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2007年7月 8日 (日)

増田博一氏の「画家が戦争を記録した」

今日(07/7/8)の朝日新聞朝刊に「写真が語る戦争」(P35)という記事があり、陸軍幼年学校について書かれていた。これを読みながら、フトしたことから先日読んだ増田博一氏の「画家が戦争を記録した」を思い出した。今日はこの本の紹介である。

Scan102711_3 この本は、昭和19年3月18日に出征してからフィリピン ミンダナオ島で降伏し、昭和20年12月に復員するまでの1年9ヶ月間に起こった出来事を、チラシの裏などに描いたものの画集。筆者は、復員した直後に、憑かれたように昼は図書館でデッサンをして、仕上げの彩色は自宅で描いたといい、アッと言う間に出来上がったという。
しかしその評価は、
戦中からの回覧板の習慣を利用し、画集を町内班員(約30世帯)に見せたことがあった。当時、人の関心は画集より食い気が先だった。それにこんな兵隊じゃあ日本も負けて当たり前と、暗に私を非難した苦言や嘲笑に終った。・・・勤め先関係で海軍士官の経歴をもつ事業主から、こうした画集は、はやく焼却したほうが君の安全のためにもいいという忠告まで受けた。」(あとがきから)
なぜか? それは幾ら戦後とはいえ「真実」を語っていたからではないか?

以下に印象に残った幾つかの絵を転載してみる。ここには、一兵卒から見た戦争の真実が描かれている。検閲も何もない日本軍の本当の姿・・・

順を追って見てみると、3ヶ月の「臨時教育招集」での訓練の様子(市街地での訓練もあったのか・・・)。
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教育終了の最後に日に、戦地に行くメンバーの発表。そして家族のもとに帰る人と、戦地に招集される人との残酷な対面挨拶・・・。
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台湾を経てフィリピンに行く船での、リアルなトイレの絵。
友人Mの狂気。(米軍上陸の数日前に、昇汞水による筋肉注射で薬殺されたという)
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ジャングルの中を逃げまどう「皇軍」。そして人魂と、死後一昼夜で白骨化する気候。そして降伏・・・・
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この兵団は5194名中、4028名(78%)が戦没。しかしこの内、直接の戦闘による戦死者は638名(16%)で、大半の将兵は戦略的にはほとんど無意味な密林での行動中に失われたという。
そして、8月15日ではなく10月初旬の投降・・・・。

「百聞は一見に如かず」とは良く言うが、この画集で表現している「一見」は、単なる戦場のワンカットを切り取った写真とは違い、人間の「心」というフィルターを通った悲惨な戦場の有様だ。

憲法第九条の改正議論を前に、先人が大変な犠牲を払って経験した(しかし風化しつつある)戦争という現実の重みを、我々も、今一度噛みしめてみる必要があるのではないだろうか。


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コメント

この本は、私の制作で発行しました。ご紹介いただき、ありがとうございます。
 この本は、今は書店の店頭にはないと思いますが、注文は可能です。「画家が戦争を記録した」の書名でグーグルで検索すると、発行元のホームページが出て、内容の一部も見られます。

投稿: 志村建世 | 2007年7月 9日 (月) 18:56

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