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2008年9月12日 (金)

石井筆子の映画「筆子 その愛」を見て

“障害児教育の母”と呼ばれた石井筆子の映画「筆子 その愛」を見た。ひとことで言うと「つらい」映画だ。娯楽映画としては絶対に成功しない。それはなぜか?「現実」を直視する“つらさ”に耐えられないから・・・。
昨年この映画を見たカミさんは「切ない」という感想を漏らしていたが、自分にはつらい映画・・・。

(石井筆子の人となりを、貰ったパンフから転載)
「幕末、長崎大村藩士の娘として生まれた筆子。その美貌と知性で“鹿鳴館の華”と呼ばれ、(津田塾大学を作った)津田梅子と共に女性の教育と地位向上に力をそそいだ。しかし、最初の夫・小鹿島果との間に生まれた三人の娘はいずれも知的障害や病弱である上、夫を若くして亡くすなどの不幸が筆子を襲う。しかし、筆子は社会活動を精力的に行い、その中で日本初の知的障害者施設「滝乃川学園」の創始者・石井亮一と運命の出会いを果たす。その後、亮一との再婚を決意した筆子は、夫の事業を支える一方、学園の子供たちに無償の愛を捧げ、やがて“障害児教育の母”と呼ばれるようになる。」

一年ほど前、くにたち郷土文化館(国立市谷保)で開催されていた「滝乃川学園~石井亮一・筆子夫妻の軌跡」展に行ったことがある。当blogでも書いた。(ここ

Scan103701 この時に知った映画「筆子 その愛」(これ)を、そのうち見たいな・・・、と思っていた。そうしたら、先日(例の)NHKラジオ深夜便「こころの時代」で「福祉を拓いた女性、石井筆子の愛を語る 映画監督 山田火砂子」(08/9/7~8放送)を聞いた。実は、それがきっかけで、今晩、会社の帰りに、中野で途中下車して、「なかのZERO」で見てきたというわけ。
ここは視聴覚ルームなので席は80席ほど。19時の開始というのに、観客は30~40人ほど。ほとんど初老のかた。若い女性もいたが、若い男性は皆無。
でも山田火砂子監督がわざわざ来られて、挨拶で熱弁をふるっていた。なかなか説得力のあるお話で、なぜこの映画を撮ったかというと「忘れ去られていた石井筆子を、皆の心に蘇らせたいと思ったから・・・」とか。
この映画は、出来てからもう2年になる。最初、劇場で上映したら全く人が入らなかった。それから地道に口コミで上映が続いており、海外でもロスで反響を呼び、今度はロンドンでも上映されるとか・・・。
山田監督は75歳になるという。不自由な足を庇いながら歩いてこられた。山田さんの知的障害をもった娘さんは45歳になり、中野の施設に入っているという。そして言う・・・
「このトシになると娘を引き取っても、とても世話ができない。だから絶対に障害者の施設は必要だ。親が生きているときは何が何でも世話をするが、親が死んだ後は、子供は誰を頼ったら良いのか? 今、刑務所に入っている人のうち、23%が知的障害を持っている人。このカネ・カネの世の中に、障害者が一人で生きて行く方法は無い。だから仕方なく、無銭飲食をしたりして、刑務所に居場所を求める。高齢者も同じだ。それなのに、何だ!今の障害者自立支援法は!・・・・
子供を育てる責任の80%は家庭。学校は20%。それなのに特に高学歴の母親は学校を責める。家庭でも、特に必要なのは母親の慈愛。母親の慈愛さえあれば子供はすくすく育つ。子供が家には帰ってくればまだ良い。家に帰らなくなったら問題・・・」
等々。

「鹿鳴館の華」であった津田梅子と石井(渡辺)筆子。二人にとって決定的な違いは何か? それは筆子が知的障害の子供を生んだこと。もし、筆子の子供が普通の子供だったら、この道を選んだとは到底思えない。これが現実であり、今も同じではないか・・・。自分の子供、または近所に知的障害者が居る人、またはボランティアで施設で活動している等、何か縁が無ければこの世界を見ようとしないのが普通の人。自分だってそうだ・・・。キレイ事ではなく、顔を背けて済むのなら遣り過ごしたい世界・・・・・。
しかし、この現実は存在する。例えそのような人が自分の近所に居なくても、存在する・・・。(統計によると、6.5%の世帯に障害者は居るらしい(ここ))

昨年、福田内閣が発足したときに、自立支援法が改正されるという報道があり(ここ)、ホッとしたものだが、その後どうなった?結局、その時に言ってみただけか?
山田監督は、経済優先の世の無策に嘆いておられた。そしてこの映画で、障害児を育てた自分の体験を通し、障害児教育の大切さを訴えている。まったく無欲な、いつまでも赤ちゃんの障害児・・・

入場券をフト見ると「製作協力券」とある。「この製作協力券1枚1200円が映画の製作資金として充当される」と書いてある。我々も、弱者救済に直接的な活動は出来なくても、“この映画を見ることによって協力する”という手段もある。
見ていて非常にツライ映画だが、この記事を読んで、もし一人でも見に行ってくれる方がおられたら、監督が「お願いします」と言っていた「口コミ」のお手伝いが少しは出来たようで、当サイトとしても嬉しいのだが・・・・。

映画「筆子 その愛」公式ホームページは(ここ)、上映予定は(ここ

(関連記事)
「滝乃川学園~石井亮一・筆子夫妻の軌跡」展に行った
家庭での障害者の率~障害者自立支援法を考える(1)
障害者自立支援法を考える(2)~その問題点と顛末
障害者自立支援法を考える(3)~各党の主張
障害者自立支援法を考える(4)~いよいよ抜本見直しか?

障害児と家族~障害者自立支援法改正はまだか?
知的障害者自立支援の「にじの会」
障害者が働くレストラン「花畑かたくり」(京王堀之内)


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コメント

昨日の映画をご覧になったのですか。
私も先週のラジオを聴いて、昼間の部に行くつもりでしたが、少し遠いので、つい行きそびれてしまいました。
エムズさんが映画だけでなく、この問題について深いご理解とご関心をお持ちになっていることを知り、敬服いたしました。
「自立支援」といっても、親の手を離れたら自立出来ないから問題なので、結局は施設の保護を必要とします。
それには、広く一般の方々のより一層のご理解とご援助が期待されます。
今後とも、なにとぞよろしくお願いいたします。

投稿: toriaezu3965 | 2008年9月13日 (土) 15:24

toriaezu3965 さん

障害者支援について、全く同感です。しかし昨夜、若い女性が何人も来ていたのがせめてもの救いです。

投稿: エムズの片割れ | 2008年9月13日 (土) 21:16

久々にこの映画を拝見し、ぐぐってみたら辿り着きました。突然のコメント失礼しますm(__)m
地道に上映を継続されている山田監督には本当に頭が下がります。今回の舞台挨拶では、次回作「大地の詩」の事もお話して下さいました。また、是非、山田監督・現代プロダクションの作品をご覧になって下さいね。

投稿: yaya | 2010年3月 1日 (月) 22:33

はじめまして。

わたしの住んでいる地域ではこれから上映されます。

母が友人からこの映画のチラシと前売り券を預かってきました。その方はいつもボランティア活動に励み、大切なこと、伝えたいことを伝えることにいつも一生懸命な方です。

チラシを見て、4年前の作品がなぜ今頃?と思いました。
あらすじを読んでも今一つ、この作品の良さが伝わってきません。
でも、母の友人が奨める映画だからぜひ観ようとは思いました。
そして、今日、こちらのブログにたどり着きました。
「切ない」映画、「つらい」映画なんですね。

感動ものをみたい、障害児教育について勉強したい、なんて気持ちを持っていましたが、そうではないことがわかってよかったです。

一日限りの上映なので、ぜひ、たくさんの人に知らせて観てもらおうと思いました。

ありがとうございます。

投稿: ミミ | 2010年5月 6日 (木) 23:05

ミミさん

コメントありがとうございます。BLOGには口コミの機能もあるようで・・・幸いです。
そうですか、まだ上映していましたか・・。
このような映画の上映(=啓蒙)には時間がかかるのですね。逆に言うと、旬が長いということ?いや、テーマが重いという事なのでしょうね。

投稿: エムズの片割れ | 2010年5月 9日 (日) 22:01

私はたまたまある本を読んでいて、筆子が華族女学校でフランス語を教えていたとある記述を見て興味を持ったすえ、このサイトにたどり着き、いろいろな情報をもらい、障害児教育の経歴や、映画化されていることを初めてしりました。日のあたるのを願っています。
有難うございます。

【エムズの片割れより】
日本も、弱者に陽の当たる国であって欲しいですね。

投稿: ルー | 2014年9月 7日 (日) 19:29

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