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2010年8月 7日 (土)

NHKスペシャル「封印された原爆報告書」を見て

毎年8月に入ると、原爆や終戦にまつわる番組が色々と放送される。そして毎年NHKスペシャルでは、よく新発見資料に基づく番組が放送される。
昨日(2010/08/06)放送されたNHKスペシャル「封印された原爆報告書」(これ)を見た。
NHKの番組解説にはこうある。
「アメリカ国立公文書館に、181冊1万ページにおよぶ「原爆被害の実態を調べた報告書」が眠る。まとめたのは、総勢1300人に上る日本の調査団。しかし、報告書はすべてアメリカへと渡っていた。なぜ、貴重な資料が被爆者のために生かされることなく、長年、封印されていたのか? 被爆から65年、番組では報告書に隠された原爆被害の実相に迫るとともに、戦後、日本が被爆の現実とどう向き合ってきたのか検証する。」

ナレーターは言う。「調査の対象となった被爆者は2万人。治療はほとんど行われず、原爆が人体に与える影響を徹底的に調べていた。報告書は日本人の手で英語に翻訳されていた。被害の実態を調べた貴重な記録は原爆を落とした国、アメリカに渡されていた。浮かび上がってきたのは被爆者の救済よりも、アメリカとの関係を優先させていた日本の姿です。被爆者のために活かされることの無かった報告書。今明らかになる原爆調査の実態です。」

調査を指揮した陸軍省医務局。原爆投下の2日後に広島に調査団を派遣。まとめられた「原子爆弾に依る広島戦災医学的調査報告」。被爆して亡くなって行く様子を調査。被爆者は、まさにモルモット・・・。
アメリカ調査団が到着すると直ぐに、日本側から調査報告書を提出したいという申し出があったという。自ら進んでアメリカに報告書を提出した陸軍省医務局幹部。
当時の陸軍軍医少佐(94歳)はこの番組で証言する。
「いずれ要求があるだろうと、その時はどうせ持って行かなくてはならない。早く持って行ったほうが心証がいいだろうと」
「心証を良くするというのは何のために?」(沈黙・・・)
「731(部隊)のこともあるでしょうね」

報告書の中には、当時アメリカが最も必要としていたデータも含まれていた。原爆がどれだけの範囲にいる人を殺すことが出来るのか。対象となったが17000人の子供たちだった。同じ環境にまとまっていた子供たちの死亡率が貴重なサンプルとなった。爆心地からの距離と死者の割合を示す「死亡率曲線」。それがその後のアメリカ核戦略の礎となった。そしてこのデータによって、モスクワ6発、スターリングラード5発、というシミュレーションが行われた。
その研究を引き継いだジェームズ・ヤマザキ氏は言う。「革命的な発見でした。原爆の驚異的な殺傷能力を確認出来たのですから。アメリカにとって極めて重要な軍事情報でした。まさに日本人の協力の“賜物”です。貴重な情報を提供してくれたのですから」

そのデータを見た被爆者は、友人達の死が日本人の手によって調べられ、アメリカの核戦略に利用されていた事を初めて知って、ひと言・・・。「バカにしとる」・・・

そして日本人医師は、被爆者に対し、治療には関係のない投薬を行い、その影響の検査を毎日行っていたという・・・・

何ともやりきれない気持ちでこの番組を見た。透けて見えてくるのは、同胞の死を踏み台にした軍部医務局の保身。
特に子供たちの、爆心地からの距離と死亡率とをグラフにした「死亡率曲線」について、「日本人の協力の“賜物”だ」とのアメリカ研究者の発言に衝撃を受けた。
この“協力”は軍部の調査について言ったのだろうが、最初自分は、“原爆の死”そのものを“日本人の協力”、と思ってしまい、深い憤りを覚えた。
でも結果として、アメリカにとって日本人の原爆の死は、まさに“核戦略への協力”そのものなのである。
敗戦と同時に保身に走る日本の軍、医師団。この保身術によってどれだけの医師が戦犯から逃げられたのかは知らないが、被爆者の苦痛も気にせず、ただモルモットと見て不要な投薬でのデータ取りに何の疑問も持たなかった当時の医師たち・・・。何ともやりきれない・・・

情報の公開によって、段々と当時の事実が暴露されつつある。そこに感銘を受けるような立派な事実は、ほんのひとかけらもない。それが日本人の実態・・・・。

これらの事実を受けて、これからの世代はそれらをどう乗り越えて行くのか・・・。
終戦にまつわる番組は、見逃せない高品質な番組が多いので、毎年楽しみではある。今年は、原爆投下、そして終戦から65年目。戦争を知っている日本人はもう人口の1/4しかいないという。せめてこの夏の期間だけでも、戦争を風化させないために、皆で戦争を見つめようではないか。


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コメント

再放送を今日見ました。
始めの部分を見逃したので知りたいと思い、検索。
こちらのブログに出会いました。

お陰様で、保身の為にアメリカの調査に協力した軍と軍医の存在を知る事が出来ました。

何とも醜い。
人間の醜態。

被爆者の苦しみを痛みと感じない心ない人々は、
もはや人間とは呼べない。
腐った生き物だ。

生きる資格のない連中だ。
神は許さないだろう。

記事の作成、
どうもありがとうございました。

感情的なコメント、失礼申し上げました。

【エムズの片割れより】
同じくNHKスペシャルの「引き裂かれた歳月~証言記録 シベリア抑留~」を見ました。こちらもシベリアで、ソ連の戦略に乗って、早く日本に帰りたいために、同胞を売り、とにかく自分だけ・・・という日本人の姿が生々しく表現されていました。でもその環境に置かれたら・・。誰も非難できません。

投稿: ふくちゃん | 2010年8月10日 (火) 01:41

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