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2013年6月21日 (金)

「役に立つ」か・・・

今日は軽い読みもの・・・。だいぶ前の朝日新聞夕刊の記事・・・

役に立つ 三崎亜記
 ネットの中で出回る、「戦争捕虜に課せられた拷問」という話をご存じだろうか? 拷問というからには、苦痛を与えたり、精神的な圧迫を加えたりするのかと思ってしまうが、その「拷問」は一風変わっている。
 まず、捕虜に地面に穴を掘らせる。翌日には、その穴をそっくり埋め戻させ、更にその翌日には、また同じ場所に穴を掘らせる……。それを毎日繰り返させると、最後には捕虜は、精神の均衡を失ってしまう、という内容だ。
 実際に行われていた拷問なのか、真偽のほどは定かではないが、何の役にも立たない行為の単純な繰り返しを強要されたとしたら、確かにそれは、「拷問」と言うに等しい精神的苦痛を伴うだろう。
 どんな仕事をするにも「やりがい」というものは必要だ。自分のやったことが、何らかの形で誰かの「役に立つ」ことが示されなければ、やりがいを持続させることは難しい。
 ところが最近は、「ブラック企業」、「サービス残業」、「過労死」など、まるで働くことが一種の「拷問」ででもあるかのような状況ばかりがクローズアップされている。働くことで自分が「役に立っている」ということが実感できなければ、仕事は意味のない「穴掘り」と化してしまう。
 私の「小説を書く」という仕事においても、それは同じだ。
 もちろん編集者は「面白いですよ!」と言ってくれるし、通帳には発行した分だけの印税が振り込まれている。読者からの感想の手紙が届くこともある。誰かの「役に立っている」からこそ、私は生活できているのだ。
 とは言うものの、毎日のように立ち寄る書店においてすら、見知らぬ誰かが私の本を手に取り、買い求めている場面というのに遭遇したことがない。電車の中で、文庫本を読んでいる人を見かけるたびにこっそり覗(のぞ)き込んでしまうが、私の小説を読んでいる人物には、ついぞお目にかかったことがない。
 なので、自分の文章が、実際に誰かの人生の「役に立っている」かどうかを実感することは難しい。
 そんなわけで、毎日机に向かいながらも、同じ場所に穴を掘っては埋め戻しているような、堂々巡りのようなやりがいのなさを感じてしまうこともある。
 小説が「役に立つ」かどうか? それを突き付けられたのが、二年前の三月十一日だ。
 地震、津波、原発の恐怖という圧倒的な「リアル」を前に、小説という「空想の産物」が、果たしてどれだけ人の役に立つのだろうと、自問しなかった小説家はいないだろう。
 あの震災で、我々は人間の無力さを嫌というほど思い知らされた。だが同時に、無力だからこそ、見知らぬ誰かとつながり合い、支え合うことの大切さを改めて実感できたのも確かだ。ちっぽけな我々は、先の見えない明日を目指して、「穴を掘り続ける」しかないのだろう。いつかきっと、見知らぬ誰かの「役に立つ」その日を信じて……。
 先日、古道具屋で食器を買い求めた。自転車で持ち帰るので、厳重に包んでもらった。家に帰って包みを解いていて、見覚えのある文章が目に飛び込んできた。二週間前の、このコラムが載った新聞紙だ。割れずに持ち帰ることができたお皿を手に、私は思わず、こう呟(つぶや)いたわけだ。「ああ、役に立っている」(作家)」(
2013/05/22付「日経新聞」夕刊p7より)

「役に立つ」か・・・。そう問われると、公私ともに、何とも自信がない・・・。現役時代はこんなでは無かったのだが・・・。やはり60歳の定年という事実は重たい。世の中は、どんどん“役立たず”の立場に追い込んで行く・・・。ま、ほとんど自分の被害妄想だけど・・・ね。

それにしても、老いても死ぬまで、何かの役に立っている・・・という人生は、理想ではあるが、なかなか難しい。
でも、ある年齢になって、“社会的に役に立つ”というのは難しいとしても、“家庭的に役に立っている”という状態は可能かも知れない。
・・・ナンテ書くと、ウチのカミさんが喜んで、すぐに実践を!!と言い出すので、この辺でサッサとペンを置こう。オワリ・・・。

130621ayasi <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

私の友人のご主人は今、介護のホームに入っています。友人が言うのには生きていてくれて世帯主の欄に夫の名前を書けるだけで役に立っているのだと、それだけで価値があるのだそうです。元気な時は「役に立たないお父さんで」とよく怒っていました。人間は生きているだけで誰かの役に立っているのだと思うようになりました。

【エムズの片割れより】
男として、何とも恐ろしいお話で・・・。老後が怖くなりました!!

投稿: 白萩 | 2013年6月22日 (土) 21:28

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