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2015年3月24日 (火)

「ただいま、文藝春秋社執筆室から実況中継でお送りしています。」

先日の日経夕刊にこんなコラムがあった。
執筆室 千早茜
 ただいま、文藝春秋社執筆室から実況中継でお送りしています。とはいえ、この原稿が掲載されるのは一週間以上も先の事なので、ライブ感などまったくだせはしないのですが、ちょっとした昂奮(こうふん)状態であることが伝われば幸いです。
 なぜ昂奮状態かを説明致します。この部屋、執筆室といえば聞こえがいいが、要はカンヅメ部屋なのです。つまりは依頼された原稿ができていない状態ということ。できていないくせに昂奮している場合ではないのだが、やっぱりカンヅメ部屋にいるというのはちょっと嬉(うれ)しい。なんだか、とても作家っぽい。物書きになってまだ六年ほどの知名度も低い小説家としては作家として認められたような気分になる。そして、一体どれだけの作家がこの部屋の、いま私が座っている椅子(それもとても文豪っぽい椅子)でうんうん苦しんでいたかと思うと、胸がドキドキする。座っているだけで、文豪エキスが浸(し)み込んできそうだ。浸み込まないかな。
 さて、この執筆室、どんな部屋かと胸を高鳴らせてやってきたが、若干広めの普通のビジネスホテルのような感じで最初は少しがっかりした。清掃は近くのホテルの方がしてくれるらしく、タオルも浴衣もベッドメイキングの仕方もホテルそのもの。ただ、書き物机はかなり大きく、広辞苑が置いてある。内線電話もあるが、編集さんは携帯電話でかけてくるので鳴らない。それ以外は特に変わったものはない。私の前に泊まった人は誰かと訊(き)いてみたが、わからないということだった。
 すべての出版社にこのような執筆室があるのかは知らない。だが、新潮社には新潮クラブというものが神楽坂にあり、三回ほど泊まらせてもらったことがある。閑静な住宅地にある二階建ての和風の家で、一階の部屋にはこたつがあり、庭の眺めも良く、とても落ち着く。通いの管理人さんがいて、その方がお茶やおやつを与えてくれる。私にとって食べ物をくれる人は良い人で、無条件に懐いてしまう。新潮クラブに泊まりたいと言ったのは、ある文豪の幽霊がでるという噂があったからで、もし遭遇できたら霊験あらたかな気がしたからだった。しかし、神楽坂には美味(おい)しい店も遅くまで飲める店も多い。たらふく飲み食いして、優しい管理人さんの敷いてくれた布団でぬくぬくと眠り、庭にやってくる小鳥の声を聴きながら手作りの朝食をいただいた。果たしてあんな長閑(のどか)な環境で執筆できるのだろうか。少しは文豪エキスが欲しいと思い、前に泊まった人を訊くと「ヒクソン・グレーシーです! 千早さん、彼の入ったお風呂に入ったんですよ!」と言われ、なんとなく要らない筋肉がついたような気分で新潮クラブを後にしたのを覚えている。
 それに比べて文藝春秋社の執筆室はかたくるしい。廊下に人の気配はなく、書く以外何もさせないぞという気迫がこもっている気がする。会社のまわりにもあまり店がない。そして、運悪く(運良く?)ずっと雨が降っている。しかし、はかどるかというと、はかどらない。こうやってわくわくしながらエッセイを書いてしまっている。おまけに社内には資料室があって、二十四時間いくらでも本が読め、珍しい図録を眺められる。真夜中に誰もいない館内をうろつくのも楽しい。きっとこれが掲載されたら怒られることは間違いない。(作家)」(2015/03/17付「日経新聞」夕刊p7より)

こんな他愛のないコラムは(失礼!)、読んでいて楽しい。
筆者は、原稿が書けないので、カンヅメ部屋に入れられている状況。それを逆手に取って、そのこと自体をネタに原稿を書いている。

同様なことを思い出した。あれは中学の時だったか、国語の時間に、自由題での作文を書くことになった。自由題は困る。何を書いて良いか分からない。
白紙のままでは出せないため、「自由題には困る。書くことがない。何を書いて良いか分からない。時間だけが過ぎる。困った、困った・・・」という作文を書いて出してしまった。その作文に付いた点数は・・・忘れた。
同様に、準現役時時代(天下り?会社時時代)、期首恒例の予算大会(キックオフ)後の立食パーティーで、突然スピーチを指名され、困ったことがあった。その時も苦し紛れに「このように、まったく予想外の事態が起こる事がある。仕事も同様で、常に、いつ何が起きても良いように、準備しておくことが肝要・・・」ナンテいうことを言って逃げたっけ。

何が無くても、現在置かれた状況は、それはそれでまた“テーマ”になるのである。
こんなジョークっぽい話は大好きである。

150324rule <付録>「ボケて(bokete)」より


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