バイロイトの第九(ここ)や、「運命」の1947年5月27日の歴史的ライブ録音(ここ)などなど・・・
ハイレゾに凝る一方、こんな古い録音も聞いているシルバー族ではある。

160529rei <付録>「ボケて(bokete)」より


« アフリカ・援助トラクターを「売る」 | トップページ | NHK「こんなはずじゃなかった 医師 早川一光」を見る »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« アフリカ・援助トラクターを「売る」 | トップページ | NHK「こんなはずじゃなかった 医師 早川一光」を見る »