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2011年1月 5日 (水)

映画「武士の家計簿」を見る

先日、森田芳光監督の映画「武士の家計簿」(これ)を見た。この映画は、内容と言うより、森田芳光の作品だから見た、というのが本音。あまり監督を意識してない自分も、森田芳光という監督は、映画「それから」(ここ)&(ここ)以来、意識している。
「家族ゲーム」や、彼(か)の「失楽園」(ここ)も森田芳光の監督。

100105bishinokakeibo 映画は、江戸時代末期、加賀藩の「御算用者(経理係)」の家柄である猪山家の物語。膨れあがった家の借金の返済に、思い切って家財全てを売り払ったり、藩での米の横流しを摘発したりして、持ち前のソロバン感覚を武器に出世していく。
そして息子の英才教育。そして幕末の動乱に巻き込まれ、息子はソロバンの腕を見込まれ、新政府軍の会計職に抜擢されて、重用されていく。(写真はクリックで拡大)

この物語の背景が、「偶然古書店で発見された猪山家のホンモノの家計簿」、と聞いていたので、たぶん物語も事実に近いのだろうと、興味深く見た。そして、なるほど・・・と。
物語は下級武士の日常を描いているので、決してドラマチックなものではない。しかしチャンバラが全てではない現実の武士の世界を垣間見る事はできる。
一番のクライマックスは、新政府軍の大村益次郎から言われるシーンかな・・・、と思った。「命を投げ出す兵隊は幾らでも居るが、これからは補給(兵站)が重要。兵隊の食糧やワラジの補給が出来るのは、君しか居ない・・・」
父親との「“そろばんバカ”にはなりたくない」という葛藤が、やっと晴れた瞬間だ。

キャストは、皆、実にフィットしていた。特に妻役の仲間由紀恵が光る。それに松坂慶子のとぼけた可愛い母親・おばあちゃん役、中村雅俊、西村雅彦の夫婦のそれぞれの父親役、それに品のある草笛光子のおばばさま役。どれも、はまっていた。特に30年以上前の、自分が若かったときの“憧れの君”だった松坂慶子が、最近は“堂々と育って(?)”、顔にひとかけらのシワもない・・・。何とも・・・・。
そして主役の堺雅人だが、先日見た「ゴールデンスランバー」もそうだったが、この人の表情をどう捉えるのかが難しい・・・。つまり、いつも見せる微笑みの表情(の評価)が難しい・・・。
それに堺雅人・仲間由紀恵の晩年の老け役は、やはり違和感があった。これは仕方がないが・・・。

インドのカースト制度ではないが、江戸時代の“お家芸”の話もこの映画の重要な要素。剣術の家に生まれた子どもは、代々同じように剣術で藩に召し抱えられ、この猪山家のように“ソロバンと筆”がお家芸の家は、代々ソロバンと筆を武器に藩に仕える。よってお家を継ぐために、自分の跡継ぎとするべく、子どもの時から英才教育を施す。それがお家の維持には必須なこと。
そんなシーンから、「お家芸」もその技術を代々受け継いでいく仕組みとしては、意味のある制度だったように感じた。

チャンバラが出てこない時代劇、としてPRされた映画だが、それもなかなか良い。確かに盛り上がりには欠けるかも知れないが、この映画に何を期待するかだ・・・。
自分にとっては、武士の世界の日常を淡々と表現したオトナの物語、と写った。まあ何度も見る映画ではないが、なるほど・・と思った映画だった。


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コメント

私もこの映画見ましたよ。
とてもユーモラスな描き方をしていましたね。
森田芳光監督の作品では「椿三十郎」を見ましたが、何だか映画の作りにラップを感じました。
今、映画の元になっている新潮新書の「武士の家計簿」を読んでいますが、数字が克明に出ています。どうも私は数字に弱いので強い人には最高に面白いと思います。

【エムズの片割れより】
さすがに「椿三十郎」は見ていません。自分は「それから」が最高ですね。何度見たことか・・・。
あの家財全部を売った時の借金は、今のお金で幾ら位だったのでしょうね?

投稿: 小父さん | 2011年1月 7日 (金) 21:23

私も暮れにこの映画を見ました。
NHKの番組「爆笑問題ニッポンの教養」に原作者の磯田道史茨城大准教授が出ておられて、この映画のもととなった古文書についてのお話などをされていました。とても面白かったです。
はっきりした記憶ではありませんが、家財を売った金額は現在の価格で1千万円以上?と言っていたと思います。それで借金の半分近く返済したとか・・・。
この時代の武士は、出世するほど家計にかかる費用はかさむと。親戚づきあいからいろいろとで・・・。そんなお話を聞いて、見てみたいと思いすぐさま観に行きました。(映画を観たのは久しぶりです。)
上記のNHKの番組は、オンデマンドでみられるようです。

【エムズの片割れより】
家財道具を売って1千万円ですか・・・。自分のウチには、到底そんなには無いけど・・・
面白い情報をありがとうございます。

投稿: ジャン | 2011年1月10日 (月) 00:16

映画の感想を述べていなかったので・・・。
女性の目から見た感想、気になった点となるかもしれませんが、
家での食事場面は、膳や道具・食事内容・所作等にいろいろな思いを起こさせた。そんな家庭で起きた借金地獄に、家計建て直し計画。世間の目を気にする父や、大事な着物を手放したくない母、そんな姿をうまくとらえている。質素倹約の家計に転換。
映画のなかで興味深かったのは、お弁当の場面。立派な弁当箱に人も羨むようなお弁当を作ってもらって持って通っていたのが、竹皮にサツマイモを蒸したものだけに変わっていくさま。弁当の内容もさることながら、弁当箱すら売り払ったのかと。
夫たちの楽しみな囲碁、立派な囲碁盤から一枚板の盤に、そして貝殻を碁石に、これにはなるほど細かい演出。
それと、最初から画面に映った家具調度が随分いいもの、立派な品ばかりだと思ったこと。あの位の下級武士で、あんな立派な調度品(黒漆金蒔絵や梨地蒔絵の品々)があの様に沢山あることにもビックリ。そこで、あんなに立派な調度品一式並びにお衣装なら中古でも1千万位になるものなのか?と。
また、お母さまが最も大切にしていた加賀友禅の着物が、売り払って何年も経つのに古物商の売り物にあったのは偶然だったのか?そんなことがあるのか。そして、それを嫁が買い戻し臨終の母の枕元に。物語としては美談として成り立つが、年月が経ちすぎ、ちょっぴり不思議、無理があるかなとも。
有り得ることだろうなと思う場面も多々あり、武士を描いた映画としては今までにない経理方の内容の上、江戸末期の武士の家の実情を描いた点で、とても興味深い映画で面白かったです。
150年強位前のことでしょうか、考えてみれば私共のひいじいさんの生まれた頃ですよね。遠いような、でも近いような時代です。
こうした下級武士や庶民の書き残した資料が多く残っているのは日本だけのようです。このような資料から、映画が出来たのが面白い。

【エムズの片割れより】
なるほど・・。一つひとつ、心当たり有り。
日本で資料が多く残っているのは、世界一の識字率のせいかも・・・?

投稿: ジャン | 2011年1月10日 (月) 13:23

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