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2016年2月14日 (日)

有償通訳ガイドが違法!?~業務独占資格

先日の日経新聞にこんな記事があった。
官製シェア経済の忘れ物「主役は個人」の規制緩和を
 編集委員 石鍋仁美
 「ブラックジャック」。漫画家、手塚治虫の作品に登場する無免許医師だ。名人技で難病を治療し高額の報酬を取る。税金も払っていないだろう。訪日外国人の増加に沸く観光業界にもブラックジャック問題があるという。ただし医師ではない。通訳ガイドの話だ。
 昨年、観光庁の検討会で気まずい空気が流れる場面があった。テーマは国家資格である通訳案内士の今後。招かれたNPOが、有償ボランティアで外国人を案内し好評との体験を語った。これが適法かただす声が通訳案内士から出た。事務方は「違法か合法かと聞かれれば違法」。海外親善に務めてきたNPOの人たちは混乱しただろう。
 現行法では有資格者以外の有償通訳ガイドを認めていない。だから東京五輪に向け無償ボランティアが必要になる。現実には、悪質業者から外国語に堪能な一般人まで「違法」ガイドは多い。実力や評判は玉石混交だが、一律での取り締まり強化を通訳案内士の団体などは訴えている。
 街の人々が持っている資産や技能を生かし小ガネを稼ぎ、他人とつながる。これが今、世界で広がるシェアリングエコノミー(共有型経済)だ。有償ガイドもその一種といえる。
 「共有」というと私有財産の否定につながる危険な香りを感じる向きもあろうが実態は違う。起点はリーマン・ショック後の米国だ。収入減を自力で補おうと、空き部屋やマイカーなどを提供。皆が小さな起業家になったわけだ。ご近所から始まり、やがて遠隔地の人とのやりとりが始まる。
 飛躍のカギはインターネットとスマートフォン(スマホ)だ。生活者同士が直接つながり評価が蓄積されていく。そのデータをもとに自己責任で相手を選ぶ。国家や業界が認定する資格、免許といった従来の信用制度とは全く違う。作家の岡田斗司夫氏は「評価経済社会」が到来したとみる。
 国家戦略特区となった東京・大田区で外国人観光客などに部屋を提供する「合法な民泊」の申請が始まり、他の地域でも後に続く動きがある。弁護士らは難しい手続きの代行に名のりをあげ、「売れ残りのマンションでも稼げる」と不動産関係者の鼻息も荒い。
 国は「シェアリングエコノミー」を成長戦略の一つに掲げ、民泊普及に向け合法化と規制を並行して進めており、設備や面積などに一定の基準を設ける流れができつつある。
 しかし現在、数万件を超す民泊物件の利用者が求めるものは少し違う。古民家もいい。居間の片隅のベッド一つでもいい。日本人とふれあいたい人には間借り感覚こそが楽しいのだ。個性的な部屋がネットから消え、画一的な宿が増えたりすれば、旅慣れた外国人に「日本はつまらない国」との印象が広がりかねない。
 個人がマイカーで他人を運んだり、他人と住居を共有したり。生産者と消費者のはざまにネットが生んだ新しい領域で、既存の枠におさまらないサービスや文化が次々に生まれる。考案した若者は富を手にし、参加する生活者も国などに頼らず収入を増やす。欧米からアジアへ広がるスマホ&シェア経済圏に、日本も乗るのか、背を向けるのか。」(
2016/02/08付「日経新聞」p9より)

「現行法では有資格者以外の有償通訳ガイドを認めていない。」んだって・・・
Wikiによると「通訳案内士とは、観光庁長官が実施する国家試験「通訳案内士試験」に合格して、通訳案内士として登録した者のみが従事でき(業務独占)、観光客に対して外国語通訳及び観光案内を行って報酬を得る職業。外国観光客相手のプロの観光ガイドのこと。」
だという。

医師などは分かるが、通訳が有償では、違法だという・・・。
改めて「業務独占資格」を見てみると、Wikiにはこうある。
業務独占資格とは、ある業務に対して、ある資格を有する者のみが行うことができる旨の法令の定めがある場合における、その資格をいう。
業務独占資格は、守るべき法益に応じて要求される規制の程度が異なるため、独占性はそれぞれの資格で異なっており、概ね下記のように分類される。
<有償業務独占資格> 公認会計士、弁護士、弁理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、行政書士等については、有償での業務のみが独占となる。
<無償業務独占資格> 税理士、医師、司法書士、土地家屋調査士等については、有償での業務に加え無償での業務も独占となる。
<行為独占資格> 建築士、薬剤師については、有償又は無償での業務に加え業務でない行為も独占となる。これらの資格の免許を与える行為は、行政法学上の許可に該当する。
なお、無資格者の業務を禁ずるのではなく有資格者の業務にのみ法的効力を与える、いわば消極的な業務独占資格をこの範囲に含めるか否かについては、統一的な見解はない。」

“有償で、知人の法の相談に乗ってはいけない。” なるほど・・・
“幾ら無償でも、医療行為を行ってはいけない。” ま、そうかな・・・
“そんな状況でも、薬の調合をしてはいけない。” これも、ま、そうかな・・・

しかし、“有償で、通訳をしてはいけない。”は、やはり少しヘン・・・
外国語は、帰国子女を筆頭に、世の中に幾らでも能力のある人はいる。それを活かして、“有償で”ガイドや通訳をすると違法とは・・・
そして、「実力や評判は玉石混交だが、一律での取り締まり強化を通訳案内士の団体などは訴えている。」というのだから、まさに圧力団体。

そもそも、人の命に関わるような仕事は、国が制限するのは分かるが、単なる語学能力の資格が、なぜ「業務独占資格」になるのか、理解に苦しむ。当時の法律制定の事情を調べると、たぶんまた圧力団体、つまり利権の構図が読み取れるのだろう。

先の大田区の「合法な民泊」のように、世の中で違法の認識が無ければ、幾ら法律で強制しようにも、それは風化していくだろう。

安倍政権が進める戦争への法による地ならしも、幾ら法律を作っても世の中が認めなければ風化していく・・・と思いたいところだが、どっこいこっちは国権の強制力がある。
法律と世論・・・。何かちぐはぐな心地で、読んだ記事であった。

160214toire <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

こんばんは。

みなさんは毎年どれくらいの外国人と接するチャンスがありますか?私は毎年10000人ほどの外国人観光客に接しています。そんな日本人の質が悪かったら恥ずかしくないですか?

なぜ通訳案内士の独占が必要かというと、質の担保ということに他なりません。
観光立国と言われるヨーロッパの国の多くは観光ガイドに国家資格を設けています。立派な職業として確立されており、優秀な人材がガイドを目指しています。
ガイド資格が無い北米などの例を見ると、やはり賃金が安く、チップが無いと生活できないような職業です。
立派な歴史や文化のある日本がどちらを目指すべきでしょうか?

国がガイド資格を設けるのは、その国のブランドを守り高めるための国家の戦略ですよ。

生命の危険が無ければ、規制緩和をしたらいいというのは、だいぶ次元の違う話です。

一度安売りしたら終わりです。

また他の職業の独占業務と大きく異なる点は国境をまたぐということです。国境をまたいで違法なガイドが不法就労をしに来ます。それを取り締まれる法律が無ければ無法地帯になりますよ。日本国民の就業を守るということや適正な税徴収の面でも何かしらの規制は必要なのです。先日の3~4000万ぼったくって強制送還になった違法ガイドの件が顕著な例です。日本人の常識や善意が通じない相手に対しての牽制が必要です。

また、一生に一度しか日本に来るチャンスが無い人に玉石混交のガイドがいて、石を引いてしまう可能性がある状況は適正でしょうか?
外国人相手の一回限りの商売では自然な淘汰原理が働かずに、石が有償サービスを提供し続けることも可能です。悪意があればなおさらです。その点、国家が質を保証するガイド資格があるというのは安心ではないでしょうか。
たとえば悪質なガイドがいて、通訳案内士が独占資格でなければ、資格を取り消されても痛くもかゆくもありません。通訳案内士ではないただのガイドとして悪質行為を繰り返していくことでしょう。

実際のところ、業務独占が無くなっても現在の通訳案内士自身が困ることはあまりありません。しかし将来に立派なガイドになりたいという人材がいなくなるのは確実です。

そもそも現在の通訳案内士試験の合格率は20%ですよ。”帰国子女を筆頭に、世の中に幾らでも能力のある人”が取れない資格じゃ全くないです。
それでも合格できない人に解放しようってことですよ。

【エムズの片割れより】
なるほど・・・。勉強になりました。ありがとうございました。

投稿: 通訳案内士 | 2016年3月 8日 (火) 21:49

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