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2008年2月23日 (土)

映画「胡同(フートン)の理髪師」を見て

神保町の岩波ホールで上映中(~08年3月下旬まで)の中国の映画「胡同(フートン)の理髪師」を見た。(公式HPはここ

Image00481 何とも、人畜無害というか(失礼)、平和な映画である。北京の紫禁城近くにある細い路地、胡同(フートン)に住む93歳の現役理髪師チンさんの物語・・・(というよりドキュメンタリー)である。
チンさんは実在の人物で、もちろん役者ではない素人。一介の職人を劇映画の主役として起用するのは非常に珍しいという。
映画を見ても、素人っぽさは全く無い。それは、誰かを“演じて”いるのではなく、単に自分自身の生活だから。

最初から最後まで出てくる(一日5分遅れる)古い振り子の時計が、この物語の時間経過を表す。いわゆる独居老人が住む胡同(フートン)。チンさんの息子は、既に年金暮らしの貧乏人。金が無いので自分の持病の薬も買えない。黙って金を渡すチンさん。
それと対照的に、成功して高級住宅に住む息子の居るチャオさん。フートンに放って置かれたチャオさんを、近く区画整理されて7,80万元入る事を知った息子が自宅に引き取る。でもチャオさんは元のフートンに戻りたくて、伸びたヒゲを剃らせない。仕方なくチンさんを車で迎えに行って、理髪を頼む・・・・。チンさんと再会出来て喜ぶチャオさん。それを、汚いものでも見るように・・・、不機嫌な嫁さん。

チンさんの毎日は、朝6時に起きて午前中は出前の理髪。午後は近所の仲間とマージャン。そして9時には寝る。
その仲間も順番に逝く。そろそろ自分の番かと、準備をするチンさん。葬儀屋に電話で手続きを聞くと、略歴500字を用意しろと言われる。カセットを前に、自分の生まれてからの歴史を一人録音するチンさん・・・。(でも、そのテープは猫がじゃれてバラバラに・・・)

身分証明書の交換を知らせに来るワン主任:「偽造防止の20年有効のものに変えるの・・・」。
チンさんが猫に言う:「聞いたかい?20年有効だって」(映画の会場から笑い声・・・)
・・・・・・
新しい身分証明書を持ってきたワン主任:「・・・驚いたわ、身分証明書を見たら1913年生まれ、92歳だったなんて。・・・いつか長寿の秘訣を委員会で発表して!」
チンさん:「別に秘訣なんて。年を取ると誰もが死を恐れ、生に執着し、不眠になるが私は違う。恐れないし、執着もない。すぐに眠れる」・・・

ラストシーンがウィットがあって良い。
必ず6時に起きるチンさんだが、6時に時計のチクタクが遅くなって止まる・・・。朝日が入る部屋。息子が訪ねてくる。「父さん。父さん」。シーンとした室内に入ると、机の上にチンさんが準備した遺影・・・。ハッとする息子・・・。
・・・・と「何か用か?」というチンさんの声・・・

映画館内に、ホットしたため息・・・。(これは見事!)

帰ってカミさんに700円で買った「胡同(フートン)の理髪師」のプログラムを見せると、チンさん役の「チン・クイ」さんの言葉が気に入ったと言う。
「ごあいさつ 私は初めて外国である日本に来ることができて、とても嬉しく思います。
たまたま「胡同の理髪師」に出演したお陰で、私が生きた証を子孫に残すことができました。
私が皆さまにまずお伝えしたいのは、親御さんを大切にして下さい、ということです。
人生はよいことをしても、悪いことをしても、一回きりです。お金があっても、子孫に遺すだけであって、あの世に持っていくことはできません。ですから、怒ることなく、人に親切にしてあげて下さい。そうすれば、人も親切にしてくれて楽しく過ごすことができ、長生きすることができます。そして、あまりくよくよと思い悩まないことです。
皆さまのご健康とお幸せを心からお祈りいたします。
2007年12月2日 東京にて チン・クイ」

まさに仏教でいう苦(=生老病死)を如何に受け止めるかを素直に表現した、秀れた映画だと思った。
自分はハリウッドのガチャガチャする映画よりも、このようなしみじみした映画のほうが好きだな・・・。


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» 老けもん映画、またひとつ [論駄な日々]
このところ中国づいている。昨夜は北京の路地裏に暮らす九十三歳の理髪師を主人公にした中国映画『胡同の理髪師』を神保町の岩波ホールで鑑賞した。北京五輪を目前に解体される直前の胡同の街。そこには昔ながらの商売道具を手に人々の家を訪れる老理髪師、チン爺さんがいる。老いた客たちも次々と亡くなり、骨董品なみの古時計も故障して動かなくなる。いわゆる老けもん系の王道をゆく映画ではあるが、淡々と描かれる日常の陰影と... [続きを読む]

受信: 2008年3月17日 (月) 12:13

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