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2013年4月23日 (火)

将棋の「電王戦」でプロが負けた・・・

先週末、将棋のプロとコンピュータとが対決する「電王戦」において、3勝1敗1分けでコンピュータが勝ったという。これに関する色々な記事の中で、昨日の「天声人語」が面白い。

「人間だれしも、相手の名前に萎縮することがある。昔、ある将棋の名人が、名を秘して素人と一番指した。ところがどうしたことか、形勢が救いがたく悪くなった。そこで名人が名を明かすと、相手は急に崩れて負けてしまった▼棋士の内藤國雄さんの随筆にある話を、プロ棋士とコンピューターが戦った「電王戦」の記事に思い出した。実力屈指のA級棋士に勝ったソフトは、そんな物怖(ものお)じとは無縁だったろう。電脳側は計5局で3勝し、団体戦で棋士たちを破った▼A級の三浦弘行八段を負かした「GPS将棋」は、東大チームが手塩にかけた。三浦さんは今期順位戦で羽生善治三冠に唯一の黒星をつけた強者(つわもの)だが、「どこが悪かったのかわからない」と繰り返したそうだ。棋界のショックも小さくないらしい▼チェスでは16年も前にコンピューターが世界王者を負かしている。将棋ソフトはここ10年で力を伸ばした。近い将来、人と電脳の「頂上決戦」があるかも知れず、わくわくとはらはらが胸中でせめぎ合う▼といっても将棋は、方寸の盤上で斬り結ぶ棋士の人間味が名勝負をつくる。たとえば「静」の大山康晴と「動」の升田幸三。コンピューターが勝っても科学史に記されるべき話で、将棋の魅力をいささかも殺(そ)ぐことはあるまい▼米国では人間の「心」を持つ人工知能の研究も行われていると聞く。さらに進めば、羽生さんの名前に「びびる」電脳も登場するだろうか。面白いような怖いような、科学の日進月歩である。」(2013/04/22付「朝日新聞」「天声人語」から)

改めて、朝日新聞の記事を確認しておくと・・・
A級棋士も敗退 電王戦 ソフトが5局で3勝
 将棋の現役プロ棋士5人と五つのコンピューターソフトが団体戦形式で戦う「第2回電王戦」の最終第5局が20日、東京・千駄ケ谷の将棋会館であり、東京大学の研究者らが開発130423dennou1 したソフト「GPS将棋」が三浦弘行八段(39)に102手で勝った。ソフト側の3勝1敗1分けとなり、人間側が団体戦で敗れた。
 GPSは昨年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝。今回は約680台のマシンをつなぎ、名人挑戦権を争うA級棋士の一人、三浦八段を相手に先攻。攻めをつなげて押し切った。
 人間側は第1局で先勝したが、第2局で現役プロが公式の場で初めてソフトに敗北。第3局も逆転で敗れ、第4局はかろうじて引き分けに持ち込んだ。第4局までのプロ4人は順位戦では下位のC級1、2組に所属。トップのA級棋士との対局が注目されていた。
 三浦八段は今年3月まで戦われた今期順位戦で羽生善治三冠(42)に唯一の黒星をつけ、羽生三冠のA級連勝記録を21で止めた。1996年には当時の羽生七冠から棋聖を奪った。猛勉強家として知られ、終盤の読みの正確さにも定評がある。
 終局後、三浦八段は「どこが悪かったのかわからない」と繰り返し、「GPSが強かった。勝てなくて申し訳ない」と語った。
 GPSを開発した東大の金子知適(ともゆき)准教授は「トッププロとの対局は貴重な機会。最高の将棋にしたいと思っていた。勝敗の実感はない。コンピューターが事故なく動いたのでホッとしている」と話した。
 ソフトはこの10年で実力が急上昇した。形勢判断の手法が進化し、開発者の競争も激化。第5局のようにたくさんのマシンをつなげることで読む手数を増やす技術や、いい手と判断すればより先まで読む技術なども確立された。
 電王戦は、「ソフトがどれだけ強くなったか証明したい」という開発者側の声と、「将棋に注目が集まれば」という日本将棋連盟の思いが一致して始まった
 連盟の谷川浩司会長(51)は会見で「プロにとっては厳しい現実を突きつけられたが、これからの棋士生活にプラスにしてほしい」。第5局立会人の田丸昇九段(62)は「コンピューターから学ぶことも大事。未知の局面に挑むコンピューターからまだまだ新しい技術、可能性があると学んだ。コンピューターとプロが互いに切磋琢磨(せっさたくま)していけばいい」と話した。
 コンピュータ将棋協会の滝沢武信会長(61)も「ソフトがプロのところまで到達したとは思っていないが、近づいたなという思いはある。プロには真剣に対局していただき、ソフトのさらなる進歩につなげたい」と語った。
 チェスは97年に世界王者がソフトに敗れた。ソフト開発は今も続き、選手はソフトを利用して腕を磨く。将棋も「人間とコンピューターが協調して真理追究や普及に生かすべきだ」との指摘がある。局後の会見で、対局した棋士たちも「練習用ソフトとして活用していきたい」と語った。
 対局をネット中継した「ニコニコ生放送」の運営会社が今回の主催者。計5局の延べ視聴者数は200万人を超え、将棋番組のライブ配信史上最高を更新した。タイトル戦にも匹敵するような好反応を受け、同社は第3回の開催に意欲的だ。」(
2013/04/21付「朝日新聞」p38より)

この記事は示唆に富む。
「電王戦は、「ソフトがどれだけ強くなったか証明したい」という開発者側の声と、「将棋に注目が集まれば」という日本将棋連盟の思いが一致して始まった。」ということらしいが、この話題性から言って、少なくてもそれぞれの目的は果たせたのではないか・・・。
それにしても、三浦弘行八段の「どこが悪かったのかわからない」という言葉が正直だ。つまり、今回のソフトは、小手先で勝ったのではない、ということ。堂々と勝った。
しかし、コンピュータ側は、680台(正確には679台)のマシンをつないだというから凄まじい。これだけのコンピュータを一緒に動かす技術もすこい。スーパーコンピュータまでは行かないにしても、コンピュータの総力をあげた戦いだったことが分かる。
同じ「朝日新聞」2013/04/23付夕刊によると
1秒間に2億手
第5局のGPS将棋は東京大の研究者らが開発した。
対局では、東大駒場キャンパス情報教育棟にある計679台のコンピューターを接続。普段130423dennou2 は学生が授業に使うコンピューターも使い、1台は全体の制御役、3台が詰将棋用。残りで指し手を探索し、それぞれ別の局面を読むよう割り当てた。1台でも1秒間30万~40万手読めるが、今回は多数つないで2億手以上読めるようにした。
開発者の一人、田中哲朗准教授は「台数を増やせば性能はもっと上がる。これまではプロ棋士の定跡を基盤にしてきたが、今後はコンピューターが自分で定跡を作り出して序盤の弱さを克服できるようにしたい」と話した。」
そうだ。

「コンピューターから学ぶことも大事。未知の局面に挑むコンピューターからまだまだ新しい技術、可能性があると学んだ。」というコメントにも納得。つまり、人間が頭で考える以上に、コンピュータは系統的に全てを網羅して考える。よって、人間が思いも掛けなかった妙手を指してくるかも知れない。
それに対しては、“人間は学ぶ姿勢が必要”とは、なかなかの度量だ。

天声人語の「さらに進めば、羽生さんの名前に「びびる」電脳も登場するだろうか。面白いような怖いような・・・」という最後のひと言もまた、何とも愉快だ。そのうち、カメラの目が付いた手が動いてきて、相手の顔色をうかがい、それも含めてコンピュータが指す手を考える・・・ナンテ考えると、ゾクゾクするね。
将棋が全く分からない自分も、何か面白く読んだ「電王戦」のニュースであった。

130423shiken <付録>「ボケて(bokete)」より


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コメント

プロが勝った最初の対戦とプロがはじめて負けた2番目の対戦は用事があって見られなかったのですが、あとの3つの試合は朝からパソコンをつけっぱなしにして観戦しました(ニコニコ動画で放映)。コンピュータは強いですね!3番目の試合などは、プロが優勢で勝ちになったというところから逆転されてしました。今後、将棋ソフトはどんどん進化していきますから、現在がプロが互角に戦える最後の機会かもしれませんね。一昨日のNHK「情報まるごと」に三浦八段が登場して、コンピュータとの戦いを振り返っていましたが、「怪物」と戦っている印象だったと言っていました。羽生さんもこの番組で、コンピュータに勝つためには、将棋を1年間対局を休んで、コンピュータ将棋を研究するぐらいでないと駄目だというコメントを残していましたよ。

【エムズの片割れより】
駒の動きが読めるとはウラヤマシイ・・・。
自分は、30年も前、小2の息子に負けてから、足を洗いました・・・

投稿: KeiichiKoda | 2013年4月26日 (金) 11:13

上のコメントへの追記です。NHK杯戦、名人戦、竜王戦のBS放送などは欠かさず観戦していますし、最近はそれ以外の棋戦のタイトル戦も棋譜がインターネットでリアルタイムで提供されているので、棋譜を通じて観戦していますが、大部分の将棋ファンにとってプロの将棋は難しくて、解説者に解説してもらってはじめて形勢判断がわかり、指し手の意味がわかるのではないでしょうか?私は日ごろはJリーグの試合は見ないのに、ワールドカップが近づくとにわかファンに変身するサッカーファンにすぎませんが、そういう意味では私の将棋の理解だってサッカーとたいして違いがあるわけではありません。サッカーは解説者の解説がないと、選手の動きや監督の采配の意味は分からないという点では一緒です。「ニコニコ生放送」では朝からプロの棋士とアシスタントがついで解説にあたりました。4月にはいってはじまった名人戦もBSプレミアム放送とは別に「ニコ生」でも放映されているので一度観戦されてはいかがでしょうか?ところで、本日(4月27日)の日経の朝刊の文化欄には「将棋界、電脳時代の妙手は」というタイトルで、先日の電王戦の記事がありましたが、ごらんになりましたか?

【エムズの片割れより】
日経の記事、読みました。確かにこれからは、電脳はヌケのないあらゆる手を計算して検討しますが、人間は効率的に部分部分の検討。よって、そのスキマの妙手を電脳は指してくるでしょうね。
棋譜が読めると楽しめますね。羨ましい・・・。

投稿: KeiichiKoda | 2013年4月27日 (土) 08:55

朝日新聞の「1台でも1秒間30万~40万手…」は間違いですね
700台でも1台の26倍くらいのNPSにしかなりませんから
1台でも1000万手/s以上読めます

【エムズの片割れより】
そうですか・・・。何とも・・・

投稿: Name | 2013年5月 1日 (水) 10:12

将棋プロとコンピュータソフトとの対戦でコンピュータが勝ったというニュースはいろんな方面で取り上げられているようですが、昨日の日経新聞の経済教室にこんな記事(国立情報学研究所の新井紀子氏)がありました。「・・・確かにコンピュータはひらめきを持ち合わせていないので、指し手を選ぶには合理的基準が必要になる。どの指し手がどんな結末もたらすのか、しらみ潰しに調べ始めると、探査すべき指し手はあっという間に全宇宙の観測可能な原子の数を超える。どれほどハードウェアの性能が向上しても効率的な探索は不可能だと考えられていた。しかし、その予想は覆された。予想を超えてハードウェアが向上したからではない。「データ」と「機械学習」という手段を将棋ソフトが手に入れたからである。公開されたプロ棋士の対戦の棋譜(データ)を基に、プロ棋士が選んだ指し手こそ価値が高いと認識し、さらにその評価を少しずつ自動的に調整する(機械学習)プログラムの登場である。機械学習技術を用いて飛躍的に精度が向上した分野には機械翻訳、画像認識、音声合成などがある。機械学習の特徴はコンピュータはなぜその判断がただしいかの根拠を知る必要がないという点にある。過去に下された「正しい判断」を模倣すればよいのだから。・・・」いつだったか(10年ぐらい前だったか?)NHK杯戦将棋の解説にあらわれた米長さんが、将棋は中盤が難しい、押したり引いたり、形勢を判断するのに明確な基準がないので、この能力をコンピュータが簡単にマスターできるとは思えない(したがってコンピュータがプロ棋士に勝つのはまだまだ先のことだ)という意味の発言をしていたのですが、コンピュータはこの難問はハードウェアの性能の向上ではなく、「機械学習技術」によって乗り越えていたのですね!

【エムズの片割れより】
なかなか勉強になるコメント、ありがとうございました。この記事は見落としたようで、読んでいませんでした。しかし実に的確なご指摘ですよね。強いソフトは、人間が命を吹き込んだ“電脳”なのですね。

投稿: KeiichiKoda | 2013年5月 2日 (木) 11:04

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