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2008年9月10日 (水)

純白なこころ・・・「金子みすゞ」の世界

NHKラジオ深夜便「こころの時代」で「魚と小鳥と神様と〜金子みすゞのまなざし 児童文学者 矢崎節夫」(08/9/3~4放送)を聞いた。

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もちろん金子みすゞという名は前から知っていたし、TVドラマを見た記憶もある。しかし、その詩を解説付きでしみじみと味わったのは初めてであった。
Image01641 「金子みすゞ記念館」(ここ)の矢崎館長は、16年位掛かって金子みすゞの詩を探し出して世に出した人。金子みすゞの実弟をやっと見つけて、金子みすゞの手書きの3冊の童謡集を弟さんから託されたとき、世に出ていたのは90編だけだったが、そこに書いてあったのは4年間で作った全512編の詩だった。

Image01531 「大漁」
 朝焼小焼だ 大漁だ。
 大羽鰮(いわし)の 大漁だ。
 浜は祭りの ようだけど
             海のなかでは 何万の
             鰮のとむらい するだろう。

矢崎さんは、この詩を初めて聞いたときに衝撃を受けた。今までの「いわしが大漁でうれしい」というだけの受け止め方に、「食べられる鰮も命だよ・・・」と気付かしてくれた。この詩によって、“生き物たちの命をもらって生かされている”自分に気が付いた。食べる前の「頂きます」という知識が、ストンと分かって“知恵”に変わった。それから「金子みすゞの世界」に魅せられた、という。

金子みすゞは山口県長門市仙崎で1903年(明治36年)に生まれ、20歳のときに同級生が兄の嫁として家に入るのを機に下関の親戚の書店(=上山文英堂~上の写真)に移る。そこで書店の番頭と結婚するが、不仲により26歳で離婚。その数日後、娘が(親権が父親のため)夫に奪われる当日、服毒自殺をする。(上のみすゞの写真は、自殺の前日に写真館で撮ったもの。遺品は3通の遺書とこの写真の受領書だったという)

この番組で紹介された詩とその解説を幾つか・・・

Image01551 「土」
 こッつん、こッつん、打(ぶ)たれる土は、
 よい畑になって、よい麦生むよ。

 朝から晩まで、踏まれる土は、
             よい路(みち)になって、車をとおすよ。

             打(ぶ)たれぬ土は、ふまれぬ土は、
             いらない土か。

             いえいえ、それは、名のない草の、
             お宿をするよ。

ひとつとして無用なものは無い。あなたはあなたで良い、居るだけで良い、という事をこんなに優しい言葉で言ってくれる・・・。

Image01581 「積もった雪」 
 上の雪 さむかろな。
 つめたい月がさしていて。
 下の雪 重かろな。
             何百人ものせていて。
             中の雪 さみしかろな。
             空も地面(じべた)もみえないで。

この詩では、中の雪に気付いている。みすゞさんは見えないものにも優しい。
記念館にこう書いてある。「誰の心の中にもみすゞさんは居ます。あなたの心の中のみすゞさんに出会ってくれると嬉しいです」

Image01561 「私と小鳥と鈴と」
 私が両手をひろげても、
 お空はちっとも飛べないが、
 飛べる小鳥は私のように、
             地面(じべた)を速くは走れない。

             私がからだをゆすっても、
             きれいな音は出ないけど、
             あの鳴る鈴は私のように、
             たくさんな唄は知らないよ。

             鈴と、小鳥と、それから私、
             みんなちがって、みんないい。


(朗読)宮崎美子

「みんなちがって、みんないい」と、誰もが言って欲しい言葉をキチッと残してくれたのがみすゞさん。「鈴と、小鳥と、それから私」と題と順番が逆になっているのは、自分に都合の良い「私とあなた」ではなく、「あなたと私」という視点。

Image01571 「不思議」 
 私は不思議でたまらない、
 黒い雲からふる雨が、
 銀にひかっていることが。
 
             わたしは不思議でたまらない、
             青い桑の葉たべている、
             蚕が白くなることが。

             私は不思議でたまらない、
             たれもいじらぬ夕顔が、
             ひとりでぱらりと開くのが。

             わたしは不思議でたまらない、
             誰にきいても笑ってて、
             あたりまえだ、ということが。

この詩は小学校の教科書にも出ている。小学生に対しては、こう言っている。「“あたりまえ”が素敵なことだという事は大人は皆が知っている。でも、当たり前だと横に置いてしまいがち。当たり前のことをしたら褒めようね・・・」

Image01541 「蜂と神さま」   
 蜂はお花のなかに、
 お花はお庭のなかに、
 お庭は土塀(どべい)のなかに、
             土塀は町のなかに、
             町は日本のなかに、
             日本は世界のなかに、
             世界は神さまのなかに。

             そうして、そうして、神さまは、
             小ちゃな蜂のなかに。

「私の中に、神様も仏様もみんないて下さる・・」。金子みすゞという人は、花を見ても魚を見ても石を見ても、そこに神様や阿弥陀様を感じられる深いまなざしを持っていた人だったのだろう。

お話をされていた矢崎節夫氏は、「一人の人が蘇ると、たくさんの人が幸せになれるんだ、と思う」と言っていたが、インタビューしていたアナウンサーが感激してこう言っていた。「ラジオをお聞きの方も、初めて聞いた方はこんな素晴らしい詩があるのだろうか・・と思われただろうし、みすゞさんを知っている方も、あの優しさを自分の身に付けたいな・・と思うし、子供たちにもこの優しさをぜひ身に付けて欲しいな・・・と思っていまう

金子みすゞは、まさに純白の心で我々に迫ってくる。そして、誰もが忘れかけていた「素直なこころ」「子供のこころ」を呼び戻してくれる・・・


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コメント

金子みすず・・・素朴で大スキです!
わざわざ、特集の現地訪問バスツァーにも出かけてみましたよ~♪
娘が短大受験・推薦小論文選択の際、詩集購入して提供したァ~親バカですが~正解でした!
無事、合格致しましたァ~♪・・・5年前の話ですが懐かしく想い出されて嬉しく思います。

投稿: 花舞 | 2008年9月11日 (木) 19:15

花舞 さん

そうですか~
金子みすゞの詩は、心が洗われて素直になれますね。オジさんでも・・

投稿: エムズの片割れ | 2008年9月11日 (木) 21:01

はじめまして。
私は俳句を始めて3年ほどになります。みすずさんの持つ世界観を、17文字の俳句に置き換えられるよう、日々がんばっています。むずかしいです。

投稿: 呆夢 | 2008年9月14日 (日) 20:56

呆夢さん

コメントありがとうございます。
昨日、金子みすゞの本を買ってきて、みすゞ直筆の文字を見て惚れ直しました。
26歳での他界は早過ぎました。
俳句の世界は分かりませんが、文字数が少ないだけに表現が難しいでしょうね。

投稿: エムズの片割れ | 2008年9月14日 (日) 22:26

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