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2009年6月10日 (水)

全盲のピアニスト辻井伸行さんを讃える「天声人語」

今日の「天声人語」は素晴らしい。
話題は、7日に米国のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した生まれつき全盲の辻井伸行さん。曰く・・・

「〈円周率10万けた暗唱〉などの報に触れるたび、人間の底知れぬ能力に圧倒される。今回も驚くばかりだが、審査員には音の差がしっかり届いたらしい。米国の高名なピアノコンクールで優勝した辻井伸行さん(20)だ。
快挙は〈全盲の日本人が優勝〉と伝えられた。ニュース価値はそこにあっても、競演の結果に「全盲の」は要らない。それは奏者の重い個性だけれど、審査上は有利でも不利でもない。勝者が「たまたま」見えない人だったのだ。
録音を何度も聴いて曲を覚えるという。耳で吸収した音は熟成され、天から降ると称される響きで指先に躍り出る。「目が見えた場合」と比べるすべはないが、音色だけ見えているかのような集中は、不利を有利に転じる鍛錬をしのばせる。
師は「驚き以上の感動を伝えるため、彼は勉強を重ねてきた」と言う。全盲ゆえの賛辞は、実力を曇らす「二つ目のハンディ」だったかもしれない。体ではなく、音の個性が正当に評価された喜びは大きい。
20年前、ご両親は「生まれてよかったと思ってくれようか」と悩んだ。やがて、母が台所で口ずさむ歌をおもちゃの鍵盤で再現し、同じ曲でも演奏家を聴き分けてみせた。その才をいち早く見抜いたのは親の愛だ。
かつて息子は「一度だけ目が開くならお母さんの顔が見たい」と口にしたそうだ。母は今、「私に生まれてきてくれてありがとう」と涙する。「できない」ではなく、「できる」ことを見つめ続けたご褒美。世界が「生まれてよかった」と祝す才能は、どれもそうして開花する。」(2009/6/10付け朝日新聞「天声人語」より)

こんな文章を書ける人はどんな人なのだろう? 話題のポイントを網羅し、最後の“「できない」ではなく、「できる」ことを見つめ続けたご褒美。世界が「生まれてよかった」と祝す才能は、どれもそうして開花する。”という文字でキメるわざ・・・・。

おっと、本題は“辻井伸行さん”だった・・・。盲目のピアニストとしては梯剛之さんが有名だが、難曲といわれる曲の楽譜の、ごちゃごちゃした音符を見ながら演奏するのも信じられないが、それを聞くだけで暗譜するというからすごい。手元にあるヴァイオリンと違って、ピアノの鍵盤は遠い・・・・。それをミスタッチ無しで演奏するとは・・・
偶然、先日やはり眼の不自由なヴァイオリニストの川畠成道さんについて書いた(ここ)。日本の眼の不自由な演奏家が、これほど世界的に活躍するとは・・・・。
これらの人は、むしろ見えないがために、内面で熟成された音が出せるのかも知れない・・・。

それにしても、ヴァン・クライバーンとは懐かしい。学生時代以来、キリル・コンドラシン指揮RCA交響楽団との競演による『チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番』を何回聞いただろう・・・。おかげで、自分が聞くチャイコフスキーの“標準”はこの演奏で決まってしまって、それ以来、他の演奏は違和感があるのである・・・。このレコードは1958年発売だという。もうあれから50年も経ってしまった。
しかしあの熱狂の後は、クライバーンの名はあまり耳にしなくなってしまった。でも今回は、TVにクライバーンの姿も映っていたな・・・・。

ともあれ、辻井伸行さんはまだ20歳。まだまだこれからだ。早速新聞にはCD、DVDの宣伝がここぞとばかりに載っているが、それらの熱狂に惑わされず、ぜひ素直に成長して行って欲しいもの。
繰り返すが、今日の天声人語の“「できない」ではなく、「できる」ことを見つめ続けたご褒美。”という言葉には参った・・・・。ご両親も同じく、凡人ではない。


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コメント

辻井さんの優勝、素晴らしいですね。それにしても、天声人語の書き手のことまで思われるとは、エムズの片割れさんの感性には参りました。私など何時も読み流しているだけなのに。
辻井さんのおかげで、クライバーンの名を久しぶりで聞きました。

投稿: かえるのうた | 2009年6月11日 (木) 14:02

本当にクライバーンの名前は耐えて久しかったですね。
コンドラシンも(そしてスベトラーノフも)
懐かしい。かつてモスクワまで聞きにいっていました。

今回の天才ピアニストも凄いですね。
2歳にしておもちゃのピアノを弾いていたと。

投稿: けんちゃん | 2009年6月11日 (木) 19:28

辻井伸行さんの、米国のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝したときのドキュメンタリーはTVで放映されましたね。私もこの番組をたまたま見ていて、非常に感動しました。優勝のインタビューで楽譜はどうやって覚えるのかという質問にたいして、辻さんは曲は耳で聴いて暗譜するのだと答えていましたね。ところで、チャイコフスキーといえば、ピアノ協奏曲が有名ですが、ヴァイオリン協奏曲も非常に有名ですね。最近も、NHKBSプレミアムシネマとして放映された2009年のフランス映画「オーケストラ」という音楽コメディ(ソ連の風刺)とっいってよい映画を楽しく見たのですが、最後の、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏する場面は圧巻でした。詳しくは
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9!
この映画は2015/2/7の1:00-3:04PMにも再放送(字幕付き)されるので、関心のある方はどうぞごらんください。音楽だけでなく、フランス的風刺とはどういうものか知りたい人にも面白いかもしれません。

【エムズの片割れより】
全盲のピアニストと言えば、梯 剛之さんもいますね。梯 剛之さんは、実はウチの息子と、「なみのり保育園」で“同期”。当時、卒園式を撮ったビデオに、梯 剛之さんが卒園証書を貰う場面や、歌の伴奏をしている所があり、まさかこんなに有名になるとは思いませんでした。
「オーケストラ」は自分も録画して見るつもりです。

投稿: KeiichiKoda | 2015年1月31日 (土) 15:40

上で述べた映画「コンサート」の最後の場面はYouTubeにアップされていました。このリンクをご覧下さい(↓)

https://www.youtube.com/watch?v=_UEs0aubxoY

(URLを左クリックして青く塗りつぶしたら、それを右クリックしてください。「Googleで検索」という項目があらわれるので、それでリンクの画面に導かれます。)インターネットの時代なんですね!

投稿: KeiichiKoda | 2015年1月31日 (土) 18:19

NHKBSプレミアムシネマ「オーケストラ」の放映日時は2015/2/6(金)1:00-3:04PMが正しいので、訂正いたます。詳しくは以下のリンクをごらんください。

http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/calendar.html#d20150206_1

投稿: KeiichiKoda | 2015年2月 1日 (日) 06:58

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