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2008年12月 7日 (日)

「要介護」状態の介護保険

今日の朝日新聞「耕論」のタイトルが“「要介護」状態の介護保険”。何とも的を射たタイトルで感心した。いつものように3人の論が展開されていた。わが意を得たりという論なので、少し抜粋してみる。(2008/12/7 朝日新聞P9より)

作家・落合恵子さん~「職員の疲労、受けての命直撃」
「7年間、在宅で介護してきた母を昨夏、見送りました。・・・
・・・求められている仕事の質に比べて、給料は低い、離職者も多い。その結果、サービスの質は低下する。介護は、食べて排泄することを基本に、いかに「される側」に心を寄り添わせていくかという意味で、大変な「感情労働」も求められる。「する側」が疲れ切ったとき、その疲労は「される側」の命を直撃するのです。
・・・
いまは赤字財政で介護や医療をなるべく使わせない動きが出ている。施設への入所が何千人待ちという自治体もある。後期高齢者医療制度で負担が増えるお年寄りもいる。老いそのものが「自己責任」と言わんばかりです。一方、現役世代も生活が苦しい。親もそれを知っているから「長生きしてごめんね」となる。
団塊の世代が高齢化する数年後を考えることも大事ですが、目の前のお年寄りや介護職員の日々を保障できずに将来、何ができるのでしょう。
母の介護と同時に始まった介護保険制度は来春、3度目の報酬見直しを迎えます。命にお金をかけない政治は最悪です。すべてのお年寄りが長生きしてよかったと思える社会と、すべての子供が生まれてよかったと思える社会はつながっています。介護報酬の引き上げ分が現場の労働者に確実に届く改正を期待します。」

ワタミ社長・渡邉美樹さん~「経営の視点持つサービスを」
「05年に本格的に有料老人ホームの経営に乗り出した。・・・・
・・・・
介護付き有料老人ホームが36施設、住宅型が1施設。平均入居率は9割を超え、介護事業の経常利益は約15億円。600店舗以上を展開する外食産業に次ぐ第2の柱だ。
私たちの介護事業の特徴は施設介護に特化し、入居金と月額利用料を収益の要にしていることだ。これらは事業者が決めることができ、介護報酬に左右されない。国の仕組みに頼らない「入居金ビジネス」で利益を上げ、グループ内の社員と同じ水準の給料を介護の社員に保障している。
入居金の平均は貯金や退職金でまかなえる約850万円。食事と管理費を合わせた月額利用料は年金を想定した17万8千円~19万8千円。他におむつなどの実費と介護保険の自己負担分をいただく。
サービスのかぎは外食事業で培ったノウハウだ。・・・・
・・・
介護現場が荒廃した一因は、介護保険の導入でいきなり「民」に市場が解放され、最低限のことをやってあげるという「官」の福祉の発想が受け継がれたことだと思う。
福祉は、例えば食事の介助という「行為」に対してお金が支払われる。おいしくてもまずくても関係ない。それに対し、「サービス」は素材や見た目、歯触りの良さなどの付加価値をつけたおいしさを提供し、お客様の満足の対価としてお金をいただく。経営の視点を持ったサービスに徹することが、結果的にお客様の利益につながる。
国は需要と供給の予測を読み誤った。費用を抑えようとして、介護の危機を招いている。求められるのは、高齢者を幸せにするにはどのくらいのお金と費用が必要なのかという発想で、グランドデザインを描き直すことだ。・・・・
昨年コムスン問題が浮上した時、「介護でもうけるな」という声があった。もちろん不正は許されないが、収益を上げる仕組みがないと新規参入はない。在宅介護は、いまの介護報酬ではできない。・・・
介護費用を抑制するため、介護施設の設置を制限する自治体があるが、20年には高齢者人口は3500万人を超える。社内の試算では、10人に1人が介護を必要とし、うち5人に1人、約70万人が有料老人ホームに入る。
行政は、財政基盤があり人材が確保できる事業者に自由にさせ、きちんとサービスが提供されているかを、余計な口出しをせずに監視すればいい。」

自分で母親の在宅介護の経験をされた落合恵子さんと、居酒屋「和民」に加えて大人気の有料老人ホームを展開中のワタミ社長・渡邉美樹さんの論は、どちらも実践的であるだけに深く頷ける。
同じ記事で、慶大教授の金子勝さんは言う。「背景にあるのは小泉構造改革路線だ。05年~06年の改正は「痛みを分かち合う」「自己責任」の具体化だった。社会保障費を5年間で1兆6千億円削減することになり、厚生労働省は介護保険でも費用の抑制ばかりを追求している。」

先日の元厚生次官襲撃事件で、犯人が「悪いのは政治家よりも官僚」と言っていたが、もしかすると言い当てているのかも・・・。つまり、官僚は(会社でもそうだけど・・)過去の政策が誤っていたと分かっても、絶対にそれを認めない。
しかし介護保険制度でも、このように色々と改善の案はある。テレビの日曜討論ででも、そのうち政治家ではなくて担当の官僚を呼び、落合さんや渡邉さんから改善案をぶつけて官僚に即答してもらったら面白いと思うが、どうだろう・・・。


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