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2012年7月13日 (金)

「あの世で父を殴りたいです」

いつもユニークな切り口で回答する朝日新聞の人生相談「悩みのるつぼ」。先日こんな相談が・・・・・。

<悩みのるつぼ>より~「あの世で父を殴りたいです」
<相談> ~相談者:主婦 90代  
あの世で父を殴りたいです
 私は90歳あまりですが、主人もまだ元気です。この世もしばらく続くと思いますが、あの世でもし父と会えるなら、大げんかがしたいのです。横面を張り倒し蹴っ飛ばしてやりたい。
 長女の姉は父に似て美しく、私は色白ですが、丸々太っておたふくづらでした。父は私の顔をけなし、姉をほめ、修学旅行の大勢で写った豆粒ほどの顔を見て、鼻の低いのがわからなくてよかったねと言いました。
 私が一番傷ついた言葉は、夫とけんかして離婚したいと帰宅したときの言葉。たった一人の男の機嫌もとりきらないのか。女郎は一晩5人も10人も手玉にとって、お前は女郎以下だとどなられたことです。親に口ごたえできない時代でした。経済力のない私は家に帰るより仕方ありません。結婚時は「死んでも家の敷居をまたぐことは許さん」と両親に言われたのに、病気したとかケガしたとか言って手伝いを頼む。いやでも家の敷居をまたぐじゃないか、そうしなければ手伝いはできん。
 この年になるといろいろな悔しさが思い出され、夜も眠れません。6人きょうだいで一人生き残り、今年は誰の何回忌とか、私一人でしています。もし死んで父にあったなら、大げんかしたいという思いだけは持っています。一回たたき返したい。男だから力では負けるけれど、蹴っとばしてやりたい。こんな感情おかしいでしょうか。

<回答> ~回答者:経済学者 金子勝
生きる希望を与えられている面も
 あなたは父親に器量が悪いと言われ続け、二度と敷居をまたぐなと言われたのに病気やケガのたびに呼び出され、結局、最後まで生き残り親きょうだいの法事をしてやっています。
 怒って当然です。
 ただ一般に、人は年をとるにつれて枯れていき、人を許すようになるものです。ところが、あなたは逆に90歳になってから、あの世で会ったら父親の横面を張り倒してやりたいと、悔しさで夜も眠れないと言います。
 復讐(ふくしゅう)の気持ちは、どんな苦境でも生き抜く力を与える感情です。もしかしたら、その感情はあなたの生命力の証しなのかもしれません。
 有名な復讐劇に巌窟王(『モンテ・クリスト伯』)があります。船乗りのエドモン・ダンテスは、無実のまま14年間も投獄され、獄中で知り合ったファリア司祭に学問を教わり、秘宝のありかを教えられます。
 ダンテスはそれを元手にモンテ・クリスト伯爵となり、自分を陥れた人々につぎつぎと仕返ししていきます。恋人メルセデスを奪ったモルセール伯爵(漁師フェルナン)を死に追いやり、彼を陥れたヴィルフォール検事総長(検事補)の気を狂わせ、そしてダングラール男爵(会計係)を破産に追い込みます。
 しかし、この物語は最後で救われます。彼の釈放を嘆願してくれた船主のモレルを助け、その息子マクシミリアンと仇(かたき)のヴィルフォール検事の娘が恋に落ちると、その2人を結びつけてあげます。
 そして、最後に手紙を残して去っていきます。その中で、モンテ・クリスト伯は「マクシミリアンさん、生きることのいかに楽しいかを知るためには、一度死を思ってみることが必要です」と書きます。そして「待て、しかして希望せよ!」という言葉を贈ります。
 あなたは親きょうだいをすべて失い、その法事をしてあげています。その中で、自分を邪険にした父親への怒り(復讐)の気持ちを持ち続けることで、実は生きる希望を与えられているのです。
 ずっと先に、あの世でお父様とお会いしたら、お父様のことですから、きっと「ありがとう」とは言わないでしょう。でも、「ご苦労だったな」くらいの一言はかけてくれるに違いありません。そしてモンテ・クリスト伯がしたように、結局は復讐を思い止まるのではないでしょうか。
 待て、しかして希望せよ。もっと長生きしてください。 」(2012/07/07付「朝日新聞」b10より)

これを読んで、心当たりのある方が居られるかも・・・・
自分の場合、本人が今更言うのも何だが、反抗心旺盛だった子供時代の自分の、親父に対する憎しみ・復讐心は、それはそれはすごかった・・・。子供のころによく思った。「少なくとも親父の正反対の人間になろう」。それほど自分にとって親父は「尊敬」にほど遠い存在だった。

でも今は、「あの世で父を殴りたいです」とは思っていない。
結婚して子どもが生まれた頃、あるピンチに陥り、田舎の親父にだいぶん助けられた事があった。「戦争の時を思えば、すべてはたいしたことではない」とも言われた。
それ以来、親父に対する気持ちが変わった。長い人生、そんなもの・・・・。復讐なんて、まあそんなもの・・・。

それにしても、この相談者は元気だ。回答者ではないが、90歳にしてこのエネルギー・・・・
自分もトシと共に“怒り”の気持ちが衰えて行くのを感じる。仏教ではないが、仏の心は老いの心(静かな)かも知れない。
それに対して、この女性は羨ましい。あの世での“目的”がある。つまり死ぬことは、この女性にとって敗北ではなく、新たなスタート、チャレンジなのである。
なるほど・・・。自分も先に亡くなった誰かを殴り飛ばす目的を持ったなら、仮に医者から死の宣告を受けたとしても、それは新たなるスタートで「ヨーシ、いよいよ死んだらヤツを見付けて殴り飛ばしてやるんだ~・・・」とワクワクする??
何かヘンだけど・・・


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コメント

あの世で父を殴りたい、90歳の女性の気持ち分かる様な気がします。社会環境が、まだ家長制度、しかも公娼が居て、御めかけさんが普通の時代、時には、本妻とお妾が同じ屋根の下で暮らすようなこともあった時代、当主は、男尊女卑の典型みたいな人がいたのですね。
同じ血を分けあった親子兄弟でも世間の風潮に押されて心にもない悪口雑言を浴びせられたのかと思います。
此の方は、その後大過なく人生を送られ若い時の屈辱を忘れることが出来なかったのですね。
我が父も決して子供には良い父でなく、母にも女性問題で悩ませましたが、葬儀は出してくれました。
早、鬼籍に入った兄弟が多く、父の事を語る相手も無く、我が風貌が父に似てきたこと、などで現在は「父母恋し」です。
先年、妻にも先立たれ、幸せで無かった妻にあの世で蹴飛ばされ、殴られて当然、逝くことは怖くは有りません。
早く逝ってこの慙愧の念を払拭したいものです。
前出の90歳の主婦の方、どうぞ私を蹴飛ばして、殴ってください。
心よりお願い申し上げます

【エムズの片割れより】
まさに人生の年輪を感じさせるコメントをありがとうございます。
人は、子供を育て、人それぞれの色々な苦労をして、そして相応の年齢に達したとき、どう考えるか・・・。
自分の場合は、何とか、すべてを許す、許される、そんな気持ちに達してから死にたいと思っていますが・・・

投稿: みちとうし。 | 2012年7月14日 (土) 01:46

 拍手 (’-’*)
 この年齢になっても 忘れることの
 できない。許せないこと。
 
 あの世に行きこのくそ爺さんに会った
 時には
 おうふくびんた
 けり
 そのほか
 思うぞんぶん !!応援します。

【エムズの片割れより】
ホホホ・・・。何とも威勢が良いこと・・・
自分もあっちに行ってから、こうされないように、今のうちに頑張らないと・・・

投稿: とし子 | 2012年7月14日 (土) 19:31

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