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2013年12月26日 (木)

「秘密法とどう向き合う」~憲法学者・長谷部恭男さんの賛成論

先日の朝日新聞に、秘密法に対する憲法学者・長谷部恭男さんの賛成論が載っていた。
東大教授の長谷部恭男氏は、憲法改正手続きを定めた憲法96条改正に反対する「96条の会」の発起人であり、集団的自衛権の行使容認にも、憲法改正にも反対の立場だが、秘密法は賛成だという。
“3つはパック”だとばかり思っていたが、長谷部氏によると違うらしい・・・。その姿勢に興味を持ち、先日「朝日新聞」に載った記事を読んだ。

「(今こそ政治を話そう)秘密法とどう向き合う
       憲法学者・長谷部恭男さん
 去る11月13日、長谷部恭男東大教授は国会で自民党推薦の参考人として特定秘密保護法に賛成の意見を述べた。安倍政権が視野に入れる集団的自衛権の行使容認にも、憲法改正にも反対の立場の長谷部さんが、よりによってなぜ安倍政権に力を貸すのかと波紋が広がっている。真意を聞いた。

 ――もしかして、「御用学者」と呼ばれていませんか。
 「何のことでしょうか」
 ――国会で特定秘密法に賛成の意見陳述をしたことが、この法律に反対してきた人たちに衝撃を持って受け止められています。
 「特定秘密法が必要だと考えるから意見を述べた。それだけです。安倍政権のためではありませんし、自民党の推薦だということは、審議が始まる15分前に初めて知りました」
 ――特定秘密法が必要だと考える最大の理由は何ですか。
 「国を守るための法律だからです。国を守るとは、憲法を守るということです。単に物理的に領土を守るとか、国民の生命と財産を守るということではありません。中国や北朝鮮と同じ政治体制でいいなら、国を守る必要はない。しかし憲法の定める自由で民主的な統治の基本秩序を守り、現在の政治体制を守るためには、特定秘密法をつくり、特別な保護に値する秘密が外に漏れないようにしなければなりません」
 「国を守るためと称して安倍政権が視野に入れている、集団的自衛権の行使容認には大反対です。憲法改正についても、96条の憲法改正要件の緩和を含めて大反対です。ただそれと、特定秘密法は別です」
 ――秘密保持は、今ある法律を使えば十分可能ではないですか。
 「特定秘密法はむしろこれまでなかったことが不思議な法律で、あって当然のものをなぜ今つくるのかと問われても説明は難しいですね。ただあえて言うと、どこの国もそうですが、基本的に役所は自分が持っている情報をほかの役所には出したがりません。これまでは、各役所がそれぞれ、首相に情報を上げていました。これでは到底、国は守れません。たとえばテロリストの活動や重大犯罪から国を守るためには各役所が情報を持ち寄り、連携して効果的な対策を打たなければならない。特定秘密法ができたことで、秘密は守られるからちゃんと情報を出しなさいと言えるようにはなります」
 「法律には、特定秘密を扱う公務員や民間人は『適性評価』を受けると明記されました。家族の国籍、飲酒の節度、病歴などが調べられるのでプライバシーの侵害につながると批判されていますが、事実上、これはすでに行われています。近代国家である以上、こんな機微に触れる調査を行うなら法的根拠を明確にし、調査対象者が不服申し立てできる手段も備えておくのは当然です」
     ■     ■
 ――しかしこの法律では、そもそも何が「特定秘密」に当たるかが全くわからず、秘密の範囲が際限なく広がる危険性があります。
 「何を秘密とすべきかは時代や国際環境によって変化します。事前に隅々まで確定させられないのは、私たちが生きるこの世界がそういう風にできているからで、具体的な事例ごとに、専門知識をもつ各行政機関が判断し、指定したり解除したりするしかありません」
 「今回の仕組みは、特別に保護すべき情報を金庫の中に厳重にしまって、権限のある人だけが見られるようにするというものです。なんでもかんでも金庫に入れてしまうと政府の仕事がやりにくくて仕方がない。常識的に考えて、秘密の範囲が際限なく広がることはありません」
 ――それこそ常識的に考えれば、『沖縄密約』を否定し続けた政府を信用しろと言っても無理な話です。恣意(しい)的な運用が行われていないか、独立性と中立性の高い第三者機関を設けてチェックさせるべきです。
 「そうでしょうか。専門的な知見がない人に、特定秘密として指定すべきか否かの判断はできません。しかし高い第三者性を求めれば求めるほど、専門性の低い人を呼んでこなければならない。そんな組織を作ってもあまり意味がないと思います。発想を転換して、情報を手元に持っている人がそれを外に出しやすくする仕組みを作る、そのことに力を注いだ方がいいのではないですか」
 ――どういうことでしょうか。
 「アメリカでは、諜報(ちょうほう)機関に勤める人が退職後に回想録を書くのはごく普通のことで、事前審査を経れば出版できる仕組みが整っています。例えば、アルカイダの捜査にあたった元FBI特別捜査官が2年前に出した『The Black Banners』は全米でベストセラーになりましたが、誰を尋問しどんな情報を得たか、『特定秘密』に相当することも含め詳細に記述されていて驚きます。著者はFBIに原稿を提出して事前審査をパスし、CIAから『不条理な削除』を求められた部分は黒塗りにして出版しましたが、CIAの要求は政府の保秘指定のガイドラインを逸脱しているので、法的手段に訴えるとしています」
 「日本もそのような審査をパスすれば出版できる仕組みを作ればいいんです。そうしないと、本当に60年経っても情報が外に出てこなくなりますよ。例えば映倫(映像倫理委員会)は、外部有識者と映画出身者で構成される委員が、社会通念と映画倫理規程に従って自主的に規制を行っています。それにならって、メディア各社で組織を作り、出していい情報かどうか政府と協議するルートを持つ。審査を経て世に出たものの中に特定秘密が含まれていたとしても、審査を通ったことが故意の漏洩(ろうえい)ではないことを担保するので、罰せられる可能性もなくなります」
 「特定秘密法ができたことで、秘密を知りたいという人々の欲求が高まり、市場ができる。そこを狙って回想録を出そうという人や、内部情報を入手して報じようとするメディアや記者が増える。政府に情報を出せ出せと要求するよりも、彼らがすでに持っている情報を外に出せるルートを作った方がはるかに実際的です。政府が『黒塗りにしろ』と不当な要求をしてきたら、法的手段に訴えればいい。特定秘密法には抵触していないと。手元に情報を持っているからこそ、勝負できるのです」
     ■     ■
 ――そうでしょうか。特定秘密を漏らせば厳罰が科されるのだから、社会の萎縮はどんどん進むでしょう。長谷部さんと違って、多くの人は世間の空気を読みますから。
 「すみませんね、空気も読まないで。そう。だからメディアが今、空気を作るべきなんです。萎縮する必要はないという空気を。それなのに『漏らせば厳罰』ばかり言ってむしろ萎縮ムードをあおっています」
 「制度の外側からいくら心配しても心配な状況は変わりません。変えるためには内側に踏み込んで、情報を外に出せるルートを作るよう政府と交渉しないと。安倍政権の支持率が下がっている今が好機です。法律には反対だ、廃止しろとだけ言い続けていたら交渉できませんよ。ルートさえできれば情報はどんどん外に出てくるのですから。清廉潔白な朝日新聞さんは嫌かもしれませんが、清廉なだけでは勝負になりません」
 ――どんなに嫌みを言われても、特定秘密法、集団的自衛権、憲法改正をパッケージで見ると安倍政権に懸念を抱くのは当然でしょう。
 「確かに安倍政権は危ないことをやろうとしているようには見えます。しかし特定秘密法で日本が戦前に戻るというのは非常におかしな議論です。今にも戦争が起きると言わんばかりの報道で人々をおびえさせるのはそろそろやめて、次のステージに移った方がいいと思います」
     ■     ■
 ――自民党推薦の参考人として賛成意見を述べたことは結果的に「危ないことをやろうとしている」安倍政権に手を貸したことになります。
 「安倍政権が次のスケジュールに移るという意味なら確かにそうかもしれません。しかし、そもそも安倍政権をつくったのは有権者であり、民主党政権を徹底的に批判して『決められる政治』を希求した朝日新聞をはじめとするメディアです。誰が決めるかが大事なのに、メディアはそれを等閑視した」
 「私は安倍政権に決めて欲しいとは思っていませんでした。私たちは最初から理想の民主主義社会に生きているわけではない。あれもダメこれもダメではなく、自分ができることをまずやり、少しでもいい社会をつくっていくしかないのではないですか。有権者もメディアも『誰か』に責任転嫁し過ぎです」
 ――苛立(いらだ)っていらっしゃるんですね、日本政治や社会は無責任だと。
 「別に苛立っていませんよ。とても平和で大変結構と思っています」
     *
はせべやすお 56年生まれ。東京大学教授。憲法96条改正に反対する「96条の会」発起人。著書に「憲法の円環」「憲法のimagination」など。
 ■取材を終えて
 「ゼロか100かしかないんですか」。長谷部さんに問い返された。敗北感にさいなまれ、「敵/味方」の分断線を引いては自陣営に引きこもる。その積み重ねは結局、異論を封じ、社会を一色に染めたがっている「向こう」を利するだけなのではないか。線を越えて緩やかにつながり「次の一手」を探す。それが最も有効な抵抗のはずだ。(高橋純子)」(
2013/12/20付「朝日新聞」p17より)

「事実」と「真実」・・・。広辞苑にはこうある。
しん‐じつ【真実】うそいつわりでない、本当のこと。まこと。
じ‐じつ【事実】 事の真実。真実の事柄。本当にあった事柄。

「真実」を自分なりに捉えるには、「事実」を色々な側面から見て、自分なりに理解することが必要。そのためには、秘密法の反対論だけでなく、賛成論にも耳を傾けねば・・・。
そのような視点で、この記事を読んだ。

これを読んでみると、“質問”は新聞でいつも目にしている言葉。そして長谷部氏の回答は、何となくちぐはぐ。つまり議論が噛み合っていないように思えた。

「特定秘密法はむしろこれまでなかったことが不思議な法律で、あって当然のものをなぜ今つくるのかと問われても説明は難しいですね。」という言葉は、まず賛成というスタンスがあり、理屈ではない・・・。こうなると感情論!?
「そもそも安倍政権をつくったのは有権者であり、民主党政権を徹底的に批判して『決められる政治』を希求した朝日新聞をはじめとするメディアです。誰が決めるかが大事なのに、メディアはそれを等閑視した」という反論(?)はどう受け止める??
結局は、物別れ・・・!?

この議論を読むと、自分も含め、賛成論も反対論も、理屈よりも先に感情レベルの好き嫌いがあるように感じてしまう。
よって我々国民も、もし真剣に考えるのなら、(悪く言うと)単にメディアの煽りに乗って踊らされるだけでなく(=同じ言葉を繰り返すだけでなく)、メディアの意見を参考にするにしても、自分の意見をキチッと持つ事が、“冷めにくい”世論を作る源なのかも知れない。
正直、自分も、メディアの言葉のオウム返しは出来たとしても、賛成論者と対等に反対の議論ができるかと言われると、心もとないので・・・。

今日、安倍首相は靖国神社に総理大臣として参拝したという。まさに、もう世界に怖いもの無し・・・。先日のNHKスペシャルで安倍首相が言っていた「今後3年間は選挙がないのでじっくりと・・・」。なるほど・・・
こんな言葉を聞いて、前にも書いたが(ここ)、「独裁者」という言葉をまた思い出した。
「――投開票日の21日昼。麻生太郎副総理は首相にこう語りかけた。「あなたは歴史上にない独裁者になりますよ」首相が「独裁者、ですか」と応じると、麻生氏は「謙虚さが大事だ」と忠告。首相は「そうですよね」とうなずいた――」(2013/07/23付「朝日新聞」p2より)

世界を敵にした独裁者を日本で許さないため、国民一人ひとりが、“自分の言葉で”今の政治の向かう方向に対する懸念を自身の心に根付かせることが、冷めない世論、ひいては将来世代に対しての責任を果たす事につながるような気がする。

131226tuma <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

安倍の暴走が止まりません。
自分の政治的行為と口先から出される「言葉—説明」のこれほどのかい離した政治家をみたことがありません。 中国、韓国の反発やアメリカの失望からみえてくるのは日本のイスラエル化でしょう。
 
最近 秘密保全法を英訳されて国連の諸機関やNPO,NGOなどに送られたエセックス大学の講師の藤田さんのおはなしをある講演会で聞きました。英訳文は9月に送られたということですが、国連人権高等弁務官・・ナビ・ピレイ山、表現の自由に関する国連特別報告者・・・フランク・ラ・ルーさんなどから「国際法上における人権基準に照らし合わせた法案の適法性について憂慮」が表明されました。非常に速いレスポンスです。一部で報道され国会審議でも質問されましたが、安倍は「国連の一部機関の一部の人の意見」として無視したようです。
 
しかし問われているのは国際人権条約・・・・日本も7つの人権条約を批准している・・・の根幹である人権観念そのものでした。条約・批准ということは「その条約を我が国も取り入れて守る」という意味であるをいまいちど国会議員に思い起こさせねばならないでしょう。
 人権概念はフランス人権宣言から始まり、2度の世界大戦の犠牲と教訓からうみだされたものです。だから安倍の言動は「戦後世界秩序の破壊」というより「人権観念」の破壊といいたいのです。
 
人権条約を批准せず人権を蹂躙して恥じない中国政府と同じ立場で安倍を批判するつもりはありません。人権破壊という意味で安倍のいちばんのお友達はロシアのプーチンでしょう。
 国と国の対立を煽る各国の権力者のそれぞれの利害の対極に世界人権宣言を据えてかんがえていきたいとわたしは思っています。 

【エムズの片割れより】
各国政府だけでなく、米NYタイムズに続いて英フィナンシャル・タイムズ紙も批判記事を載せました。世界が日本の動きを心配しています。これは世論ではない、との前提で。

投稿: todo | 2013年12月27日 (金) 05:40

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