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2008年6月15日 (日)

第45回ギャラクシー賞 大賞「裁判長のお弁当」を見て

NHK BS2で放送された「ザ・ベストテレビ“全部”見せます グランプリ作品」(08/6/14放送)という番組で、「第45回ギャラクシー賞 大賞「裁判長のお弁当」(東海テレビ放送)」を見た。
NHKで民放の番組が放送されるのは珍しい。今回は、この1年にNHK・民放を問わず、日本を代表する7つのTV番組コンクールが、最優秀と推したドキュメンタリー番組を集めたのだという。
最初に放送されたのが、「裁判長のお弁当」というドキュメンタリー番組。だいたい「ギャラクシー賞」というのを、自分は知らなかったが、これは「日本国内のテレビ番組作りの最高の栄誉となっている」そうである。そして、第45回の作品は、ほんの先日(2008/6/3)発表になったばかりとのこと。

「裁判長のお弁当」という作品は、予想に反して許可された“裁判所の向こう側”の取材。「裁判所も変わろうとしているのか・・・」とナレータ。そして半年の取材。場所は名古屋地裁・・・。
密着取材は、じゃんけんで負けた名古屋地裁刑事1部 天野登喜冶裁判長(56歳)。しかし取材を始めて困った。裁判官室は、毎日単調で、何の変化も無い。3人の裁判官は、法廷以外は、ただただ机で、黙々と記録を読み、判決文を考えてワープロに向かうだけ。取材する画面で変わるのは毎日2回(昼食と夕食)のお弁当だけ。だらか“象徴”がお弁当になった、という。
それについて、番組放送後にプロデューサ阿武野勝彦氏が(取材されて)言う。「市民にとって裁判官は離れた存在。それを身近なものとして感じられたものは、我々が見つけた“弁当”だった」。それで画面に毎日の弁当が登場する。非日常的な唯一のものとして・・・

裁判官の日常は、出来るだけ地域との関わりは避けるという。もし親しくなった人が被告人になったら・・・。その可能性があるからだという。だから、世間の感覚から離れる事があるという。例えば、「なまちゅう」が分からなかった・・。

もう一人の取材は、元裁判官 下澤悦夫さん(65)。昨年、裁判官を定年退職して、やっと自由にものが言える立場になった。
判事の世界は、人事権を握っている最高裁を頂点とするピラミッド。その構成は、①最高裁(15人)、②高裁長官、地・家裁所長(84人)、③高裁裁判長、地裁裁判長(398人)、④地裁・家裁・支部裁判官(2038人)。そのなかで、下澤さんは若い頃、「青年法律家協会」に所属し、退会・退官勧告に従わなかったので、地方を転々と転勤させられ、定年まで一裁判官で終わったという。

しかし裁判官の仕事量の多さ。地裁の事件数は倍増し、弁護士もそれなりに増えているが、裁判官は増えていない。それは国の予算が限られているため。天野裁判長が同時進行で抱えている裁判は、06年度1年で新たに400件の裁判が持ち込まれた。
裁判官の評価は、こなした判決の数で決まるという。だから裁判官は、残業・休日出勤は当然で毎日忙しく、判決の質も低下しているという。もちろん、現場に行っている時間も無い・・・。
年間160万件の刑事裁判の有罪率は99.9%。裁判所は、検察庁から送られた資料と法律のみにより判断するしかない。それが仕組み。この事は、前にこのblogでも書いた(
ここ)。

元裁判官 下澤悦夫さんが言う。「裁判官というのは、情に流されない。浪花節になったりウェットになるのには批判的。法律家というのは、冷静であり客観的であるべき」
番組最後のナレータ:「初めてTVカメラが映し出した裁判所。そこには弱音を吐くこともできず、膨大な事件を裁き続ける裁判官の姿があった」

自分もまさに初めて裁判官の日常を見た。昔、NHK特集で「最高裁判所」という作品があったが、この作品はナマの裁判官を扱っている。
法曹のうち、弁護士は普通の市民とまったく同じであり、特に尊敬する対象ではないと思っているが(これだけは自信を持って言える)、検察官と裁判官は分からなかった。まさに壁(日常の市民生活)の向こう側。

来年(H21年5月)、裁判員制度が始まることもあり、このようなTVドキュメンタリーとして(市民感覚から遠い)裁判官の世界を国民に開くのも意味があるな・・とも思う。次は、検察官の世界をドキュメンタリーとして見たいものだ。

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映画「それでもボクはやってない」を観て


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