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2015年12月20日 (日)

NHK ETV特集「“医師の罪”を背負いて~九大生体解剖事件~」

先日、NHK ETV特集「“医師の罪”を背負いて~九大生体解剖事件~」(2015/12/12放送)を見た。前に聞いていた事件だったが、なかなかショッキングなドキュメンタリーだった。

NHKのサイトにはこう解説がある。
NHK ETV特集「“医師の罪”を背負いて~九大生体解剖事件~」
終戦間際の1945年5月から6月にかけて、九州帝国大学医学部で米兵の捕虜を使った生体実験が行われた。世に言う「九大生体解剖事件」。墜落したB29の搭乗員8人に対し、海151220kyuudai 水を使った代用血液を注入するなどのさまざまな生体実験の手術が行われ、捕虜たちは死亡した。戦後70年間タブー視され、多く語られることのなかった「負の歴史」。生体実験に関わった医師や看護師は、すでに全員が事件についてほとんど語らぬまま亡くなってしまった。しかし、ただ一人、そのとき医学生として生体実験手術の現場に立ち会った証言者がいる。東野利夫さん(89)である。東野さんは戦後、福岡市内で産婦人科医院を営みながら、国内外で関係者に取材を重ね、多くの壁にぶつかりながらも、事件と向き合う地道な活動を続けてきた。
事件は、関係者や私たちに一体何を残したのか。私たちは何を反省し、何を語り継ぐべきなのか。番組では、東野さんの証言や亡くなった関係者・遺族への取材を通して、「九大生体解剖事件」からの70年という歳月の意味を見つめる。」(
NHKのここより)

我々は、皆、思い出したくない過去を持っている。しかし、それを本当に「無かったこと」にして良いのか?
それをこの番組は問うているように思う。

誰もが目をそむけたくなるような事実、この例では生きている米兵を、麻酔で眠らせて、「肺を片方取っても生きているぞ」という生体実験・・・。海水を使った代用血液を実際に輸血して、生きるかどうかを試した実験・・・。
それを戦争での“米国の被害者”の日本人が行っていたのである。

その実験のただ一人の生き証人の東野さんが、「その事実を埋もらせてはいけない」と、長年取材し、その機の唯一の生存者である機長に、アメリカに会いにまで行っている。
そして、生涯をかけて集めた資料を公開するチャンスが訪れた。平成26年9月27日に落成した九州大学医学歴史館だ。しかし、九大の判断によって、東野さんの資料の展示は見送られた。
実際に展示されたのは2点。事件の概要のパネルと、「九州大学50年史」のそのページだけ。
東野さんは言う。「心の中で楽しみにしていた。展示する予定で持っていった資料は一点も出されない。力が抜けるほど残念だ。」
判断を下した医学部長は言う。「医師の立場で言うと、カルテにあたるような物とか、診療記録に当たるようなものとか、資料が実は残っていない。一次資料があれは文句なく展示するべきだろうと思ったがそれが、それが無いので、二次資料三次資料、あるいは完全な小説というものなので、ここであえて展示する必要は無いと判断した。」

そして東野さんは、自分の病院でその資料の公開を始めた。東野さんが生涯をかけて集めた資料の展示。70年前の事実・・・

この番組は、「忌まわしい事実を、消し去りたい」という九大の人を筆頭にした今の人たちの思いを、「それではダメだ」と打ち消した、実に良心的な番組だと思った。
この番組は、東野さんの努力を世に知らしめ、「戦争はいけない」と訴えた。一人でも多くの日本人に見て欲しい番組である。この秀作は、たぶん何かの賞を取るだろう。
ここ)をクリックすると全編が見られる。

ドイツが、ユダヤ人虐殺の事実に目をそむけないのと同じく、かつて戦争によって狂気となった我々日本人の現実の姿にも目をそむけず、戦争に参加する普通の国にひた走っている現在の日本の政治を見つめ直す機会としたい。

151220safe <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

貼ってくださったリンクで番組をほぼ9割以上みることができました。(あとちょっとというところで不具合発生)不時着敵機10名の搭乗者のうち1名が自殺、機長だけが東京に送られ、残り8名が実験台死。主人公の東野医師が存命の機長をアメリカにたずねるも、訪日はしないといわれた。部下全員捕虜として戦争を生き延びられると思ったら、本人だけで、残りの若者9名は全員死亡では。噂ではきいていたこのはなし。調査報道番組を見る機会をありがとうございました。記念館の展示がきれいごとになったという結びがみられなかったのが残念。

【エムズの片割れより】
時間帯を変えて、画面下のカーソルを終わり頃に持っていくと、続きが見られます。
画面右下の四角のアイコンを叩くと、PCの全画面表示になるのですね。これだったらTVのオリジナルを見逃しても、PCで充分・・・
それにしても、なかなか重たいテーマですよね。

投稿: kmetko | 2015年12月22日 (火) 07:06

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